英文契約書の用語・単語 損害と損害賠償の表現(その1)

投稿日 ブログTags:


英文契約書の定番用語の1つに「損害」と「損害賠償」があります。今回は、これらを表す言葉のいくつかを中心に見てみます。なを、ここでは「損害賠償」という言葉が英文契約書でどのように使われているかを契約書翻訳の視点から概説します。

1. 「damages」を使った表現

「damages」は、見た通り「damage」の複数形です。「damage」は、(人や物の価値を減らす)損害、被害、ダメージ、損傷を表しています。これを複数形にした「Damages」は、損害賠償、損害賠償金、損害賠償額の意味で使用されます。ただし、「damages」となっていても例えば文脈的に「損害箇所が複数個所に渡る場合」を表す場合は、単なる「損害、被害」等を意味する場合あります。

Cambridge Dictionaryでは「Damages」を以下の様に定義しています。

Damages(名詞の複数形):money that is paid to someone by a person or organization who was responsible for causing some injury or loss.(怪我や損失を生じた責任を有する個人または組織により誰かに支払われる金額。)

They were awarded $500,000 in damages. (彼らには500,000ドルの損害賠償が支払われました。)

冒頭に、「damage」は、「損害」の意味で使われ、「damages」は、「損害賠償」の意味で使用されるとしましたが、経験的には文脈的に「damage」が損害賠償の意味で使用されていることもあります。理由の1つとしては、英文契約書といってもネイティブ以外のさまざまな国の人々が契約書を起草することが一因かもしれません。以下に、「damage」と「damages」を使った例文を作成してみました(法律の条文を除く)。

 (1) 例文:単なる「損害」を表す「damage」

(a) 普通の文章で使われる場合の例です。

The roof broke due to the typhoon. It’s lot of damage. It caused lot of severe damage here and there.(台風で屋根が壊れた。大変な損害だ。あちこちで甚大な被害に見舞われた)

Too much drinking alcohol may damage your body.(たくさん飲むと健康に良くない)

The typhoon that hit Japan in 2019 damaged houses a lot, causing trees to be knocked down. (2019年に日本を襲った台風は、家々に損害を与え、木々をなぎ倒した)

(b) 英文契約書の中で使われる場合の例。

Seller shall be responsible for and shall bear risk of loss and damage to the Goods, or portions thereof until they are delivered to and are accepted by Buyer. (売り手は、商品またはその一部が買い手に納品され、受領されるまで、その商品またはその一部の損失および損害についての責任を負い、その危険を負担する)

Seller shall indemnify and hold Buyer harmless against any loss or damage resulting from any claim made by end users. (売主は、エンドユーザーの請求に起因する損失または損害に対して買主を補償し、免責する)

(2) 例文:損害賠償を意味する「damages」

If Party A suffers any loss or damage due to a violation of provisions of the Agreement by Party B that it discloses the Confidential Information to any third party without a written consent of Party A,  Party A may demand all damages to Party B.(当事者Aが、当事者Bが機密情報を当事者Aの書面による同意なしに第三者に開示するという当事者Bによる本契約の条項に違反により、損失または損害を受けた場合、当事者Aは当事者Bにすべての損害賠償を請求できる)

In no event shall 1st Party be liable for indirect, special, incidental, punitive or consequential damages, including, but not limited to, lost profits(いかなる場合も、第一者は、利益の損失を含むがこれらに限定されない、間接的、特別、偶発的、懲罰的、または結果的な損害に対して責任を負わない)

In no event will Party B be liable for damages cause by Party A’s fault.( いかなる場合も、当事者Bは、当事者Aの過失によって生じた損害について損害賠償責任を負わない)

The parties hereto shall accept a liability for damages to the other party to a required extent. (本契約の当事者は、必要な範囲で相手方に対する損害賠償責任を負う)

The parties may agree on the amount of the liquidated damages with respect to the failure to perform the obligation. (当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる。この場合において、裁判所は、その額を増減することができない。)(民法)http://www.japaneselawtranslation.go.jp/kwic/?re=01)

Unless other intention is manifested, the amount of the damages shall be determined with reference to monetary value. (損害賠償は、別段の意思表示がないときは、金銭をもってその額を定める)(民法

2.「損害賠償を請求する」、「損害賠償の訴訟を起こす」の表現の表現について。

「損害賠償を請求する」は、claim [demand] damagesですが、claim for [demand] damagesでも同じ意味になります。

「損害賠償の訴訟を起こす」は、go to law (against somebody) for damages      sue somebody for damages等となります。.

  1. 「damage」の動詞としての使われ方

これまで見てきた「damage」と「damages」は、いずれも名詞としての使われ方でしたが、「damage」は動詞としても使われます。例えば、購入した製品を組み立てる場合、マニュアルのインストラクションに以下の注意書きが入っていることが良くあります。

Please be careful not to damage any parts when you assemble the product. (製品を組み立てる際は、部品を傷つけないようにご注意ください)

Be sure to align the connector in the proper orientation so that you do not damage the pins on your motherboard. (マザーボード上のピンの損傷を防ぐため、コネクタを正しい方向で接続するよう注意してください)

This does not damage the common interests of the company’s shareholders, but rather contributes to their interests. (これが、当社の株主の共同利益を損なうことはなく、むしろその利益に貢献します)

参考までに日本の法律ですが、「損害」と「損害賠償」の意味を法律用語辞典で見ると、「損害とは、債務不履行や権利の侵害等により受ける不利益。損害賠償のという法律効果を生じさせる要件の1つ。以下省略」。「損害賠償とは一定の事由に基づき他人に与えた損害を填補して損害がなかったのと同じ状態にすること。-中略-代表的な例は、民法規定の債務不履行または不法行為に基づくもの(民法415条以下、709条以下)-以下省略」とあります。

参考図書:

法律用語辞典(有斐閣)

ランダムハウス英和大辞典(小学館)

カレッジライトハウス和英辞典(研究社)

研究社新英和辞典(研究社)

日本法令外国語訳データベースシステム

Comments are closed.