今回は、「exclusion」、「exclusive」について英文契約書で使われる場合の使われ方や意味について、作成した例文を通して(法律の条文を除く)契約書翻訳の観点から見て見ます。いずれも英文契約書でこれらの単語は単体で用いられほか、他の語と組み合わせて成句として登場します。ここ最近も書いたことがありますが。このブログの目的は、1つの単語に様々に意味を持つ傾向がある英単語が英文契約書で使われる場合、契約書・法律文書で使われる特有の意味を持つことがあります。このブログではその単語が英文契約書で使われる場合のその単語の意味と使われ方を手っ取り早く理解し、英文契約書を読んだり、書いたり、また、時として、和訳したり、英訳するするための一助になればとの考えから英文契約書で使われる、英単語をとりあげています。英文契約書の構成、法律的な意味や解釈については、専門書を参照してください。
1. Exclusionについて
Exclusion | 免責、除外。動詞は「exclude」 |
多くの場合、義務や責任を免除したり、除外したりする場合に見られる表現です。
This exclusion shall not apply to the liability for the breach provided for in the Master Contract. (本適用除外は、基本契約に規定の違反の対する責任には適用されない)
Any right of the parties hereto shall exclude or limit if such exclusion or limitation of the right would be lawful.(そのような権利の除外または制限が適法な場合、本契約の当事者の権利は排除され、または制限される)
Nothing in this Agreement excludes or limits either party’s liability for fraud or fraudulent misrepresentation.(本契約のいかなる条項も、詐欺行為または虚偽表示に対するいずれの当事者の責任も排除せず、または制限しない)
2. Exclusiveについて
Exclusive | 独占的な、排他的な、唯一の、exclusive dealing(排他的条件付き取引)、exclusive distributor(独占的販売店、総代理店)、exclusive jurisdiction(専属管轄権)、*exclusive license(独占的ライセンス、独占的実施権、専用実施権)、*独占的ライセンス、独占的実施権としてありますが、排他的ライセンス、排他的実施権とすることもあります。 |
以前にもとりあげたことがありますが。、英文契約書ではポピュラーな単語の1つです。上記のように他の語との組み合わせで様々な成句を作ります。
The Seller shall appoint the Distributor as its exclusive distributor in the Territory for the Products upon the terms and conditions herein set out. (売主は、本契約に規定された条件に基づき、本製品に関する本販売区域の独占的販売代理店として販売代理店を任命する。)
The Supplier is the exclusive owner of the Intellectual Property regarding the Products. (サプライヤーは、製品に関する知的財産の排他的な所有者です。)
A holder of a utility model right or an exclusive licensee may not exercise his/her utility model right or exclusive license against an Infringer, etc. unless he/she has given warning in the Report of Utility Model Technical Opinion regarding the registered utility model. (実用新案権者又は専用実施権者は、その登録実用新案に係る実用新案技術評価書を提示して警告をした後でなければ、自己の実用新案権又は専用実施権の侵害者等に対し、その権利を行使することができない。)(実用新案法)
If this Agreement and the separate contract has mutually exclusive provisions, the provisions of this Agreement shall take precedence. (本契約と個別契約に相互に排他的な規定がある場合、本契約の規定を優先されるものとする)
mutually exclusiveは、「相互に排他的」という意味のほか、「共存しない」、「一方のみが」、「互いに矛盾する」、「相容れない」などと文脈上から訳すこともあります。
「Exclusive」が作る成句になかでも特に「exclusive jurisdiction」は、ほぼ大部分の英文契約書に記載があります。これは特定の裁判所のみがその契約にかかわる案件につき裁判権を有することです。
例えば、Any dispute arising out of this Agreement shall be submitted to the exclusive jurisdiction of the Tokyo District Court of Japan for the first trial. (本契約に起因する紛争は、第一審に関して日本国の東京地方裁判所の管轄権に服する)
This Agreement shall be governed by the laws of Japan and any dispute in relation to this Agreement shall be brought in the Tokyo District Court as the exclusive competent court for the first trial. (本契約は日本法に準拠し、本契約に関する紛争の第一審の専属管轄裁判所は、東京地方裁判所とする。)
なを、裁判に勝っても相手方がその裁判地に資産等を持っていない場合等、この規定についてその有効性が問題となることもあるようです。傾向的には契約書を起草した当事者や契約の主導権を握っているような当事者は、やはり自社の本拠地を裁判地に指定することが多く見られます。
参考図書:
カレッジライトハウス和英辞典(研究社)
研究社新英和辞典(研究社)
ランダムハウス英和大辞典(小学館)
日本法令外国語訳データベースシステム