英文契約書における条、項
1. 原則自由
契約書翻訳の中でも英文契約書における内容の表示の方法、すなわち「条」とか「項」の表示の方法は、原則自由です。もちろん、企業、政府、団体等で項目についての表記を厳密に定めている場合もあります。例えば、ある国の政府の契約書に添付する文書については、文書が書かれたものは、「Attachment」、表が記載されているものは、「Exhibit」とする、その他番号の付け方も、「1」と間違いやすい「i」とか「0」間違いやすい「o」は使わない等、細かく規定する場合もありますが、原則、基本的には、自由です。起草者が作りやすいように構成します。したがって、例えば「条」も、一般的には「Article」が使われる場合が多いようですが(「条」という概念を「Article」に当てはめて翻訳したわけですが)、起草者の好み、習慣により、日本語の「条」に相当するものとして「Clause」、「Section」、「Paragraph」等を「Article」の代わりに使う場合や、数字の「1」、「2」、「3」をそのまま使う方法も、以外と多く見られます。
2. もっとも一般的でやりやすいと思われる方法(英文契約書を自分で起草する場合)
英文契約書における「条」とか「項」あるいは「号」等の表示の方法は、さまざまですが、一般的なものとしては、第1条、第2条という場合、やはり「条」=「Article」でしょうか。経験的には、「Article」が使い勝手が良いようです。一般的に、文中で「~条項」と記載する場合は、「~clause」、また、「前項」などと記載する場合は、「the preceding paragraph」とします。
自分で契約書を起草する際、例えば、「Article 1(第一条)」として、その下に、1(第1項)、2(第2項)、3(第2項)と項目を配置したり、または1-1(第1-1項)、1-2(第1-2項)、1-3(第1-3項)等とします。これらをさらに細分化する場合、(a)、(b)、(c)を使い、さらにさらに細分化する場合は、(i)、(ii)、(iii)とします。もちろん(a)、(b)、(c)の部分に(1)、(2)、(3)を使ってもかまいません。
Article 1
1 または1-1
(a)
(i)
(ii)
たいていの場合これで十分ですが、契約書の盛り込む内容が多い場合、「Article」をいくつかの「章」=「Chapter」に分けることもあります。例えば、Article 1からArticle 15までは、「Chapter 1」=「第一章」、Article 16からは、「Chapter 2」=「第二章」とすることもあります。 とにかく起草者は、自分がやりやすく、読み手が見やすい方法を採用するのが一般的です。なを、あらかじめ目次「Table of Contents」を準備しておくと、チェツクするのに便利です。
英文契約書ではありませんが、日本の法律を英語に翻訳する際の「日本法令外国語訳推進会議」のガイドラインがあります。参考までに以下に記載します。
目次 「Table of Contents」
編 「Part」
章 「Chapter」
節 「Section」
款 「Subsection」
目 「Division」
条 「Article (Art.)」
項 「Paragraph (para.)」
(1) (2) (3) [見出しとして用いる場合]
号 「item」
(i)(ii)(iii) [見出しとして用いる場合]
イロハ 「(a)(b)(c)」
(1) (2) (3) 「1. 2. 3.」
(i) (ii) (iii) 「 i. ii. iii.」
枝番号 「-1, -2, -3」
附則 「Supplementary Provisions」
別表第…(第…条関係) 「Appended Table … (Re: Art. …)」
項__ 「Row」
欄__ 「Column」
別記様式 「Appended Form」
例文に訳文が付いている場合、それらの訳文は暫定訳(法律文を除く)です。
本ブログの内容を参考にされる場合は、辞書・専門書をご確認の上、ご自身の責任でお願いします。
英文契約書における慣用句的な用語
英文契約書で使われる慣用句的な用語、いわゆる、リーガルジャーゴン(Legal Jargon)の続きです。本来なら、体系的に理路整然とまとめるのが良いのでしょうが、そのあたりブログなのでご容赦ください。その時々に、思いつくままに書いています。英文契約書で使われる慣用句的な用語、いわゆる、リーガルジャーゴン(Legal Jargon)の続きです。本来なら、体系的に理路整然とまとめるのが良いのでしょうが、そのあたりブログなのでご容赦ください。
いずれにしても契約書翻訳の観点から見てみます。
今回は、「null and void」と「assign and transfer」を見てみます。
1. 「null and void」(無効)
「null」も「void」もいずれも「無効」という意味の他に、例えば、名詞としての意味を見ると「null」は、“ゼロ、価値がない”、「void」は、“欠けた、空虚、喪失”等の意味を持ちますが、「null and void」として英文契約書の慣用句として、「(法的に)無効」というニュアンスで使われます。以下例文を作成してみました。
先日、英文契約書の条項「一般条項」について、「Entire Agreement」(最終性条項)=その契約書作成に至るまでの文書、口頭における当事者間の了解事項は、すべて契約書に集約され、当事者間の最終的な合意を記載した唯一ものという考え方から、「This Agreement constitutes the entire agreement, and supersedes, whether orally or in writing, all prior agreements and understandings of the parties hereto with respect to the subject matter hereof, and cannot be amended or otherwise modified except in writing executed by the parties hereto.(本契約は、最終的合意を構成し、口頭・書面によるものを問わず、本契約の主題に係わる本契約の両当事者間のすべての以前の合意と了解に優先し、また、本契約の両当事者が署名・捺印した書面による場合を除き、修正、または他の方法により変更することはできない。)という例文を作成しました。趣旨がやや異なりますが、
「With regard to this Agreement, all agreements, negotiations, understandings and correspondences between the parties hereto that took place prior to the date of this Agreement shall be null and void from the date of the execution of this Agreement.」(本契約に関して、契約の以前の日付でなされた当事者間のすべての契約、交渉、了解事項および往復書簡は、本契約の署名の日付から無効となる。)
その他、「null and void」が多く見受けられるのは、契約譲渡制限に関する条項で、例えば、「Any purported or attempted assignment or transfer without a consent of other party will be null and void 」(相手方の承諾のない譲渡または移転の意図もしくはその試みは、無効である)
なを、契約譲渡制限に関する条項については、ブログ「英文契約書の条項」の「一般条項」の中で、後程、別途、見てみます。
2. 「assign and transfer」(譲渡する/譲渡し、移転する)
作成した上記の例にある「assignment or transfer」は、名詞ですが、同様の意味です。契約譲渡制限の条項は、基本的には、契約の譲渡(下請け業者の利用を含む)の禁止、制限、条件付制限を設けた条項を規定します。
「assign and transfer」が契約譲渡制限の条項で使われる場合の一般的な例(契約の譲渡の原則禁止(相手方が同意した場合を除く))
「Party A shall not assign or transfer its right and duties hereunder without Party B’s prior written consent.」(Aは、Bの事前の書面による承諾なしに、本契約にもとづくその権利と義務を譲渡し、移転しないものとする)
また、「assign」が単体で使われることもあります。
「Neither party may assign any of its rights under this Agreement without the prior written consent of the other party.」(いずれの当事者も、相手方の事前の書面による同意なしに、本契約に基づくいかなる権利も譲渡することはできない。)
もちろん契約譲渡制限以外で使われることもあります。例えば、「assign」を単体で使い
「Party A may assign this Agreement or any interest therein.」(Aは、本契約またはその所有権を譲渡することができる。)などとすることもあります。
なを、「譲渡」は、権利、財産、法律上の地位等を他人に移転すること(法律用語辞典)
「移転」は、「移転」⇒「移動」として、物の移動の他に、「移転」=事実関係の変動、権利の変動 = 法律関係の変動)(法律用語辞典)などとされています。
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参考図書:
法律用語辞典(有斐閣)
ランダムハウス英和大辞典(小学館)
法律英単語ハンドブック(自由国民社)






