英文契約書の用語、構文「thereof, thereafter,therein, thereto等」(その3)

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1. thatに関わるリーガルジャーゴン

前回、英文契約書(法律文書)特有の用語・言い回しの中から、いわゆる、リーガルジャーゴン(Legal Jargon)と称される用語の内、多く使用されることが多い、「hereto」、「hereof」、「herein」、「hereby」等について書いてみました。これらは、もともとが、「this」の意味を持っています。「this」と比較される言葉として、「that」があります。英文契約書で、「hereof」、「herein」、「hereby」等とともに、頻繁に使われるのが、この「that」の意味を持つ、「thereof」、「thereafter」、「therein」、「thereto」、「thereby」等です。

(ちなみに基本的には「this」は、近くにあるもの(人)を指して「この」、「that」は、離れているもの(人)を指して「その」「あの」の意味があります。)

2. 注意すべきこと

注意することは、「there―」は、前にある言葉や文章を受けて使われるため、どの言葉や文章を受けているのかを確認する必要があります。そのため、自分で英文契約書を作成する場合、なれないうちは、一般的な平易な表現を使うことが良いと思われます。

3. 例文

いくつかの例文を作ってみました。

This Agreement constitutes the entire agreement of the parties with respect to the subject matter of this Agreement and supersedes and replaces all written and oral agreements in respect thereof.

この場合、「thereof」は、前にある「This Agreement」を受け、「 in respect」とつながり「in respect thereof」=「in respect of this Agreement」=「本契約に関する」の意味となります。

(本契約は、本契約の主題に関して各当事者の最終的合意を構成し、本契約に関するすべての書面および口頭による合意に優先し、これらに代わるものとする。)

The effective term of this Agreement shall be the one (1) year period from MM DD 20XX; provided, however, that, if neither of the parties hereto notifies the other party, in writing, of its intent to terminate this Agreement at least six (6) months prior to the expiration of the term hereof, this Agreement shall be renewed for another one (1)-year period and the same shall apply thereafter.

「本契約の有効期間は、200XX年XX月XX日から1年間とする。ただし、本契約の両当事者のいずれも、本契約の期間に満了の少なくとも6ヵ月前に、本契約を解除したい旨を書面により相手方に通知しない場合、本契約は、さらに1年間更新され、その後も同様とする。」

「thereafter」は、辞書にあるように、そのものズバリ「その後(は)」、「それ以降」等となります。

なお、「the parties hereto」と「the term hereof」は、それぞれ「the parties to this Agreement」、「the term of this Agreement」となります。

From the Effective Date and thereafter at all times during the Term, Licensee shall provide and maintain insurance as described in Exhibit A attached hereto and made a part hereof.

「発効日とその後の期間中常に、ライセンシーは、本契約に添付の別紙A(Exhibit A)に記載され、本契約の一部である保険を提供し、維持するものとする。」

If the Premises are totally damaged and are thereby rendered wholly untenantable,

「thereby」=「それにより」、「その結果」、「従って」の意味があります。

この場合、「thereby」は、前にある文章「If the Premises are totally damaged」を受けて、以下のような意味になります。

(本物件が全壊し、また、それにより、全体的に賃貸に適さない場合、………………..)

This Agreement will be governed by and construed in accordance with the laws of the State of California and the federal U.S. laws applicable therein, ………………

「therein」=「その中に」、「その場所に」、「そのときに」等の意味があります。

この場合「therein」は、「その場所において」の意味で使用され、「カリフォルニア州法および同地で適用される米国連邦法に準拠し、解釈されるものとする。」となります。

上記の例は、準拠法条項=契約の解釈のもととなる法律を規定する条項です。

4. 準拠法

準拠法については、契約の当事者間において、各当事者が自国の法律を準拠法とすることを主張するのが一般的ですが、双方の力関係で決定される場合が多く、また、第三国の法律を準拠法として選択する場合など、様々です。

特に、知的財産権(特許、商標、その他)の登録に関する内容を持つ契約では、登録が行われる国の知的財産権に関する法律、会社設立、M&Aに関連する契約の場合など、それらの行為が行われる国の会社法、証券取引に関する法律等が当然に適用されます。

知的財産権に関する法律では、一応、ベルヌ条約(The Berne Convention for the Protection of Literary and Artistic Works)があり、ベルヌ条約に加盟していなくても、世界貿易機関(WTO)加盟国であれば、ベルヌ条約の主要な部分を順守する必要があります(実務的には相当複雑で、色々な問題が起きていますが)。

会社設立、M&Aの場合、適用される会社法、証券取引に関する法律等では、国により、例えば、「会社設立」という同じ種類の行為をするのでも、それに対する規定が日本と異なる場合があり-「時として、ある国の商慣行や言葉(または法律用語等)の概念(意味)が、世界的な商慣行や言葉(または法律用語等)の概念(意味)と異なり、その国独特のものとして存在するなど」-、注意が必要なことがあります。

5. 平易な表現でも可

すでに述べていますが、なれないうちは、一般的な平易な表現を使うことをお勧めします。

リーガルジャーゴン(Legal Jargon)についての内容から、それてしまいましたが、次は、英文契約書における独特の構文について触れてみたいと思います。

参考図書:

法律用語辞典(有斐閣)、英和大辞典(研究社)、 コンパクト六法(岩波書店)、Oxford Dictionary of English、英文契約書の書き方 日経文庫、 ビジネス法律英語辞典 日経文庫、他

 

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