英文契約書の単語・用語 「~元」と「~主」の表現について

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前回、「~先」についての英語表現をとりあげてみましたが、今回は、「~先」と対をなす「~元」の英語表現とこれも良く使われる「~主」の英語表現について見てみます。契約書の翻訳などでも、日本語の契約書を英文契約書に訳すとき、よく使われ、時として頭を悩ませることある言葉です。今回、例文はありません。

1.  「~元」の英語表現について

(a)「元」の日本語の意味

まずは、「元」の日本語の意味から見てみます。「~元」という言葉は、「~先」と同様に日常的に使われている言葉です。また、「~先」に比べると「~元」に対応する英単語は、辞書にもある程度記載されていますが、ある単語の訳語を知りたくて辞書を調べてその単語についての記載がない経験もそれなりにあります。また単語によっては定訳がないものもあります。

日本語の「~元」の「元」の部分にあたる意味についは、国語辞典を見ると「元」には多くの意味がありますが、主な意味としては、「ものごとのもと」、「根本」、「はじめ」等があります。

元(読み)げん

精選版 日本国語大辞典「元」の解説では、

名詞

物事の根本、はじめ。もと。

デジタル大辞泉「元」の解説

・物事のもと。根本。「元気・元素/還元・根元・復元」

・はじめ。「元始」

その他の意味については割愛しますが、元の意味を図示すると以下の様になります。

「元」➡➡➡➡➡➡➡➡

                           「元」があって、ある方向にそれが向かっている表現になります。

英語にすると「originate」の様に、(ここから)始まる。(ここに)源を発する。(ここから)起きる。の意になります。日本語の「要求元」の英語「requestorを例にとると、ここから要求が発生した。ここから要求が出された。のようになります。つまり、要求が発生した「元」となります。

例をあげてみます。 「請求元」とう言葉があります。英語は、「biller」になります。これはbill(こ場合の意味は「請求書」)が発生した元で、請求元=billerとなります。

日本語の「元」は、英語では「originate」です。名詞は、「origin」、形容詞では、「original」、副詞では「originally」(〔初めから〕from the outset [beginning])共々、「元々」に当たる言葉です。

「元」➡➡➡➡➡➡➡➡

(b)「元」に対応する英語の意味

すでに述べたように、「元」の英語の意味は、基本的に「originate:源を発する、起こる、始まる」です。名詞は、「origin」、形容詞は、「original」、副詞は「originally」(〔初めから〕from the outset [beginning])共々、「元々」に当たる言葉です。

日本語の「~元」に対応する英語の一部には、例えば以下のものがあります。

要求元:requestor

出火元:fire breakout source

製造元:maker, manufacture

制作元:maker

仲介元:mediator

出版元(出版会社):publishing company、publisher、publishing house、publishing firm、publisher、newspaper publisher

供給元:supply source

依頼元:client、requestor

版元:the publisher of a book)

映画の配給元:a distributor of movies

製造元:the manufacturer; the maker

2.「~主」の英語表現

日本語の「~元」と同じような形式の表現に「~主」があります。これらの中には 「~元」という表現ではありませんが、「~元」の表現に置き換えられる言葉または組み合わせもあります。例えば、「依頼主= client、requestor」は、上記の「依頼元=client、requestor」のようにと置き換えられます。ただし、上記の図のような流れの意味を持つものもありますが、例えば、「貸主」に対する「借主」のような場合もあります。

日本語の「~主」に対応する英語の一部は、例えば以下のものがあります。

送り主:sender

荷主:consigner, shipper

持ち主:owner

売主:seller

買主:buyer, purchaser

家主:landlord、owner of house

店主:shopkeeper、storekeeper, owner of shop

*買主:landlord、creditor、 lessor、

*借主:borrower, debitor、debtor, leaseholder, lessee、renter、tenant

*借りる対象により使用する言葉は違います。

前回とりあげた日本語の「~先」、今回の「~元」、「~主」は、ある動作を行う主体の後に「先」、「元」、「主」という言葉を足して、1つの意味を作り上げるという便利な言葉です。

国語学者ではないので、確たる証明があるわけではありませんが、私見として、これらの言葉は多くの場合日本語の語用、使い回しからきていると思われます。これらの日本語を英語に訳す場合、前回取り上げた日本語の「~先」の英語表現と同じように、「~元」、「~主」に本来対応する言葉に置き換えたり、場合により、そのことを説明する新たな言葉を作ったりする必要もあります。

参考図書:

研究社新英和辞典(研究社)

ランダムハウス英和大辞典(小学館)

カレッジライトハウス和英辞典(研究社)

精選版 日本国語大辞典(小学館)

デジタル大辞泉小学館)

英文契約書の用語・単語  日本語の「~先」の表現について(その1)

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翻訳、特に日本語から英語への契約書の翻訳では、日本語に「~先」という言葉が良く使われています。契約書に限らず、「~先」という言葉は、日常でも何気なく使われている、便利な言葉です。ビジネスでも、例えば、「得意先」、「売り先」、「相手先」、「仕入れ先」など、「~先」という言葉が出てきます。翻訳では、この日本語で多く使われる言葉、「~先」を英語に置き換きかえるわけですが、当然ですが、「~」に相当する英単語を置いて、それに続く部分に「先」相当する英単語を置いてというわけにはいきませんが、言葉によっては「ee」を使い、「~先」に対応することができます。例えば、動詞に-erをつけると「〜する人」の意味になり、-eeをつけると「〜される人(~の相手先)」の意味になります。ただし、これがすべてにあてはまるわけではありません。多くの場合、それぞれの「~先」を本来対応する言葉に置き換えたり、場合により、そのことを説明する新たな言葉を作ったりする必要もあります。「~先」という言葉は、多いのでいくつかの言葉をピックアップして、作成した例文(法律文を除く)を通して英文契約書翻訳の観点から見てゆきます。

1. 「~先」の「~」と「先」が対応するaddressを使う表現

以下の例では、単純に「~先」に当たる部分をaddress、それに準ずる言葉を足すこと

とで置き換え可能です。では、addressの語源を見ていきます。

接頭辞

ad-(a-,ac-,af-,ag-,al-,ap-,as-,at-)1.「…に向かって」「…へ」の意。移動・方向・変化などを表す。(c,f,g,k,l,p,q,s,tの前でac-,af-,ag-,ac-,al-,ap-,ac-,as-に置き換わる。) 2.…の近くで

接尾辞

-ess        形容詞から抽象名詞を造る

上記のように、「方向を表し、~の近くで」と言うように、「~先」の「先」の部分に相当する言葉です。文字通り「住所」となっていますから、以下の様な使い方があります。

宛先(address, addresssee(名宛人))、移転先(new address, new location site)、送り先(receiver’s address, destination)、連絡先(contact address)、送付先(receiver’s address, adressee)、転居先(new address)、転送先(forwarding address)、届け先(addressee)、納品先、届け先(place of delivery, address of delivery)、発送先(address)、引越先(new address)。

address以外の「~先」とついた言葉に対応する英単語をいくつかピックアップしてみました。

2. 「~先」とついた言葉に対応する英単語

(a) 上記のように、「ee」を付ける場合

委託先:trustee、consignee、contractor     事業の委託先(contractor of the business,
(consignee of business)

献金先:donee(受贈者、donerの対語)

支払先:payee

インタビュー先:interviewee(面接を受ける人)

身元照会先:referee

(b) 「ee」を付けない場合で対応する言葉がある場合

相手先:the other party

売り込み先:a potential buyer、a potential purchaser

運用先:an investment target

融資先:borrower, loan customer, loan destination, recipient of a loan

外国人労働者受け入れ先:host (hosting body) for foreign workers

勤務先(勤め先):one’s place of employment (work)

仕入れ先:supplier

取材先:news source

出荷先、配達先、納品先:place of delivery, destination

注文先:orderer(注文した人)      receipent of an order(注文を受けた人)

提携先:business partner

得意先:good customer

取引先:customer, business connection

身元照会先、信用照会先、問い合わせ先、紹介先:reference, referee

契約書、なかでもライセンス契約書等に使われているの場合の例では、licenser(ライセンスを与える人)のライセンスを与えた先をlicensee(ライセンス権の供与先-ライセンスを受けた人-)、franchiser(フランチャイズ権を与える人)のフランチャイズ権を与えた先をfranchisee(フランチャイズ権の供与先-フランチャイズの加盟者)等があります。

上記の例は、ほんの一部の例です。なを、言葉によっては、上記以外にも別の訳し方があります。文脈的に一見あまり関係のない言葉が使われることもあります。ここでは、「融資先」を例にとってみます。

融資先に対応する英単語には、borrower, loan customer, loan destination, recipient of a loan等があります。字義どおり、「direction of financing」という訳しかたもあるようですが、あまり見た経験がありません。通常、状況により日本語の「融資先」に対応する言葉が違ってきます。いくつかの例を挙げてみます。辞書は頼りなる資料ですが、実際には辞書どおり、または字義通りの言葉が使われていないことがあります。

政府系金融機関は、優良融資先に対して低利での融資を行う。(The public-sector financial institutions are lending to low-risk customers at cut-price rates.)

融資先企業 の成長発展を支援するため、経営課題解決のためのコンサルティングに努めております。

In order to support the growth and development of the borrower, we will provide consultation support to help resolve management issues.

上記の例の場合、「融資先」を「customer」、「borrower」としています。文脈に応じて、日本語の「融資先」を他の言葉に訳しています。

日本語の「~先」の表現を英語に置き換えるとどうなるか、または英文を日本語に翻訳する場合、「~先」と訳すことがある場合の一例を概観してみました。実務では、日本語の「~先」に相当する言葉は、辞書にはほとんど載っていないことが多く、その言葉の持つ意味を、文脈を通して、または文脈と対比させて新たに作るという作業が求められます。その意味で、日本語を英語に訳す場合、指標となるのは、和英辞典ではなく、国語辞典、法律用語辞典です。日本語の「~先」の表現を英語に置き換えるというテーマは、まだまだ面白い側面があり、また取り上げてみたいと思います。

参考図書:

研究社新英和辞典(研究社)

ランダムハウス英和大辞典(小学館)

カレッジライトハウス和英辞典(研究社)

さまざまな契約:Evergreen Contract(自動更新契約)について

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今まで、実務においてかなりの種類と量の英文契約書の翻訳を行ってきましたが、契約書には様々な名称の契約があります。それらを少しずつ見てみたいと思います。

今回取り上げるのは、英契約書のEvergreen Contract(自動更新契約)です。契約書翻訳の視点から概説します。

  1. Evergreen Contractとは

Evergreen Contractとは、日本語で言うと「自動更新契約」の意。evergreenの本来の意味は、常緑樹、常緑植物の意味です。常に青々とした木々・植物から転じて「いつまでも衰えない、何時までも新鮮な」という意味に使われています。

さて、「Evergreen Contract」は、「いつまでも衰えない、何時までも新鮮な」である契約なのでしょうか?evergreen contractの意味を調べると「自動更新契約」となっています。

「Evergreen Contract」だから木々・植物を扱う「植栽管理契約」のように思われますが、これは、契約期間に関する条項中の「自動的に更新」に相当する部分です。大概の場合、契約を締結させてあげる立場の当事者(当事者間の力関係が上)は、自動更新に関するオプション‐「更新の時期」、「契約を解除しない場合の自動更新の可能性」、「オプションを行使しない場合の契約の終了」、「当事者の更新権限の有無」、「自動更新のデッドライン(何か月前までに自動更新の延長の申し入れを行う)」、「更新できる契約期間の長さ」等に関して、契約の締結を希望する側の当事者(当事者間の力関係が下)に対して優位な立場にあります。

もちろん、両当事者間で新しく契約書を起草する場合、自動更新のオプションを両当事者の間で決める場合もあります。しかし多くの場合は、契約を締結させてあげる立場の当事者がすでに決めている自動更新条項に従うことが多いようです。この部分の例を以下に作成した例文で見てみます。

2.自動更新条項の例

Term of this Agreement shall be one (1) year from the effective date of this Agreement and it shall be automatically extended for successive period of one (1) year, unless either party shall have otherwise notified to other party.

(本契約の期間は、本契約の発効日より満一ケ年とし、いずれかの当事者が相手方に別段に通知する場合を除き、本契約は、1年の連続期間に自動的に延長されるものとする。)

If neither party one (1) month before the end of the period gives a written notice of termination to the other party, the term of the agreement shall be extended for a new one-year period.

(期間の終了する1ヶ月前に、いずれの当事者も、相手方に対し書面による解除通知を提供しない場合、本契約の期間は、新たに1年間の期間延長されるものとする。)

上記の条文を入れることにより、契約は、いずれかの当事者が解除したい旨の通知を行わない限り、契約の期間が延長され、evergreen contractとなります。緑(良好な契約関係)のままでいつまでも変わらない「常緑樹」のように、契約書が、Evergreenである契約の関係を築きたいものです。それには、当事者双方が契約内容を順守して、契約を大切に履行して行こうという日々の取組も必要になります。

ちなみに、常緑樹は、英語では、「evergreen tree」と言いますが、エバーグリーンという言葉は、結構普段使われているなじみがある言葉です。では、落葉樹はと言うと、「deciduous tree」ということになります。皆様は、すでにご存じだと思いますが…

参考図書:

研究社新英和辞典(研究社)

ランダムハウス英和大辞典(小学館)

英文契約書の用語・単語

英語の「前…」と「元…」を表す英語表現: previousとformerについて

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日本語では、例えば、今の首相のその前の首相であった人を表す「前首相」、その「前首相」の前に首相をしていた人々を「元首相」と言います。「前首相」は一人しかいませんが、その前に連綿といる「以前の首相達」―すなわち「元首相」は何人もいます。英文契約書の用語・単語というわけではありませんが、今回は、「前…」と「元…」を表す英語表現について考えてみました。

そこでいずれも「前の~」を意味する「previous」と「former」を見ています。

1.「previous」と「former」とは

「previous」と「former」の違いをThe New Oxford Dictionary of Englishで調べてみます。

(a) 「previous」について

previous exising or occuring before in time or order.

(時機または順序の基準から見て、前に存在していた、または発生していたもの)

(b) 「former」について

former having previously filled a particular role or been a particular thing.

(以前に特定の役割を果たしたことがある、または特定のものであったこと)

of or occuring in the past or an earlier period.

(過去または以前の期間のもの、または過去または以前の期間に発生したもの)

2. いずれも「前の~」を意味する「previous」と「former」の特徴と違い(その1)

「previous」の場合は、「1つ前の」と「順番が前の」を表す時に用い、「former」の場合は「過去の」と「時間的に前の」を表す時に用います。

「previous」も「former」も共に意味的には「前の~」ですが、「previous」 は、previous year (前年)の様に、前に起こった出来事や抽象名詞に使うことが多いといえます。

previous consolidated fiscal year    (前連結会計年度)

previous business year                   (前連結会計年度)

previous method                             (従来の方法)

previous regime                              (旧政権)

基本的に、「previous」は「順番・順序」を表しているので、時間の流れに言及していません。

「former」の場合は、その後に役職名が付くことが多いです。

former president(元社長、元大統領)

former principal (元校長)

former sales manager(前販売マネージャー)

former English teacher(前の英語の先生)

上記のように、「previous」と「former」は、意味的に同じでも、previous」は「時系列的に直前の、直近の」という意味で使われ、この「previous」は、「former」では代替できません

たとえば、I saw that dog walking on the previous day (私は前の日にあの犬が歩いているのを見ました)を I saw that dog walking on the former day ということはできません。

逆に、職業や身分の「元 ~」という意味の former は、 previous では代替できません。

たとえば、She is a former professor of Kyoto University (彼女は京都大学の元教授です)を She is a previous professor of Kyoto University というのは不自然です。

このことから「former」と「previous」の違いは、どちらも「前の…」と言う意味ですが、「former」には「元〇〇」「過去〇〇であった」ということで言外に「今はそうではない」と言っています。 これに対して、「previous」は、現在の状況についての言及ではなく、単に「順番的に前である」ということを言っています。

3.「元…」「前…」の表し方

上記の例で答は出ていますが、改めてその違いを、ここでは「首相」を例にとって確認してみます。

(a)「previous」を使った「前…」の表し方

previous prime ministerと言うと1つ前の首相だけを表します。つまり、「前首相」となります。

前首相とは、ただ一人の存在なので単数で、かつ特定される対象なのでtheが付いて以下の様な例文となります。

He is the previous prime minister.(彼は、前首相です((1つ)前の首相))

(b) 「former」を使った「元…」の表し方

「former」の場合、一人の元首相を表す場合は、a former prime ministerです。

former prime ministersとなると、元の首相達という意味になり、複数で表されます。

Mr. XXX is one of former prime ministers.(XXX氏は、元首相の一人です)

Mr. XXX is a former prime minister.(XXX氏は、元首相です)

「前大統領」は、「previous president」になり、「元大統領」は、「former president」となります。

余談ですが、大統領は、大工の棟梁から派生した言葉です。presidentをどう訳そうかとその当時のお歴々が頭を寄せ集めて考案した言葉です。

家一軒を建てることができる偉い大工の頭(かしら)で尊敬されている言葉にあやかりましたが、他の国のお頭様を「大工の頭-棟梁」呼ぶのは恐れ多いとして、棟梁を「統領」に置き換え、その上に彼の国のトップであるから「大」の字を奉じて、大統領をいうようになりました。

先人たちは、新しく日本に持ち込まれたシステム・言葉を日本語に置き換えるために頭を絞りました。例えば、切手、ハガキ等、今では日常で使われている言葉も先人たちの知恵から生み出されたものです。

「前の~」という意味を表す単語には、「previous」、「former」のほかにも「before」、「prior」、「ex」等がありますが、またの機会にとりあげてみたいと思います。

参考図書:The New Oxford Dictionary of English (Oxford University Press)

英文契約書の用語

英文契約書の用語。単語 「責任」や「義務」を意味する言葉 Responsibility、Obligation、Liability、Dutyについて

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今回は、英文契約書で「責任」や「義務」を意味する言葉のいつくかを作成した例文を通して(法律の条文を除く)を見てみます。いずれもいわゆる「責任」や「義務」を意味する言葉です。ここに記載した意味は、いずれも英文契約書で使われる場合の主な意味です。もちろん英単語の常としてここに書いた以外にも様々な意味を持ち、他の語と組み合わされて様々な成句を作ります。なを、いつものとおり契約書翻訳の視点から見たものです。

Responsibility 責任、使命、債務、任務、義務、債務の返済能力

形容詞形は、responsible:責任がある、責任を負うべき、~の原因である

「責任」を意味する代表的な言葉です。「当然果たすべき責任・義務」の意味合いがあります。

The Contractor shall maintain working capital to require for fulfilling its responsibilities under this Agreement. (請負業者は、本契約に基づくその責任を果たすために必要な運転資金を維持する)

Loss or damage, which results from Seller’s non-conforming preservation, packaging, crating or containerization, shall be the responsibility of Seller. (売主による不適切な保管、梱包、箱詰、またはコンテナ化に起因する損失または損傷は、売主の責任となる)

どちらかというと「be responsible for 」の形式で例えば、以下のように使われるケースも一般的で、よく知られている使い方です。

The user is responsible for using the latest version of this software. (ユーザーは、本ソフトウェアの最新バージョンを使用する責任がある)

The Company will be solely responsible for all aspects of transactions with End Users. (当社は、エンドユーザーとの取引のすべて面について単独で責任を負う。)

Obligation 義務、責任、債務、債券、動詞は「obligate」

ここでは義務、責任という意味も持ちますが、その中でも「強制力のある義務」、例えば「債務:債務者が債権者に対して一定の行為をする(給付)をすることを内容とする義務」等の意味でも多く使われます。ちなみに英和辞典には「慣例、習慣、礼儀作法を守るため、約束や協定を実行するために人が行わなければならないこと」とあります。

The responsibilities and obligations of the Contractor related to this Service shall be set forth in the Exhibit of this Agreement. (本サービスに関連する請負業者の責任と義務は、本契約の別紙に記載されている)

In performing its obligations under this Agreement, the Contractor shall perform the services stipulated in this Agreement. (本契約に基づくその義務の履行において、契約者は本契約に規定するサービスを行う)

If all obligations are due, or none of the obligations are due, the applicable performance shall be allocated in the order of the obligations which shall result in more benefit to the obligor when performed;(すべての債務が弁済期にあるとき、又は弁済期にないときは、債務者のために弁済の利益が多いものに先に充当する。)(民法

Liability 法的責任、責務、債務、義務、負債

義務、責任という意味も持ちますが、(損害・負債・支払いなどに対する)法的責任,責務の意味合いもあります。例えば、liability for damage(損害賠償責任)など。例文にはありませんが、保険に関する事柄が記載されている契約などでも多く見受けられます。なを、「損害賠償」については、「英文契約書の用語・単語 損害と損害賠償の表現(その1)とその」(2)」を参照してください。

The Seller, in its sole discretion, may terminate this Agreement without any liability whatsoever.(売主は、その単独の裁量で、いかなる責任もなしに、本契約を解除することができる。)

The Customer may revoke the whole or any part of this Agreement, without penalty or liability to or by Customer by giving written notice of termination to the Contractor. (顧客は、請負業者に解約通知を送付することにより、顧客に対する違約金または顧客による法的責任を負うことなく、本契約のすべてもしくは一部を解約することができる。)

Duty 義務、本分、任務、職務、勤め

英和辞典には「良心、忠誠心、法律に従って人が行うべきこと、または避けること」とあります。「人として当然に行うべきこと、または避けるべきこと」のようです。

He performs his duty. (義務(職務)を果たす)

He neglects his duty. (義務(職務)を怠る)

The Contractor shall perform his/her duties to the best of his/her abilities and shall comply with all laws and regulations related to the services under this Agreement.(請負業者は、その職務を全力を尽くして(全力で)遂行し、本契約に基づくサービスに関連するすべての法律および規制を順守する)

If a person who has received a testamentary gift with burden does not perform the duty imposed thereby, an heir may demand performance of that duty fixing a reasonable period to do so. (負担付遺贈を受けた者がその負担した義務を履行しないときは、相続人は、相当の期間を定めてその履行の催告をすることができる。)(民法

1つ1つの言葉を辞書で丹念に見てゆくと、それぞれの使いどころが感覚的につかめるようになります。辞書としては、取り扱いが面倒で場所もとりますが、やはり紙ベース辞書がおすすめです。義務や責任を表す言葉には、上記の他にもありますが、正確な翻訳には文脈に応じた単語の使い分けが求められます。

参考図書:

ランダムハウス英和大辞典(小学館)

研究社新英和辞典(研究社)

法律英単語ハンドブック(自由国民社)

日本法令外国語訳データベースシステム

英文契約書の用語・単語 

英文契約書の用語・単語 expiration/expiry、 termination/terminate

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今回は、英文契約書で使用されるexpirationとterminationについて作成した例文その他を通して英文契約書での使われ方の一例を作成した例文(法律の条文を除く)を通して契約書翻訳の視点(主に契約書で使われる場合の意味に絞って)から見てみます。いずれもなくてはならない言葉です。

  1. expiration/expiryについて
 expiration・expiry (期限・期間の)満了,満期(日),終結、終了

動詞形はexpire :(期間)が満了する,失効する

この英文契約書や法律文書では、契約や法律文に規定されるある期間について言及するときになくてはならない言葉です。

The obligations of the parties as set forth in this Agreement shall survive expiration or termination thereof. (本契約に規定する両当事者の義務は、本契約の満了、または、解除後も有効に存続する。)

In case of the expiration or termination of this Agreement, the Buyer shall return the tool for sales promotion rented from the Seller to the Seller.(本契約の満了または終了の場合、買い手は売り手から借りた販売促進用のツールを売り手に返却する)

This Option shall become effective on the date on which this Agreement commences and shall expire on the date on which this Agreement terminates.(このオプションは、本契約が開始した日に発効し、本契約が終了した日に失効する)

The parties hereto, at the expiry of this Agreement, undertake not to employ employees of the other’s party for a period of at least five years from the date of expiry of the present agreement.(本契約の両当事者は、本契約の満了時に、本契約の満了から少なくとも5年間は、相手方の従業員を雇用しないことを約束する。)

上記に作成した例文のようにexpirationやexpire単体でも使われますが、他の語と組み合わせて、期間についての様々な意味を表します。

expiration date: 満期日、満了日

expiration of period:期間の満了

expiry of term :期間の満了

The term of service of each director who is assumed as alternate or increase of the number of staff shall be till the expiration of term of service of incumbent directors.(補欠または増員で就任した各取締役の任期は、現任取締役の任期の満了すべき時までとする)

「期限切れ」とか「終わる」という意味では、契約書に限らず日常的に使用されます。

My employment-based visa will expire next month.(就労ビザは来月失効する)

My passport will expire next month.(パスポートは来月期限が切れる)

The copyright of this novel will expire in 50 years(この小説の著作権は50年後に切れる)

The subscription service expires when its service period come to an end.(サブスクリプションサービスは、サービス期間が終了すると終了します)

  1. termination/terminateについて
termination (継続すること・状態の)終了,終結、(契約の)解除,

動詞形はterminate :(継続的なこと・状態を)終わらせる、(関係・契約などを)打ち切る、解除する、(人を)解雇する

終わるという意味合いでは「expiration」と同じですが、例えば、「early termination of the Agreement」(契約の中途解約)というように継続している事柄を終わらせるというニュアンスで使われます。もちろん文脈的に「満期」の意味で使われることもありますが、やはり多くは「expiration」とは分けて使われるようです。

The obligations of the Contractor set forth in this Agreement of the shall cease to apply upon the expiry or the earlier termination of this Agreement.(本契約に規定の請負業者の義務は、本契約の満了または中途解約時に適用されなくなる)

During the term of the Agreement and for a period of three (3) years from the expiration or termination thereof, the partis hereto shall fulfill the Confidentiality.(本契約の期間中およびその満了または終了から3年間、本契約の当事者は本契約の守秘義務を履行する)

単に契約を終わらせるという意味であるなら、端的に次のような例になります。

Either party may terminate this Agreement immediately by written notice to the other party.(いずれの当事者も、相手方に書面で通知することにより、本契約を直ちに終了することができる)

expiration・expiry、termination・terminateはいずれも上記の意味以外にも様々な意味を持ちますが、冒頭で述べたようにここでは主に契約書で使われる場合の特に「終わらせる」の意味に絞ってみてみました。

参考図書:

研究社新英和辞典(研究社)

ランダムハウス英和大辞典(小学館)

契約書翻訳の用語・単語 

英文契約書の用語・単語  ethicsとexamination

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今回は、英文契約書にあるethicsとexaminationについて契約書翻訳の視点から作成した例文(法律の条文の除く)を通して、その使い方を見てみます。

1. ethicsについて

ethics 倫理 ethics code(倫理規定)、ethics standards(倫理基準)

「ethics」という言葉は、英文契約書では、以前から思いのほか良く使われています。契約上の道徳規範を確認する意味に加え、だいぶ以前から世界の風潮からビジネスにかかわる契約でも、商道徳に加え、環境や人権に対する配慮がなされ、「ethics」という言葉が英文契約書で見られます。

Ethics and Standards of Business Conduct(事業運営における道徳規範と基準)

To meet social responsibilities and to achieve success in the marketplace, Supplier shall uphold the highest standards of ethics. (社会的責任を果たし、市場で成功を収めるために、サプライヤーは最高の倫理基準を維持するものとします)

倫理規定の1つとして、「ethics」という言葉は使いませんが、近年、日本の契約書を英訳する際に以下のような内容の条項をよくみかけます。以下は、当方で作成した例文です。

A party itself shall represent to and assure the other party that it shall not be organized crime groups, organized crime group affiliated companies, fixers of stockholders’ meetings or a person equivalent thereto or its member (hereinafter referred to as “Antisocial Forces”)(当事者は、自らが、暴力団、暴力団関係企業、総会屋若しくはそれに準ずる者又はその構成員(以下総称して「反社会的勢力」という)ではないことを相手方に表明し、確約する)

2. examinationについて

examination 検査、調査、検討、試験、調査、審査、考察、尋問、審理、診断

「examination」は、英文契約書に限らず日常的に様々な分野で使用されています。英単語の常として様々な意味を持ちます。英文契約書でも同様に様々な意味に使われるため、前後の文章や文脈的にみて適切に訳出する必要があります。

(a) Party A shall not disclose any information obtained from R&D to any person other than its  officers and researchers who are engaged in the Examination thereof (当事者Aは、研究開発から得られた情報を、その審査に従事する役員および研究者以外の者に開示してはならない。)

(b) The parties hereto shall not use the Confidential Information of the other party for any purposes other than the Examination without a prior written approval of the other party.(当事者は、相手方の秘密情報を、相手方の事前の書面による承諾なしに、本検討以外の目的に使用しない)

上記の例文は、例文目的の参考ということで、前後の文章を考慮せず、とりあえず例文(a)では「examination」=「審査」、例文(b)では、examination」=「検討」、と任意に記載しました。以下のように契約内容や文脈の場合は、「検査」や「考察」などにもなります。

The seller shall conduct the examination of quality, quantity and packaging of Products prior to their shipment.(売り手は、出荷前に製品の品質、数量、および梱包に関する検査を行う)

上記は、examination=「検討」としましたが、以下の例文ように「検査」となることもあります。

The company shall not disclose Results of Medical Examinations to any person other than persons who have medical examination and medical officers who are engaged in the Examination thereof.(会社は、健康診断の結果を、健康診断を受けた者とその検査に従事する医療関係者以外の者に開示しない)

3. 英文を書く場合や和文英訳をする場合、なれないうちは、多様な意味を持つ単語よりも、意味が取りやすい単語を使う

多くの場合、同じ意味を持つ別の単語で置きかえることができるので、英文を作成(または和文英訳を)する場合は、慣れないうちはできるだけ自分が意図する意味に特化した単語、またはより意味がとりやすい単語を使用するのが良いかと思われます例えば、上記の「examination」は、「試験」だったら「test」とか「experiment」。「調査」なら「survey」、「research」、「investigation」。検査なら「inspection」や「investigation」を使うなど、文章を作成するうえでわかりやすい他の単語で置き換えるのも文章を手早く、効率的に作成する1つの方法です。これは「examination」に限らず1つの単語が多くの意味を持つ場合にもいえると思います。

1つの英単語が色々な意味を持つ理由に1つは、日本に英語が渡来した時に、各分野・各業界でそれぞれ訳語を作ったということもありますが、本来、英単語自体も同じ単語でも分野が違うとその分野における固有の意味を持つ単語が多く、また時代が進むごとに従来からある単語に新しい意味が付け加えられるの繰り返しです。(私見ですが、多分、ネイティブからすれば1つの単語をいろいろな意味またはイメージを持つ1つの存在として包括的にとらえているのかもしれません。やはり、これはアルファベットが26文字であり、その中の限られた組み合わせを、言い方はよくないですが、26文字の中でやりくりしているからでしょうか?)いずれにしても正確な翻訳では、それが英訳・和訳にかかわらずその内容と文脈から適切な言葉を当てはめる必要があります。

参考図書:

法律英単語ハンドブック(自由国民社)

カレッジライトハウス和英辞典(研究社)

研究社新英和辞典(研究社)

英文契約書の用語・単語

英文契約書の用語・単語 exclusion、exclusiveについて

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今回は、「exclusion」、「exclusive」について英文契約書で使われる場合の使われ方や意味について、作成した例文を通して(法律の条文を除く)契約書翻訳の観点から見て見ます。いずれも英文契約書でこれらの単語は単体で用いられほか、他の語と組み合わせて成句として登場します。ここ最近も書いたことがありますが。このブログの目的は、1つの単語に様々に意味を持つ傾向がある英単語が英文契約書で使われる場合、契約書・法律文書で使われる特有の意味を持つことがあります。このブログではその単語が英文契約書で使われる場合のその単語の意味と使われ方を手っ取り早く理解し、英文契約書を読んだり、書いたり、また、時として、和訳したり、英訳するするための一助になればとの考えから英文契約書で使われる、英単語をとりあげています。英文契約書の構成、法律的な意味や解釈については、専門書を参照してください。

1. Exclusionについて

Exclusion 免責、除外。動詞は「exclude」

多くの場合、義務や責任を免除したり、除外したりする場合に見られる表現です。

This exclusion shall not apply to the liability for the breach provided for in the Master Contract. (本適用除外は、基本契約に規定の違反の対する責任には適用されない)

Any right of the parties hereto shall exclude or limit if such exclusion or limitation of the right would be lawful.(そのような権利の除外または制限が適法な場合、本契約の当事者の権利は排除され、または制限される)

Nothing in this Agreement excludes or limits either party’s liability for fraud or fraudulent misrepresentation.(本契約のいかなる条項も、詐欺行為または虚偽表示に対するいずれの当事者の責任も排除せず、または制限しない)

2. Exclusiveについて

Exclusive 独占的な、排他的な、唯一の、exclusive dealing(排他的条件付き取引)、exclusive distributor(独占的販売店、総代理店)、exclusive jurisdiction(専属管轄権)、*exclusive license(独占的ライセンス、独占的実施権、専用実施権)、*独占的ライセンス、独占的実施権としてありますが、排他的ライセンス、排他的実施権とすることもあります。

以前にもとりあげたことがありますが。、英文契約書ではポピュラーな単語の1つです。上記のように他の語との組み合わせで様々な成句を作ります。

The Seller shall appoint the Distributor as its exclusive distributor in the Territory for the Products upon the terms and conditions herein set out. (売主は、本契約に規定された条件に基づき、本製品に関する本販売区域の独占的販売代理店として販売代理店を任命する。)

The Supplier is the exclusive owner of the Intellectual Property regarding the Products. (サプライヤーは、製品に関する知的財産の排他的な所有者です。)

A holder of a utility model right or an exclusive licensee may not exercise his/her utility model right or exclusive license against an Infringer, etc. unless he/she has given warning in the Report of Utility Model Technical Opinion regarding the registered utility model. (実用新案権者又は専用実施権者は、その登録実用新案に係る実用新案技術評価書を提示して警告をした後でなければ、自己の実用新案権又は専用実施権の侵害者等に対し、その権利を行使することができない。)(実用新案法

If this Agreement and the separate contract has mutually exclusive provisions, the provisions of this Agreement shall take precedence. (本契約と個別契約に相互に排他的な規定がある場合、本契約の規定を優先されるものとする)

mutually exclusiveは、「相互に排他的」という意味のほか、「共存しない」、「一方のみが」、「互いに矛盾する」、「相容れない」などと文脈上から訳すこともあります。

「Exclusive」が作る成句になかでも特に「exclusive jurisdiction」は、ほぼ大部分の英文契約書に記載があります。これは特定の裁判所のみがその契約にかかわる案件につき裁判権を有することです。

例えば、Any dispute arising out of this Agreement shall be submitted to the exclusive jurisdiction of the Tokyo District Court of Japan for the first trial. (本契約に起因する紛争は、第一審に関して日本国の東京地方裁判所の管轄権に服する)

This Agreement shall be governed by the laws of Japan and any dispute in relation to this Agreement shall be brought in the Tokyo District Court as the exclusive competent court for the first trial. (本契約は日本法に準拠し、本契約に関する紛争の第一審の専属管轄裁判所は、東京地方裁判所とする。)

なを、裁判に勝っても相手方がその裁判地に資産等を持っていない場合等、この規定についてその有効性が問題となることもあるようです。傾向的には契約書を起草した当事者や契約の主導権を握っているような当事者は、やはり自社の本拠地を裁判地に指定することが多く見られます。

参考図書:

カレッジライトハウス和英辞典(研究社)

研究社新英和辞典(研究社)

ランダムハウス英和大辞典(小学館)

日本法令外国語訳データベースシステム

英文契約書の用語・単語

英文契約書の用語・単語     evidence、 exceptionについて

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今回は、「evidence」、「exception」について見てみます。いずれも英文契約書でこれらの単語が単体で用いられほか、他の語と組み合わせて成句として登場します。このブログの目的は、英語の性質上、英語の1つの単語は様々な意味を持つ場合が多く、特にその単語が使われる分野が異なると、その単語はその分野特有の意味を持つことが多くなります。このブログではその単語が英文契約書で使われる場合のその単語の意味と使われ方を手っ取り早く解説します。いずれも作成した具体的例文(法律の条文を除く)を通して契約書翻訳の観点から見てゆきます。

  1. Evidenceについて
evidence 証拠、証言、しるし、形跡、reliable evidence(信頼に足る証拠)、enough evidence(十分な証拠)、documentary evidence、evidential document(証拠書類)またはdocumentary evidence(証拠書類)、evidential document(証拠文書)

一般的には、「事実・真実を明らかにする根拠となるもの」ですが、法律文では時として「立証を必要とする事実の存否について裁判官が判断を下す根拠となる資料」。

Subcontractor shall provide written evidence of such approvals, consents, permits or licenses to the satisfaction of the Contractor, on demand. (下請業者は、要求に応じて、請負業者が満足する当該承認、承諾、許可または免許についての証拠書類を提供する)

An accounting audit shall include the evidential documents for the amounts stated the financial statements. (会計監査には、財務諸表に記載された金額の証拠文書を含める)

The parties hereto shall immediately report the evidence of fraud if such evidence is discovered. (本契約の当事者は、詐欺の証拠が発見された場合、直ちに報告する)

The administrative determination on the merits must clarify the facts of a marine accident and the details of intentional or negligent conduct in which the examinee engaged in the course of their duties, and also state the reason for the finding of facts based on evidence;(本案の裁決には、海難の事実及び受審人に係る職務上の故意又は過失の内容を明らかにし、かつ、証拠によつてこれらの事実を認めた理由を示さなければならない)(海難審判法

  1. Exceptionについて
Exception (裁判に対する)異議、但し書き、除外条項、

「except for」、「except that」として使用される場合が多く見れられます。まずは「exception」を使った例文。

Either party hereto may assign or transfer all or part of obligation under this Agreement without a written consent of the other party. With the exception that the parties hereto may assign or transfer it to a party’s affiliates or members. (本契約のいずれの当事者も、相手方の事前の書面による承諾なしに本契約のすべてもしくは一部の義務を譲渡または移転できない。ただし、例外として、本契約の当事者は、本契約のすべてもしくは一部の義務を当事者の関係者または構成員に譲渡または移転することができる)

例文として作成したのでいささか冗長な文章になりましたが、「except that」などを使うと上記の例文よりもすっきりしたものになります。

Either party hereto may not assign or transfer all or part of obligation under this Agreement without a written consent of the other party except that the parties hereto may assign or transfer it to a party’s affiliates or members.

この文章は、以下のようになることもあります。

Either party hereto may assign or transfer all or part of obligation under this Agreement to a party’s affiliates or members, however, provided, that a prior written consent of the other party is obtained.

ここでは、「assign」を譲渡、「transfer」を移転としましたが、和訳の際に「transfer」を「譲渡」としたり「assign or transfer」を一括して「譲渡」または「移転」として訳出することもあり、いずれも文脈から判断します。経験的には、英文契約書の場合、「assign」のみが書かれている傾向がままあるようで、文脈的に「assign」を「譲渡」として訳出するケースが多いように感じます(あくまでも経験です)。

次回は、「exclusion」、「exclusive」について見てみます。

参考図書:

ビジネス法律英語辞典(日経文庫)

研究社新英和辞典(研究社)

日本法令外国語訳データベースシステム他

英文契約書の用語・単語

英文契約書の用語・単語 損害と損害賠償と表現(その2)

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前回の「単語 損害と損害賠償と表現(その2)」に続き「損害」と「損害賠償」という言葉が英文契約書でどのように使われているかを契約書翻訳の視点から概説します。今回は、「damage」と「damages」以外または他の言葉による「損害」と「損害賠償」の表現について見てみます。

1. 損害(または損害を与える、害する)を意味する「damage」以外の言葉

英文契約書の中で使われる場合の例。

(1) loss:損失、喪失、ロス、欠損、損害

“Losses” means all losses, liabilities, damages, costs, expenses and charges arising from or in connection with any act or omission of a party under this Agreement.(「損害」とは、本契約における当事者の行為または不作為に起因するまたは関連するすべての損失、負債、損害賠償、費用、経費、料金を意味する)

(2) injury:(身体的な損害を含む)損傷、傷害、負傷、怪我、損害、被害、侵害

Any breach of any of the provisions of this Agreement will cause irreparable and substantial injury to the Business and money damages would not provide an adequate remedy to the Business.(本契約のいかなる条項に対する契約不履行も、本ビジネスに対する回復不能および実質的な侵害を生じること、また、損害賠償金では本ビジネスに十分な救済を提供できない)

Lessee shall be responsible for any act that causes injury or damage to persons or building. (賃借人は、人もしくは建物に対する傷害または損害に対するあらゆる行為に対して責任を負うものとします。)

(3) loss or damageとして、慣用句的として使われる場合があります

If any loss or damage is occurred to this machine due to the reasons attributable to Party B, Party B shall indemnify such loss or damage to Party A.(当事者Bの責に帰すべき事由により本装置に損害が発生した場合、当事者B は当事者Aに対し損害の賠償を行う)

If the handling of any hazardous materials in the Building by Tenant results in loss or damage to person(s) or property,(賃借人が本建物内において危険物の取扱いを行った結果として、人員もしくは財産に対する滅失もしくは毀損が発生した場合、)

 2. 損害賠償を意味する「damages」以外の言葉

(1) Compensation for damage(損害賠償)

In the case where the amount of compensation for damage is scheduled, if the amount is extremely inappropriate, the parties concerned may request increase or decrease it.(損害賠償の額が予定された場合において、その額が著しく不相当であるときは、当事者は、その増減を請求することができる)(鉱業法

「Compensation for damage」は、状況に応じて、compensation for lack of business and any other loss or damage(事業の損失およびその他の損失または損害に対する補償)の様に、forの後に、実際に発生した損失を記載することができます。

(2) Compensatory damages(補償的損害賠償)

In some cases, compensatory damages have been paid with interest as well.(一部の場合、補償的損害賠償も利子付きで支払われる)

(3) Indemnity(損害賠償)

In the event that the foregoing indemnity is unavailable or insufficient to hold other indemnified parties harmless,(前述の補償が、他の被補償当事者を免責するために得られない、もしくは十分でない場合、)

Indemnifyは、Indemnityの動詞形です。

If either party commits a breach of any provision hereunder, the party who commits such breach shall indemnify the affected party for loss or damage. (いずれかの当事者が、本契約の条項に違反した場合、当該違反を行った当事者は、損害を受けた当事者に当該損害を補償する)

(4) claim for loss(損害賠償要求、損害賠償)

The liability of your company to the clients in respect of any claim for loss, damage or expense of whatsoever nature and howsoever arising whether directly or indirectly,(いかなる性質および直接的または間接的を問わずどのように発生した場合であっても、損失、損傷、費用の損害賠償に関する御社のクライアントに対する責任は、…)

上記の場合は、claim for loss(損害賠償)の対象をdamage、expenseまで広げた形の文章です。

(5) Restitution(〔損害などの〕賠償,返還)

We would like to make some kind of restitution for the damage.(その損害になんらかの賠償をしたいと思います)

If user suffers damages from using these services, this company will not issue restitution for these damages.(ユーザーが本サービスを利用したことによりユーザーに損害が生じた場合でも当該損害の賠償は致しません)

以上、「damage」と「damages」以外または他の言葉による「損害」と「損害賠償」の表現について見てみてきましたが、いずれもその単語が英文契約書で使われる場合のその単語の意味と使われ方を手っ取り早く理解するという趣旨に沿って解説してみました。

参考図書:

法律英単語ハンドブック(自由国民社)

カレッジライトハウス和英辞典(研究社)

研究社新英和辞典(研究社)

日本法令外国語訳データベースシステム他