英文契約書の時制と厳格で網羅的な表現

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1. 当事者間の権利・義務を規定

英文契約書は、基本的に現在形で記載されています。英文契約書における多くの規定は、当事者間の将来の権利・義務の履行に関するもので、将来におこり得る様々な状況を想定して、これらを「仮定」として列挙し、当事者間の権利・義務を規定するのが一般的な様式です。契約書翻訳 の観点から概説します。

この場合、想定・仮定を述べるために、「If」、「In the event of/that」、「In case」、「In case where」等(他にもいろいろあります。)が使用されます。例えば、

Licensor may resolve this agreement in the event of proven information that:

「ライセンサーは、下記についての証拠となる情報があるときは、本契約を解除することできる。」

In the event of expiration of the present agreement, for any reason whatsoever:

「理由を問わず、本契約が解除された場合は、」

If the other party materially breaches Article 14 or any NDA;

「相手方が、第14条または何らかの機密保持契約に重大な違反を行った場合」

In case the duly authorized officer or officers of the corporation fail to call the special meeting then the special meeting may be called by the stockholder or stockholders or member or members who made the demand, by giving notice in the method provided by the articles of incorporation or bylaws of the corporation.

「本会社の正当に授権された取締役が、臨時総会の招集を履行しない場合、その時点で、臨時総会は、本会社の基本定款または付属定款に規定した方法で行われた通知により、要求を行った株主もしくは社員が召集することができる。」

2. 最近見かける例

  簡単な例ですが、いずれも将来的に想定される状況を記載しています。ただし、日本の契約書によく見られるように、以下の例ように、

Terms and Condition not provided herein shall be separately established based on consultation between the parties.「本契約に定めのない条件については、両当事者間の協議により別途定める。」という条項が記載されている場合も、最近は良く見受けられます。

3. 不確実性の増加

20世紀後半から現在に至る変化の激しい時代、英文契約書の特色の1つである「英文契約書における厳格で網羅的な表現-可能な限りすべての予測される事象を想定する」ことは、なかなか難しくなっているのかもしれません。

参考図書:法律用語辞典(有斐閣)、英和大辞典(研究社) コンパクト六法(岩波書店)、Oxford Dictionary of English、Collins Consise Dictionary 特許庁特許情報プラットホーム 

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