英文契約書の用語、構文(その11)「will」、「shall」、「may」、「agree to」、「acknowledge that」など

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「will」、「shall」、「may」、「agree to」、「acknowledge that」の使い方

英文契約書で見受けられラテン語やフランス語などからの用語や固有名詞について、比較的目にする機会が多い用語をみてきましたが、「英文契約書における独特の用語」という観点から忘れていけないのは、「will」「shall」「may」などです。これらは、契約における当事者間の権利、義務を規定する際になくてはならぬ用語です。他の用語に置き換えることもできますが、権利、義務を規定する場合に一般的に使われます。英文契約書におけるこれらの各々の使い分け-どの言葉を、どのような状況で使うのか-をおおまかにでも理解することで、英文契約書にかかわるに際して、よりその契約の内容を理解する手助けになります。

また、これらの用語「will」、「shall」、「may」は、用法としては、非常に範囲が広く、契約にかかわらず、会話などでも日常的に使われますが、ここでは、英文契約書おける一般的な使い方に限ってみてゆきます。

 shall」について

辞書を見ると、「shall」のいろいろな用法が並んでいます。これらの用法の中の一つに、「命令・規定を表わして、~すべきである」という「shall」の用法があります。

一般に英文契約書では、多くの場合「義務」を規定する際に使用されます。たしかに「shall」の語源を見ると、「古期英語「義務がある」の意」と記載されています。

例えば、売買契約を想定して「The Seller shall deliver the products to the Buyer if… 」とすると、「売主は買主に対して、……………の場合、製品を引き渡すものとする」のように、「shall」を使い「義務」を規定しています。

もちろん、すでに述べたように英文契約書に限らず、上記の意味「~すべき」の意味を表すことに限っても、さまざまな文書や会話の中で日常的に使われます。

 その他、「権利」を規定する場合、「shall have right to~」のように使われることもあります。例えば、ライセンス契約を想定して、「Licensor and Licensee shall have the right to terminate this Agreement immediately if…」とすると、「ライセンサーとライセンシーは、以下の場合、直ちに本契約を解除する権利を有する。」となります。

will」について

英文契約書で使われる「will」も、一般的に「義務」を規定する際に使用されますが、一般に「will」を使用した場合の「義務」程度が「shall」に比べてやや弱いとされるようです。実際、個人的感想ですが、実務経験および翻訳の経験上からも、「will」を使用した場合の「義務」程度が「shall」と弱く、また、やや明確さに欠けるような気がします。

具体的には、「will」も「shall」も「義務」を規定するという点において変わりはないのですが、相手方が契約の草稿を作成した場合(または、相手方に特定の契約書のひな形ある場合、その他相手方の立場が強い場合など)、相手方の義務の記載には、その義務の内容により時として、「will」が用いられ、一方、こちら側の義務の記載には、ほとんどの場合、「shall」が使われているという具合です。当然、契約締結前の交渉の議題の1つなることもあります。草稿段階の契約書を交渉過程ごとに順次みてゆくと、同じ条項で「will」が「shall」に変わり、「shall」が「will」に変更されていることも目にします。いずれにしても基本的には、「will」が使われていても「shall」と同様に法的拘束力に変わりはないと思われます。

その他「will」は、英文契約書において、契約の内容やスケジュールを客観的に確認する場合に用いられることも多く見受けられます。例文を2つほど作ってみました。

The parties will mutually agree on a delivery schedule.

(両当事者は、相互に、各配送スケジュールに合意する。)

The inspection schedule will be arranged by mutual consultation between the parties.(検査スケジュールは、両当事者の協議により取り決める。)

may」について

英文契約書において、「権利(~することができる)」を規定する場合に一般的に使われます。「~することができない」を表すには、「may not」が使われます。(基本的に「can」、「can not」は使いません。)

 例えば、上記、「shall」について」で作った例文、「Licensor and Licensee shall have the right to terminate this Agreement immediately if:」は、Licensor and Licensee may terminate this Agreement immediately if:」とすることができます。

 その他

英文契約書において当事者間の権利、義務を規定する際に用いられるのは、上記のように「will」、「shall」、「may」が一般的ですが、義務を規定する場合、時として、頻度は少ないのですが、「must」が使われることもあります。個人的感想としては、「must」が使われる場合、その文章の前後関係と内容から、起草者が「shall」よりもその内容を強調したい部分に「must」を使用する傾向があるようです。

例えば、

Any modification or change to this Agreement must be in writing and signed by both parties.

英文契約書ではありませんが、以下のような例もあります。

The exercise of rights and performance of duties must be done in good faith.

(権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。)(民法)

Private rights must conform to the public welfare.

(私権は、公共の福祉に適合しなければならない。)(民法)

 その他当事者間の権利・義務を確認する表現として「agree to~(~に同意する/~に合意する/~を承認する)、agree that~(~ということに同意する/~ということに合意する/~ということを承認する)、acknowledge that~(~ということを承認する)」などがあります。「~」の部分に権利・義務の内容が書かれています。いずれも、ある(またはいくつかの)状況における何らかの(またはいくつかの)権利・義務を確認するような場合に使われることが多く、そのため文章としては、時として、複数の項目を列挙する等、長めの文章になる傾向があります。例えば、「acknowledge that:」(「両当事者」は、以下を承認する。)また、「The parties hereto agree and acknowledge that~(両当事者は、~に同意し、これを承認する。)などの形で使われることがあります。

参考図書

ランダムハウス英和大辞典(小学館)
カレッジライトハウス和英辞典(研究社)
研究社新英和辞典(研究社)
法律英単語ハンドブック(自由国民社)
日本法令外国語訳データベース

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