英文契約書の売買契約(その2)

投稿日 ブログTags:


英文契約書による売買契約の一般的な構成と、ごくごく基本的な事柄に関する用語の簡単な確認の続きです。以下の前回書ききれなかった項目等を例によって、契約書翻訳の観点からざっと見てみます。

  1. Intellectual Property (知的財産)
  2. Inspection and Acceptance(検査と受領)
  3. Claim and Remedy (クレームと救済)
  4. Take or Pay(テイクオアペイ)
  5. Right of First Refusal(ファーストリフューザル)
  6. Hardship (ハードシップ)

 

 11. Intellectual Property (知的財産)

いうまでもなく、売買される商品の「商標」、「特許」、「著作権」、「その他」、「知的財産権」についての記載です。知的財産権の侵害を防ぐ記述内容とともに、商品が他人の知的財産権を侵害していないことを確認することは、必須であり、その他、万が一のクレーム発生に備えることも必要です。
知的財産に関する条項は、おおまかに、「売主」の立場に立ったもの、「買主」の立場に立ったもの、一定の範囲に限って「売主」が「買主」の商品の使用に起因する「知的財産」を侵害した場合の責任を負担する場合等があります。分野としては、膨大な内容になるため、この程度で留めます。

その他「知的財産」については、いずれも散文的であり、売買契約についての内容ではありませんが、「知的財産契約」と「Proprietary RightsとIntellectual Property Rights」についての、以前のブログ記事があります。

12. Inspection and Acceptance(検査と受領)

最近では、エアバッグの不具合など大きな問題が見受けられます。過去においても多くの問題が発生し、当然、リコールや訴訟に発展し、当然、損害賠償契約解除の対象になります。普通に考えてみれば、「買主」に商品がわたった時点で、商品受け入れ検査を行い、瑕疵があれば相応の措置を講じれば良いとも思われますが、実際には、簡単にはいかないのが現実です。検査の対象には、当然、品質の問題が含まれます。

したがって、「Inspection and Acceptance(検査と受領)」についての規定には、一般的に以下についての規定がなされることがあります。

Inspection and Acceptance(検査と受領)についての規定

  1. 検査について:検査の時期、内容、程度、方法、検査担当(「買主」、第三者、検査機関、「買主」と「売主」の合同検査)
  2. 検査結果の明示(証明書、レポート)
  3. 問題がある場合の通知方法と期間
  4. 検査で見つからない隠れた瑕疵の扱い
  5. 通知期間内に「買主」が瑕疵を報告しない場合の扱い等、商品に瑕疵があった場合の救済を定める上で重要です。

いずれも「買主」に有利になる規定の方法、「売主」に有利になる規定の方法があります。
なお、分野としては、膨大な内容になるため、この程度で留めます。

13. Claim and Remedy (クレームと救済)

上記、12. Inspection and Acceptance(検査と受領)とも関連しますが、「買主」の立場に立った規定方法、「売主」の立場に立った規定方法があります。いずれの立場も相手方に対するせめぎ合いで、例えば、クレーム提起期間について、「買主」の立場に立てば、この期間を長く設定することで、クレーム提起期間終了後に隠れた瑕疵が見つかっても、クレームの提起期間の規定にしばられないとか、「売主」の立場からは、「売主」に都合の良い、クレーム提起期間を定め、その後は、「買主」のクレーム提起の権利を失わせる等、さまざまです。

参考までに日本の商法では、「「買主」は、物品の受領後、ただちに検査を行い、瑕疵を「売主」に報告しなければならず、これを怠った場合、「買主」は「売主」を追及する権利を失う」また「ただちに発見できない瑕疵は、6ヵ月を最大限として延長できる」とあります。(商法528条2項)その他、「「買主」は、瑕疵を発見してから1年以内に権利を行使しなければならない」(民法570条(民法566条、但し書き準用))。

 14. Take or Pay(テイクオアペイ)

例えば、長期にわたる売買契約において、ある一定期間(例えば、四半期、半年)ごとに「買主」が引き取るべき最低数量を規定し、引き取りがなされない場合でも、「買主」は、引き取りがなされた場合と同じ代金支払い義務を負うものとします。「買主」は、長期にわたる義務とリスクを負担することになります。プロジェクトファイナンスにかかわる場合が多く、さまざまバリエーションが存在します。

 15. Right of First Refusal(ファーストリフューザル)

長期売買契約における「買主」に有利な権利を確保することを目的とします。具体的には、「売主」において、商品や製品の生産と供給に余裕が生じた場合、「買主」に優先的にオファーを行い、「買主」に購入する機会を設けます。「買主」は、この権利を行使するか、しないかの権利を与えられます。

 16. Hardship (ハードシップ)

「長期契約における経済・社会環境の変化、商品や製品の陳腐化等の事件が生じた場合、相変わらず、最低数量の購入等、当初の契約内容を維持するのではなく、いずれかの当事者が申し出て、契約条件の見直しを協議する」という内容です。

以上、駆け足で、英文契約書による売買契約の一般的な構成を見てみました。いずれも「売主」と「買主」の間の利益の調整方法という見方もできるかもしれません。

先々、機会があれば例文などを作成して、さらに具体的に見てゆきたいとおもいます。

参考図書

ビジネス法律英語辞典(日経文庫)

ランダムハウス英和大辞典(小学館)

法律英単語(自由国民社)その他

 

 

Comments are closed.