契約書翻訳, 契約書英訳

英文契約書の単語・用語 dischargeについて

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前回、「「履行」を意味する「performance」以外の英単語として「fulfillment」をとりあげましたが、それ以外にも、「履行する」またはそれに類する意味を持つ単語として、implement、carry out、execute、discharge等があります。」ということを書き、この中で「dischargeは内容がやや複雑になるので機会をあらためて」としました。

「discharge」はさまざま意味を持つ言葉ですが、辞書を見ると「discharge」には、discharge one’s duties( 職責を果たす)とかdischarge one’s duties [responsibility](義務[責任]を果たす)、「(なすべきことを)遂行する,履行する」、He discharged all his debts.(彼は借金を全部返済した)という意味があることが書かれています。これらは動詞ですが、名詞の場合にも「(義務の)履行・遂行」の意味で使われる場合があります。(例:債務の)履行,償還)

経験的にも「履行する」という意味で「discharge」が使われている英文契約書を目にしたこともそれなりにあります。

以下に例文を作ってみました。

The guarantor shall be a principal debtor who discharges the obligations under this Agreement. (保証人は、本契約に基づく義務を履行する主たる債務者とする。)

The Contractor shall discharge his or her duties set forth in this Agreement and perform the undertakings specified in the separate contract. (請負業者は、本契約に定める義務を履行し、別の契約に定める業務を履行する)

ところが、「discharge」が持つ意味の1つに「免責する」、「免責」があります。

The Contractor may not be discharged from the duties specified in this Agreement even if a natural disaster occurs. (自然災害が発生しても、契約者は本契約に定める義務を免責されない)

The debtor, if he/she has filed a petition for grant of discharge, may not file a petition set forth in Article 218 (1) or a petition for commencement of rehabilitation proceedings.(債務者は、免責許可の申立てをしたときは、第二百十八条第一項の申立て又は再生手続開始の申立てをすることができない)(破産法)

そほかにも主なものだけでも「discharge」は、以下のような意味があります。

discharge(動詞):退院させる、解雇する、除隊させる、釈放する、(裁判所の命令を)取り消す、(積み荷・乗客などを)降ろす、(商品を)送り出す、荷揚げする、(荷を)降ろす、(煙・廃棄物などを)排出する、放電する、(負担が)解消される等、さまざまな意味があり、名詞についても同様です。

例えば、Exhaust gas discharge system(排出ガス排出システム)、Safety precautions shall be observed when discharging the battery.(バッテリーを放電するときは、安全上の注意事項を守ってください。)、The Contractor shall discharge a cargo from a ship(請負業者は貨物を船から降ろす)

The chimney of the house discharged smoke.

The Arakawa River discharges its waters into the Tokyo Bay.

Coal-fired power plants discharge(emit)a lot of carbon dioxide.

The train discharges all passengers at the terminal station.

日常的には、むしろ上記のような意味で使われるケースが多いはずです。

ざっと見ただけでもさまざまな意味を持つ「discharge」ですが、英文契約書に記載されている「discharge」が「履行する」、「(責任)を果たす」という意味を持つかについては、いつものことですが、文脈的に把握する必要があります。(例えば、文脈的に「discharge one’s duties [responsibility]」のよう意味をなしているか等)。

これは、英文和訳の例ですが、日本語の契約書を英語に訳す(契約書の英訳)の場合、日本語の「履行する」、「(責任)を果たす」という文章の英訳をする場合、さまざまな意味を持つ「discharge」をつかわなくても、perform, implement, implement、carry out、execute、fulfill等を使うのが安全かと思います。

参考図書:

研究社新英和辞典(研究社)
ランダムハウス英和大辞典(小学館)
カレッジライトハウス和英辞典(研究社)
日本法令外国語訳データベースシステム

 

契約書翻訳

英文契約書の単語・用語 exceptについて

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契約書翻訳の視点から、前回は除外することがらを導く成句「unless otherwise」について見てみましたが、同じく除外することがらを導く単語に「except」があります。一般に他の単語との組み合わされることにより、以下に記載するような成句として使用されます。英文契約書翻訳の視点から見てみます。「unless otherwise」も「except」のいずれも和訳英訳を問わず英文契約書にはかかせない、覚えておくと便利な言葉です。

1. exceptを使用した成句

「except」単体の持つ主な意味は、辞書をみればわかるように「~を除いて」、「~の他」、「~以外は」等です。

all of my friends passed the examination except me.(私を除いて私の友人は全員試験に合格した)

I work every day this week except Sunday.

すでに述べたように「except」は、英文契約書に限らず、一般に他の単語との組み合わされた以下のような成句として使用されます。

except+動詞の原形:~する以外は

except+to 動詞の原形~: ~する以外は

except for:~を別にすれば、 ~以外の点では、

except from: ~から除外する

except that~:ただし、~を除いて=unless

except where~: ~の場合を除き

except when~: ~の時以外は、~の時を除き、

その他、except upon、except+前置詞句、except+副詞句、except asなどがあります。

いずれも辞書に記載されている事柄ですが、今回は、英文契約書で使用される場合の用例を作成した例文をとおして簡単に見てみたいと思います。

2.  英文契約書と法律文で使用される場合の用例

The RECIPIENT may not acquire any intellectual property rights under this Agreement except the following limited rights. (受領者は、以下の制限付き権利を除き、本契約に基づいて知的財産権を取得することはできない)

Except as provided for in this Article, the Contractor must not disclose the information learned in the course of performance of this Agreement to third parties. (本条に規定されている場合を除き、契約者は、本契約の履行過程で知り得た情報を第三者に開示してはならない)

Except as otherwise provided for in this Agreement, either party hereto may continue to hold its own title for its existing rights, privileges, powers, licenses, permits and intellectual property rights of whatever nature. (本契約に別段の定めがある場合を除き、本契約のいずれの当事者も、既存の権利、特権、権限、ライセンス、許可、およびいかなる性質の知的財産権についても引き続き独自の所有権を保持することができる)

これは、「unless otherwise」を使い「Unless otherwise provided for in this Agreement,」とすることもできます。

The supplier shall deliver the products in timely manner based on the schedule attached to this Agreement except to the following events. (サプライヤーは、以下の場合を除き、本契約に添付されたスケジュールに基づき適時に製品を納品する)

Either party hereto shall not have the right to assign its rights and obligations under this Agreement without a prior written consent of the other Party, except that a party shall have the right to assign this Agreement in the event of a merger or an acquisition that all or substantially all assets thereof is acquired by a successor. ( 本契約のいずれの当事者も、他方当事者の事前の書面による同意なしに、本契約に基づく権利および義務を譲渡する権利を有しない、ただし、合併または買収により、本契約のすべてまたは実質的にすべての資産が承継人によって取得される場合、当事者は本契約を譲渡する権利を有する)

A judgment rendered with regard to an action to oppose bankruptcy claim assessment, except where the action is dismissed as unlawful without prejudice, shall approve or change the order on the petition for bankruptcy claim assessment. (破産債権査定異議の訴えについての判決においては、訴えを不適法として却下する場合を除き、破産債権査定申立てについての決定を認可し、又は変更する)(破産法

幾つかの例文をあげましたが、これ以外にも「except」や「unless otherwise」を使用したさまざまな用法があります。 英文契約書や法律文ではなくてはならない言葉です。

参考図書:

ランダムハウス英和大辞典(小学館)
カレッジライトハウス和英辞典(研究社)
英文契約書の読み方(日経文庫)
日本法令外国語訳データベースシステム

契約書翻訳

英文契約書の単語・用語 implement、carry out、executeについて

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契約書翻訳の視点から前回、英単語「performance」が持つ「履行」という意味について、「performance」が使われている会話や文章の内容と文脈から判断する必要があるという点を中心に、作成した例文を通してその使い方を簡単に見てみました。その中で、「履行」を意味する「performance」以外の英単語として「fulfillment」をとりあげましたが、それ以外にも、「履行する」またはそれに類する意味を持つ単語として、implement、carry out、execute、discharge等があります。今回は、それらについて作成した例文を通して、それらの使い方を見てみます。なを、前回「performance」について「履行」という意味にしぼってみていましたが、当然のことですが実際には、英文契約書や法律文書では、「履行」以外の意味で使われる場合もあります。この点については、
英文契約書の用語・単語 performanceについて(その2)」で、契約書翻訳ではありませんが、内閣府の法令翻訳データベースにある日本の法律文の英訳の中から幾つかの興味深い例をとおしてみてみました、

以前にも述べましたが、確認までに「履行」とは、「一般用語では広く義務を遂行すること。法令では、一般用語の意味で使われるほか、債務者等が債務の内容を実現すること」でした。

英単語の性質としてimplement、carry out、execute、dischargeも、各々がいくつかの意味をもっています。主に「履行」と表現される場合を取り上げますが、それ以外の使われ方についても興味のあるものを取り上げてみます。まずは、これらの単語の持つ主な意味について取り上げ、作成した例文を通してその使われ方を見てみます。

  1. implement (implementation)

Implementは、名詞では、道具、用具、器具             例: farming implements 農具

その他の意味には、手段、手先があります。私見ですが、「道具を使用して、何かの目的を行う、そして、それを達成する」の意味から転用して、以下の動詞の履行する、実施する、遂行する、達成するに繋がったのでは推測します。

動詞としての意味は、(契約・計画などを)履行する、実施する、遂行する、実行する等の意味があります。

We do make effort to implement the license agreement.

I need someone’s help to implement that plan.

Pre due diligence work has revealed the need for the Company A to assist the Company C develop and implement a strategic plan for growth in xxx.(事前の適性評価作業により、C社が、xxxにおける成長戦略の計画を開発し、また、実施するために、A社がC社をアシストする必要があることが判明した。)

The Company will implement terms of service governing use of the Company Website. 会社は、(会社のウエッブサイトの使用を管理する利用条件を履行する)

その他に、(要求・条件等を)満たす、(…に)道具[手段]を与える等の意味があります。.

2. carry out (carrying-out (carrying out))

(…を)達成する、実行する、履行等の意味があります。これらの中でもCarry outは、計画や業務等を「実行する」意味でよく使われます。口語的な表現ではありますが、契約書においても使われます。受動態の形態で使われることも多くみられます。

Shikinen Sengu is carried out every 20 years.(式年遷宮は、20年に一回執り行われます)
Carrying out the mandates assigned to it by the CGF.

How frequently are inspections carried out?

At that time, all its customs affairs will not be able to be carried out.(その時点は、その企業の通関業務のすべてを遂行することはできません)

General effect that the delay is likely to have on the carrying out of the works (業務の実施を遅らせる可能性のある一般的な影響)

be carried out to the best of its skill and ability for the benefit of XXX;( XXXの利益のために最善のスキルおよび能力により遂行されること)

any activities carried out by or on behalf of the Marketing Partner under this agreement;(本契約に基づく「マーケッティングパートナー」により、もしくはその代理により実行された活動)

Carrying out the mandates assigned to it by the Company. (CGFにより割り当てられた委任事項を実行する)

  1. execute (execution)

契約書関連の場合、「計画に則り実行する」意味を持っています。以下に作成した例も契約書では「実行する」の意味で使用されています。なを、ソフトウェア工学の場合で言う「コンピュータで実行する」は、コンピュータ等がそのプログラムの命令を実行することの意味があります。

改めて「execute (execution)」の意味を確認してみます。

executionの名詞形であるexecutionは、実行、実施、遂行、執行、処刑、演技、演奏、(芸術作品などの)制作等の意味があります。

performanceのもexecutionの演技、演奏と同じように、上演、演奏、演技、興行、パフォーマンス、出来栄え、成績、業績、性能という意味がありました。

2つを比較するとexecutionの方が相対的に強い意味を持ち、執行、処刑等と訳すことがあります。では、どうしてその意味が「(死刑の)執行、処刑」になるのでしょうか。それは、executeの語源を見ると判明します。これはex(外)とsequi(続く)が合体した言葉に由来しているexsequi(墓へ続く)というラテン語が原義です。

Each Party represents and warrants that they are duly authorised to execute, deliver and fully perform under this Agreement and that the performance thereof will not conflict with any other agreement.(各当事者は、各当事者が本契約に基づき、履行し、提供し、かつ完全に実行するために正当な権限を与えられたこと、また、本契約の履行が他の合意と対立しないことを表明し、保証する)

WHEREAS, as a condition precedent to the obligations of Buyer to consummate the transactions contemplated by the Asset Purchase Agreement, Member shall execute and deliver to Buyer at the Closing this Agreement;一方、本資産購入契約が目的とする取引を完了するため、購入者の義務に先行する条件として、メンバーは、本契約の締結時に購入者に対し実行し、引き渡す。

The parties hereto agree to execute such further instruments and to take such further action as may reasonably be necessary to carry out the intent of this Agreement.(両当事者は、当該約定を更に実行する(履行)こと、および本契約の意図(目的)を実行(履行)するために適切な必要性に応じ、当該措置を更に行うことに同意する)

なを、冒頭に述べた「discharge」内容がやや複雑になるので機会をあらためて取り上げたいと思います。

参考図書:

研究社新英和辞典(研究社)
ランダムハウス英和大辞典(小学館)

契約書翻訳

英文契約書の用語・単語 performanceについて(その2)

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契約書翻訳の視点から見た、前回の「英文契約書の用語・単語 performanceについて」の続きです。今回は、契約書ではありませんが法律文の英訳に見る「performance」です。いずれも日本語の法律を英訳したものですが、内閣府の法令翻訳データベースに、「performance」についての幾つかの興味深い例がありました。日本の法律文の英訳に見る「performance」の用法についての視点からになります。この中で「performance」については、日常的に使用される「性能」や「公演」という意味の他に法律の内容や文脈上から「受領」、「履行」、「弁済」、「給付」等の意味で使用されています。いくつかの例を見てみます。(日本語の法律の英訳という視点からみたもので、契約書翻訳の際の何らかの参考になるかはわかりませんが)

  1. performance: 性能・実演

A person who intends to undergo a performance evaluation conducted by the Minister of Internal Affairs and Communications pursuant to the provisions of paragraph (1) must pay the amount of fees which is specified by Cabinet Order in consideration of the actual costs to the State.(第一項の規定により総務大臣の行う性能評価を受けようとする者は、実費を勘案して政令で定める額の手数料を国に納付しなければならない。)(消防法)

A performer has the exclusive right to make that performer’s performance available for transmission. (実演家は、その実演を送信可能化する権利を専有する。)(著作権法)

  1. performance: 弁済

When a prima facie showing was made that the petitioner is unable to obtain full performance of the secured claim set forth in the preceding item even by implementing exercise of a security interest against known property.(知れている財産に対する担保権の実行を実施しても、申立人が前号の被担保債権の完全な弁済を得られないことの疎明があつたとき。)(民事執行法)

An obligee that has received full performance by way of subrogation must deliver to the subrogee the instruments regarding the claim and any collateral that the obligee possesses.(代位弁済によって全部の弁済を受けた債権者は、債権に関する証書及び自己の占有する担保物を代位者に交付しなければならない。)(民法)

「弁済」については、以前は、「reimbursement」が一部使われていたような記憶があります。

  1. performance: 受領、履行、弁済

この例では、「performance」を英文の上から「受領」、「履行」、「弁済」としています。

provided, however, that if the obligee refuses to accept that performance in advance or if any act is required on the part of the obligee with respect to the performance of the obligation, it is sufficient for the obligor to request the acceptance thereof by giving a notice that the tender of the performance has been prepared.(ただし、債権者があらかじめその受領を拒み、又は債務の履行について債権者の行為を要するときは、弁済の準備をしたことを通知してその受領の催告をすれば足りる。)(民法)

ここでは「弁済」が「payment」、「履行地」が「the place of the performance

If the amount of the claim is designated in the currency of a foreign state, the obligor may make the payment in Japanese currency converted with the foreign exchange rate at the place of the performance.(外国の通貨で債権額を指定したときは、債務者は、履行地における為替相場により、日本の通貨で弁済をすることができる。)(民法)

そのほか、「performance」が給付の意味で使われています。

Education assistance shall be provided by way of performance in money;(教育扶助は、金銭給付によつて行うものとする。)

Medical assistance shall be provided by way of performance in kind; (医療扶助は、現物給付によつて行うものとする)

「給付」に対応する英単語は、和英辞典を見ると名詞はpayment、conferment、provision、a benefit(社会保険等の給付)等、動詞はpay、confer、provide等とあります。「performance」は、見受けられません。

そこで、国語辞典で「給付」の意味を調べると「金品を支給・交付すること」、「債務者の債務の内容、および、それを履行する行為」とあります。さらに法律用語辞典を見ると、「一般的には、債権の目的となる債務者の行為」とあり、その内容は、「金銭等の交付、役務の提供」、その性質に応じて、「作為、不作為、可分、不可分、反対、保険の給付」等とあります。

さらに英英辞典を見ると「performance」は以下のように解説されています。

「the action or process or carrying out or accomplishing action, task or function.」

(Source: The New Oxford Dictionary of English (Oxford University Press))

accomplishment or achievement act or carrying out, completion, conduct, consummation, discharge, execution, exploit, feat, fulfillment work.

action conduct, efficiency, functioning, operation, practice, running, working

(Source: COLLINS CONCISE Dictionary (HapperCollins Publishers))

法律英単語を見ると、「契約に従った義務の完全な遂行」とありました。

これらから考えて、あくまでも私見ですが、「金銭等の交付、役務の提供」という意味合いからそれぞれperformance in money(金銭給付)およびperformance in kind現物給付としたのではないでしょうか。

余談ですが、条文は、「給付」を「payment or delivery(金銭等の交付、役務の提供)」として表し、「performance」を弁済の意味で使用している例を見つけました。

 If the obligor is to effect performance in exchange for payment or delivery by the obligee, the obligee may not receive deposited thing without making that payment or delivery.

(債務者が債権者の給付に対して弁済をすべき場合には、債権者は、その給付をしなければ、供託物を受け取ることができない。)(民法)

今回は、法令翻訳データベースの例を引用しましたが、英単語は1つの単語に様々な「意味を備えています。「performance」に限らず、英単語を翻訳する場合、英文の内容、文脈から、常に慎重に訳出する必要があります。各引用については、著作権法第13条1号から4号の規定によるものです。

参考図書他:

法律用語辞典(有斐閣)

デジタル大辞泉(小学館)

研究社新英和辞典(研究社)

ランダムハウス英和大辞典(小学館)

カレッジライトハウス和英辞典(研究社)

法律英単語ハンドブック(自由国民社)

The New Oxford Dictionary of English (Oxford University Press)

COLLINS CONCISE Dictionary (HapperCollins Publishers)

法令翻訳データベース著作権法第13条(権利の目的とならない著作物

契約書翻訳

英文契約書の用語・単語 performanceについて(その1)

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契約書翻訳の視点から、今回は、英単語「performance」について見てみます。

英語でも「performance」自体は、日常的に良く使われる言葉です。英単語の例にもれず、主なものをだけでも以下のような意味があります。

(1) 行うこと、遂行、履行 (2) 催し物、余興、興行物、ショー (3) 執行、上演、講演、演奏、芸 (4) 達成、成就、実績、(5) 行動、行為、手順、(6) 行為、偉業、功績、(7) 遂行能力、性能、効率。「パフォーマンス」として日本語として定着しているものもあります(例えば、コストパフォーマンス、パフォーマンス(公演、実演等の意味))。

上記の例からもわかるように、「performance」や「perform」が表す意味は、それらが使われている会話や文章の内容と文脈から判断する必要があります。まずは、日常的に使われている「performance」と「perform」の例をいくつか挙げてみます。

1.  日常的に使われている「performance」と「perform」の例

Through our performance in our business, we would like to contribute to society. (業績)

Our company performs market researches.(行う)

Performance improvement is expected in order to accomplish our objectives.(性能)

We wonder how to improve the performance of this device. (性能)

Performance improvement is expected for our device. (性能)

We strive to develop high-performance xxx products to contribute to society.(性能・機能)

To contribute to society, we develop high-performance xxx products. (性能・機能)

We try to make our xxx products more high-performance.(性能・機能)

2. 契約書や法律文書で使われる例のいくつか

法律関係の英単語辞典で「performance」を見るとまず「履行」(perform:履行する)という意味が目に入ってきます。もちろんこれ以外のさまざまな意味にも使われますが(これについては後述します)、契約書では、一般に代表的な使われ方です。まずは、契約書においてperformanceが「履行」の意味で使われる場合を見てゆきます。その前に「履行」の意味を法律用語辞典で確認すると、「履行」とは、「一般用語では広く義務を遂行すること。法令では、一般用語の意味で使われるほか、債務者等が債務の内容を実現すること」とあります。

a) performanceが「履行」の意味で使われる場合の例

よく見られる例として、xxx of performanceは、performance(履行)の前にof、 inを付け、弁済期/履行期(time of performance)、履行地(place of performance)、履行遅滞(delay in performance)、履行不能(impossibility of performance)等があります。

The Contractor shall perform its services based on the terms and conditions of this Agreement. If the contractor fails to provide the services in the course of the performance of this Agreement, xxx(請負業者は、本契約の条件に基づいてサービスを履行するものとします。 請負業者が本契約の履行の過程においてサービスを提供できなかった場合、xxx)

なを、文脈的にperformance=実行・遂行と訳す場合もあります。

b) performanceが「履行」以外の意味で使われる場合の一例

A performer has the exclusive right to record the sound and visuals of that performer’s performance.(実演家は、その実演を録音し、又は録画する権利を専有する。)(著作権法)https://www.japaneselawtranslation.go.jp/en/kwic

c)「履行」を意味する「performance」以外の英単語

ところで、「履行」を意味する「performance」以外の英単語がありますが、今回は、「fulfillment」を見てみます。

履行=「fulfillment」動詞形は、「fulfill」

The Service Provider shall fulfill its obligations in accordance with the terms of this Agreement. (サービス提供者は、本契約の条件に従って義務を履行する。)この部分「shall perform」としても使えます。

If a fund contributor fails to fulfill their commitment to contribute, the subscription to funds ceases to have effect. (基金の引受人が拠出の履行をしないときは、基金の引受けは、その効力を失う。)(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律)https://www.japaneselawtranslation.go.jp/en/kwic

The Seller shall reserve sufficient production capacity and maintain sufficient inventories to promptly fulfill orders.(売主は、注文を迅速に履行するために十分な生産能力を確保し、十分な在庫を維持する)

なを、当然ですが文章の内容と文脈から「fulfill」=「履行する」とはしないこともありあます。

思いつきですが、2つほど例文を作ってみました。

The Supplier shall maintain at its own expense a sufficient amount of spare parts adequately to fulfill the needs of its customers.(サプライヤーは、顧客のニーズを満たすのに十分な量の予備部品を自費で維持する)

以下の例では「perform」と「fulfill」入れ替え可能ですが、見た感じ、収まりが良いので、この形にしてみました。

The Contractor shall perform the services set forth in this Agreement and fulfill all other obligations specified herein.

fulfill」は「performance」と同様に「実行・遂行」とされる場合もあります。

Procedures for the Fulfillment of Rights.(権利の実行の手続き)

Recommendation to Fulfill Obligations(義務履行の勧告)

いずれも「(独立行政法人国民生活センター法)」から引用

そのほか、implementation、carry out、execute, discharge等も文章の内容と文脈から「履行」、「実行」、「遂行」と訳される場合があります。これらについては、別の機会に見てみたいと思います。また、今回は、「performance」について「履行」とい意味にしぼってみていましたが、当然のことですが実際には、英文契約書や法律文書では、「履行」以外の意味で使われる場合もあります。この点については、別の機会に述べます。

参考図書他:

法律用語辞典(有斐閣)

デジタル大辞泉(小学館)

研究社新英和辞典(研究社)

ランダムハウス英和大辞典(小学館)

カレッジライトハウス和英辞典(研究社)

法律英単語ハンドブック(自由国民社)

The New Oxford Dictionary of English (Oxford University Press)

COLLINS CONCISE Dictionary (HapperCollins Publishers)

法令翻訳データベース

契約書翻訳

英文契約書の条項:準拠法条項と紛争解決条項について

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契約書翻訳の視点から今回は、英文契約書の準拠法条項(Governing Law)と紛争解決条項(Settlement of Dispute)についてからみてみます。

  1. 準拠法

「準拠法」の意味を法律用語辞典で見ると、「渉外的法律関係に適用される法として国際私法により適用される法」とあります。ついでに「国際私法」を見てみると「渉外的法律関係に適用される法を指定する法。複数の国の法律のうち準拠法を選び出し、法律の抵触を解決するもの」とあります。準拠法条項は、どこの国の法律を契約書の解釈のもととするかを規定します。国際取引に関する契約書では、その分野を問わず必須の条項です。

以下に、日本の法律を準拠法とする例文を作成しました。

This Agreement shall be governed by and construed in accordance with the laws of Japan.

(本契約は、日本法に準拠し、同法により解釈される)

外国の法律を準拠法とする場合、例えば、米国のカリフォルニア州の場合「the laws of Japan」、の部分が「the laws of California, the United State of America」等となります。また、時として、「without reference to conflict laws of principles」などと抵触法の原則にかかわる一文を追加することも良くみられます。

  1. 紛争解決条項

一般に紛争解決条項は、仲裁条項(Arbitration)と合意裁判管轄条項(Jurisdiction)があり、契約では、一般にそのいずれかが規定されます(この2つが規定される場合もあります)。

a. 仲裁条項

仲裁の意味は、「一般に当事者の合意に基づき第三者の判断により当事者間の紛争を解決すること」です。仲裁は、裁判所ではなく仲裁に紛争を付託することを当事者が選択する場合です。仲裁については、以前からの仲裁契約の準拠法の問題やそれ以外の事柄につき様々の議論がありますが、ここでは単に知っておくと便利は「仲裁条項」の文例に留めます。

仲裁条項には、様々なものがあります。仲裁機関も様々で、例えば、国際商工会議所(The International Chamber of Commerce: I.C.C)、国連国際商取引法委員会、その他の仲裁機関によるもの、被告地主義を採用するもの等もあります。以下に作成した例文は、簡単なものですが、日本商事仲裁協会(Japan Commercial Arbitration Association)の仲裁規則により仲裁を行う場合の一例です。

If the Parties are unable to resolve their dispute through bona fide negotiations, all disputes, controversies or claims arising out of this Agreement shall be finally settled by arbitration in accordance with the commercial arbitration rules of the Japan Commercial Arbitration Association in Tokyo under laws of Japan. (両当事者が、誠実な交渉による係争の解決をなし得ない場合、本契約から生ずるすべての係争、論争もしくは申し立ては、日本商事仲裁協会の商事仲裁規則に従い、日本法の下で、東京において仲裁により最終的に解決されるものとする。)

そのほか、原文が日本語の契約書を英訳する場合、単に「紛争を話し合いで解決する」との内容の記載が以下に作成した例文のような形式で規定されていることが、ごくまれにですが見ることがあります。

The Parties shall use their best efforts, in good faith, to amicably settle any dispute arising out of or in connection with the interpretation, execution and performance of this Agreement.

やはり紛争解決の合意規定としては、仲裁機関と適用規則を記載するのが良いのでは考えます。

b. 合意裁判管轄条項

一般には、契約上の紛争に際して、仲裁よりも裁判のほうが適切とされる場合に使われるようです。この条項にも様々なものがありますが、ここでは以下に作成したものを例文としてみました。

This Agreement shall be governed by the laws of Japan and any dispute in relation to this Agreement shall be brought in the Tokyo District Court as the exclusive competent court for the first trial.(本契約は日本法に準拠し、本契約に関する紛争の第一審の専属管轄裁判所は、東京地方裁判所とする。)

各例文は、いわば定型文(すべてがこの形式のそのままではありませんが)に近いものです。覚えておいて損はないと思います。

英文契約書の解釈や海外の取引先との取引内容について疑問がある場合、やはり専門家のアドバイスを受けるのが正解でしょう。特に海外の法律が絡む問題は、専門家でなければわからないと思います。法律事務所等は敷居が高い感じがしますが、たいていの場合、親切に相談を受けてくれます。もちろん料金はそれなりですが、経験的には料金に見合った回答やアドバイスを受けられます。それでもという方にはJETROなどに質問してみるのも良いかと思います。また、以前租税条約がからむ案件の引き受けの有無を検討したときは、JETROと弊社に税務をお願いしている税理士さんに相談したところ、いずれからも適切な回答をいただいた記憶あります。

参考図書:

研究社新英和辞典(研究社)

ランダムハウス英和大辞典(小学館)

カレッジライトハウス和英辞典(研究社)

法律英単語ハンドブック(自由国民社)

契約書翻訳

英文契約書の条項 一般条項:「Entire Agreement」(最終性条項)」とNotice(通知条項)」

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以前投稿した「英文契約書の一般条項」(その1からその3)に加筆・修正した内容を2回に分けて投稿しています。2回目は、「Entire Agreement」(最終性条項)」とNotice(通知条項)」についてです。契約書翻訳の視点から見てみました。

1. 「Entire Agreement」(最終性条項)

英文契約書における書面重視の考え方を体現した条項です。英文契約書を、ある事柄について契約を行う場合、その契約書作成に至るまでの文書、口頭における当事者間の了解事項は、すべて契約書に集約され、当事者間の最終的な合意を記載した唯一ものとして位置づけます。「最終性条項または完全なる合意」とも称されます。

書き方は、さまざまですが、いずれも内容的には上記の趣旨を体現したものです。以下に例文をつくってみました。

「Entire Agreement」(最終性条項)の一例

「This Agreement constitutes the entire agreement, and supersedes, whether orally or in writing, all prior agreements and understandings of the parties hereto with respect to the subject matter hereof, and cannot be amended or otherwise modified except in writing executed by the parties hereto. (本契約は、最終的合意を構成し、口頭・書面によるものを問わず、本契約の主題に係わる本契約の両当事者間のすべての以前の合意と了解に優先し、また、本契約の両当事者が署名・捺印した書面による場合を除き、修正、または他の方法により変更することはできない。)この中で、「and supersedes, whether orally or in writing, all prior agreements and understandings of the parties hereto with respect to the subject matter hereof,」の部分が、口頭排除の原則(Parol evidence rule)を確認する文言です。書き方はさまざまです。

とことろで、上記の例文の中で、「本契約の両当事者が署名・捺印した書面による場合を除き、修正、または他の方法により変更することはできない。」とありますが、これは、契約の内容は、例えば当事者間の了解により変更されることがあるということです。この変更の内容は契約に記載の担当者や当事者の事業所の変更から契約の解除、不可抗力事由が発生したことによる変更などさまざまな事柄があります。これらに共通することは、これらの出来事が発生した場合、相手方にその出来事についての通知を行う必要があることです。これを規定するのが、「Notice(通知)」条項です。

2 「Notice(通知条項)」

各契約では、通常、特に、「Notice(通知条項)」が設けられていない場合でも、通知を行うことを求められる事柄が規定されています。「Notice(通知条項)」には、以下に記載するようにさまざまな内容が盛り込まれていますが、基本的な部分についての例文を作ってみました。

「All notice and other communications in connection with this agreement must be in writing.」(本契約に関連するすべての通知およびその他の伝達は、書面によるものでなければならない。)

通知が求められる内容は、上記の他に、契約ごとに定められた事柄があり、また、通知の相手方への*送達時期(通知発送後、xx日(暦日(calendar day)または営業日(business day))または時期を指定せず、可能な限り速やかに等)や通知を行う方法(郵便、その他の文書、メール、ファックス、手交等)、通知先(住所、部署、担当者等)、その他が定められています。(*送達時期の指定がない場合もあります。この場合、一般には、準拠法によります。)

特に、通知がメール、ファックス等で行われた場合、「通知を受け取った、受け取っていない」から生じる紛争を回避する目的で、例えば「provided that a confirming copy of such facsimile or e-mail shall be sent by air mail」(当該ファックスまたはE-メールの確認用のコピーが航空郵便で送付されることを条件とする。)等の一文を設けることもあります。

その他、「Notice shall be deemed to have been received if …….」(…….の場合、通知は受領されたと見なされる。)のように、通知を行った時点で、相手方に送達したとみなすように規定する場合も見受けられます。

英文契約書では、書面重視の考え方、習慣等から、一般に、その内容は考え得るすべての事項を可能な限り取り決める傾向があります。これらは、上記の口頭排除の原則(Parol evidence rule)、最終性条項(1)または完全なる合意といわれる(Entire Agreement)に代表される概念です。

おおざっぱに言えば、当事者間の文書、口頭における当事者間の了解事項についての最終的な合意を記載した文書が、契約書となります。

これは、当事者間で文書により合意した事柄以外は、契約内容として認めないという姿勢を確認するため、英文契約書の条項「一般条項」の中にも、あえて口頭排除の原則や、最終性条項を補完する意味で、いわゆる「修正条項」なるものを設定することが一般的に行われています。

その目的は、契約締結後における、文書によりなされる以外の当事者間の口頭による契約内容のあらゆる修正を排除するところにあります。

記載方法は、いろいろありますが、基本的に、「契約のいかなる変更も、両当事者が署名した書面にもの以外は、無効である(有効ではない)」旨の一文が記載されます。

例えば、「No amendment or modification of this Agreement shall be effective unless in writing and signed by both parties.」(本契約のいかなる修正もしくは変更も、両当事者が署名した文書による以外無効である)のような例文を作ることができます。最低この内容で問題ないと思われますが、実際には、上記のような文章にいろいろな要素が(多くは、多分起草者の考えにより)加えられます。例えば、上記にいくつかの他の具体例を加えたいとか、詳細に規定したい場合、「No amendment or modification of this Agreement and “no waiver of any provision hereof” shall be effective unless in writing and signed by both parties.」この例では、「権利放棄」を加えてみました。また、「両当事者が署名した書面」について、署名人を指定したい場合は、「No amendment or modification of this Agreement shall be effective unless in writing and signed by“ authorized representatives of” both parties.」のように「authorized representatives of」(授権された代表者)を入れると、それ以外に者が署名しても、その変更は、無効となります。

いずれにしても、契約内容を変更したら、内容を問わず書面を作成し、当事者間で確認することです。

例文-最終性条項(1)

「This Agreement constitutes the entire agreement, and supersedes, whether orally or in writing, all prior agreements and understandings of the parties hereto with respect to the subject matter hereof, and cannot be amended or otherwise modified except in writing executed by the parties hereto.          (本契約は、最終的合意を構成し、口頭・書面によるものを問わず、本契約の主題に係わる本契約の両当事者間のすべての以前の合意と了解に優先し、また、本契約の両当事者が署名・捺印した書面による場合を除き、修正、または他の方法により変更することはできない。)

以上、「Entire Agreement」(最終性条項)、Notice(通知条項)」について、知っていると便利という点に絞って簡単に見てました。

参考図書:

カレッジライトハウス和英辞典(研究社)

研究社新英和辞典(研究社)

ランダムハウス英和大辞典(小学館)

法律英単語ハンドブック(自由国民社)

契約書翻訳

英文契約書の用語・単語 「and otherwise」と「or otherwise」について

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英文契約書では、単語「otherwise」をよく目にします。英文契約書で「otherwise」を使用した構文としてよく知られているのは、例えば、「unless otherwise provided in this Agreement」、「unless otherwise provided herein」とか、「unless otherwise agreed by」等です。この他にも「and otherwise」、「or otherwise」が使用された文章を目にすることがあります(一般の文章でも「and otherwise」、「or otherwise」は使用されます)。今回は「and otherwise」、「or otherwise」について契約書翻訳の視点から簡単に見てみます。

1. or otherwiseの場合

通常、「or otherwise」の意味は、「…かあるいはその逆で」、「もしくはそうでないか」、「…かあるいはその他の方法で」となります。よくあるのは、いくつかのやり方や方法を列挙した後に、「…………or otherwise」(又はその他の方法で、その他何であろうと)を意味する記述に使用されます。

さらに、否定文と一緒に使われて、「その他何であろうと(~でない)」というように、否定の強調に使われます。英文契約書では、「or otherwise」は、通常、「またはその他の方法で」、「その他何であろうと」という意味で使われます。

いずれにしても、orとつながり、「または」、「もしくは」という形態をとっていますが、言外の言いでは、「この場合でも」、または「あの場合でも」となり、これは、以前に言及した英文契約書における網羅性の範疇に入ると思われます。

使い方の例としては、

legal or otherwise:合法・非合法にかかわらず、合法であろうがそうでなかろうが

intentionally or otherwise:意図的にまたはその他の方法で

Tampering with official papers or otherwise impeding an official proceeding.:公文書を改ざんしたり、または、他の方法で公的な手続きを妨害したりする。

confirm the success or otherwise of …:~が成功するか、しないか(この場合は、失敗するか)を確認する

warranty or otherwise:保証がある、またはその他(保証がない)

at the time of disclosure is published or otherwise generally available to the Public,:開示の時点で、公開されているか、もしくは、それ以外の方法で公知となった、

英文契約書では、以下に作成した例文のように使われます。

XXX dislcaims any and all warranties and guarantees, express, implied or otherwise, with respect to the products or services delivered hereunder.

(XXは、本契約に基づき提供される本製品とサービスに関して、明示、黙示もしくはその他を問わず、あらゆる保証を否認する=あらゆる保証を行わない。)

XXX will have no obligation or liability, whether arising in contract, tort or otherwise for any special, incidental, consequential or indirect damages.

(XXは、特別な、偶発的な、結果的に生じた、もしくは間接的な損害に対して、契約、不法行為、もしくはその他に起因するにかかわらず、いかなる義務もしくは責任を負わない。)

2and otherwiseの場合

「and otherwise」も同様に、「今言及されているものではない」、または「その反対である何か」に対する言及です。

and otherwiseの本来の意味は、「~とそうでない(もの)」、「~や何か」となります。

例えば、「Aである、またはその反対のBである」というようになります。

something funny and otherwise:面白いことや面白そうにないこと

上記の例では、「面白いこととその反対の面白くないこと」を表しています。

その他の例では、「ただ単に、…およびその他の方法で…」を表します。

Based on applicable copyright laws, be sure to reproduce and otherwise use copyrighted works.:

(必ず、適用される著作権法に従い著作権で保護された作品を複製し、その他の方法で使用します。)

increase productivity and otherwise rationalize production:生産性を高め、その他の方法で生産を合理化する。

In advertising and marketing the Products and otherwise performing under this Agreement,:              本製品の広告およびマーケッティングおよびその他本契約にもとづく履行に関して、

XXX system for creating, terminating, and otherwise controlling processes.:生産、終了およびその他のプロセスをコントロールするためのXXXシステム。

経験的には、英文契約書では、「or otherwise」が多く使用されるケースが見受けられ、「and otherwise」は、経験的にあまり見かけることがありません。

例文に訳文が付いている場合、それらの訳文は暫定訳です。
本ブログの内容を参考にされる場合は、辞書・専門書をご確認の上、ご自身の責任でお願いします。

参考図書:
研究社新英和辞典(研究社)
ランダムハウス英和大辞典(小学館)
カレッジライトハウス和英辞典(研究社)

契約書翻訳

英文契約書の条項 一般条項:「Definition(定義)」と「Term(期間)」

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前回と前々回は、「英文契約書の一般条項」(その4)と(その5)を掲載しました。

本来、これらは2015年 7月に投稿した「英文契約書の一般条項」(その1からその3)の続きですが(書いたままで、出し忘れ)、(その1からその3)の投稿時期との間に相当期間が経過しました。そこで改めて、「英文契約書の一般条項」(その1からその3)に加筆・修正した内容を2回に分けて投稿させていただきます。1回目は、「Definition(定義)」と「Term(期間)」についての条項です。

英文契約書の一般条項についての内容ですが、改めて、一般条項がどのようなものかについて確認してみます。契約にはさまざまな種類があります。当然、その内容は、契約の種類によりそれぞれ異なり、例えば、売買契約、代理店契約・販売店契約、知的財産権に関する契約、ライセンス契約等、それぞれの契約ごとに、その主たる条項やその契約ごとの特別な条項が存在します。契約の種類にかかわらず、各契約において、*一般的に規定される契約条項が存在します。それらの中でも代表的ないくつかを契約書翻訳の観点から簡単にみてみます。

*「General Provisions」とか「General Terms」として、いわゆる「一般条項」、「一般規定」、「総則」と称されるもので、時として、「Chapter I – General Terms(第1章- 総則」のような形式で、大部分の条項が1つの章にまとめられることもあります。

政府機関、団体、または企業により、記載方法が厳密に定められている場合や、各契約条項が、多数の顧客や取引先と同一内容の契約を締結するために定型化された、普通契約約款と同じような形式を採用している場合も見られます。

1.「Definition(定義条項)」

契約書に記載の文言を定義します。書き方は、様々です。例えば、「”Products” means the Products listed in Appendix A.」(「製品」とは、付属書1に記載の製品を意味する。)、「“Confidential Information” shall be defined as any and all the proprietary, non-public information of either Party, including without limitation …(「機密情報」とは、いずれの当事者のすべての所有権を主張できる、非公開情報として定義され、)」とか、「”Property ” shall have the meaning as set forth in Article xxx」(「財産」とは、第xxx条に記載(規定)する意味を有する)等のようにさまざまに記載されます。「……… means xxx」といきなり、定義を開始する場合もありますが、

例えば、「The following words and expression shall have the following meanings unless the context otherwise requires:」(文脈上他の意味に解すべき場合を除き、下記の文言および表現は、以下の意味を有する。)として、その後で、

「A means xxx」、「「B means xxx」、「C means xxx」と順次定義してゆく場合もあります。

その他、特に定義条項を設けず、各条項の中で随時定義を行うものや、定義条項を設け、さらに各条項の中で随時定義を行うもの等さまざまです。「The Licensee shall use the Trademarks in the Territory (hereinafter referred to as the “Trademarks License”(ライセンシーは、本区域内においては、本商標(以下、「商標ライセンス」と称する)を使用する)」

2. 「Term(期間)

契約の期間を定義します。記載方法は、さまざまですが、内容的には、おおざっぱに分けて(1)一定の期間が定まっているもの、(2)自動的に更新されるもの、(3)当事者間の協議によるものがあります。期間に関する条項は、事業の成否に大きくかかわる要素を内包しています。

(1)一定の期間が定まっているもの

「The effective period of this Agreement shall be from April 01, 20xx to March 30, 20xx.」(本契約の有効期間は、20 xx年4月1日から20 xx年3月31日までとする。)

「This agreement shall be effective from the 1st of January, 20xx and remain in full force for the period of xx years from that date, 」(本契約は20xx年1月1日から発効し、その日からxx 年間有効に存続する)なを、これらの場合(期間が定まっている場合)でも、例えば、「unless sooner terminated pursuant to the terms hereof (本契約の条項に従い中途で解除される場合を除き)」「unless sooner terminated as herein provided(本契約に規定の中途解除を除く)」等、中途で契約を解除できる一文を追加するのが一般的です。

(2)自動的に更新されるもの

これも記載方法は、さまざまですが、例えば、上記の例を使い、「The effective period of this Agreement shall be from April 01, 20xx to March 30, 20xx, unless sooner terminated pursuant to the terms hereof and thereafter shall automatically extend for one (1) year, …」(…その後、1年間ごとに自動的に延長される、…) この場合でも、例えば、「unless either party provides written notice to the other party of its intent to terminate this Agreement at least xx days prior to the expiration of the Extension」(ただし、いずれかの当事者が、延長期間が満了する少なくともxx日前に本契約を解除する旨の意思を相手方に書面による通知で行う場合を除くものとする。)のような一文が入るのが一般的です。

(3)当事者間の協議によるもの

「当事者間の協議によるもの」に多様な様態がありますが、一例として、上記「(1)一定の期間が定まっているもの」で作成した例文を使い、「This agreement shall be effective from January 01, 20xx and remain in full force for the period of xx years from that date, unless sooner terminated pursuant to the terms hereof and thereafter may be renewed for an additional xx years subject to mutual agreement in writing between the parties hereto.」(…………………  その後、本契約の当事者間の合意に従い、さらにxx年間更新することができる。)

参考図書:

カレッジライトハウス和英辞典(研究社)

研究社新英和辞典(研究社)

ランダムハウス英和大辞典(小学館)

法律英単語ハンドブック(自由国民社)

 

契約書翻訳

英文契約書の一般条項(その5)不可抗力条項

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契約書翻訳の視点から見た英文契約書の一般条項、いわゆる「General Terms」についての前回の続きです。今回は、「不可抗力条項」についてです。Force Majeure(不可抗力)については、これまでも何回かとりあげてきました。「不可抗力条項」は、一般条項の一部として記載される場合もあれば、不可抗力について独立した条項として記載される場合もあります。

今回は、これまでのまとめの意味も含めて作成した例文を通して見てみます。

不可抗力について簡単にまとめてみます。

1. 不可抗力(Force Majeure)とは

外部から発生した事故で、取引上・社会通念上で普通に求められる注意・予防措置を講じても防止しえないもの。

その事故に対する予期の有無にかかわらず、自然力・人為的なものかを問わない。

不可抗力があると、債務不履行・不法行為責任を免れると解される。

義務の免除、軽減を受ける場合もある。

具体的には、当事者に責任のない(当事者の管理に帰せられない、当事者の支配の範囲を超えた)理由-戦争、暴動、ストライキ等に代表される「人的災害」と政府機関の命令等、および地震、台風、洪水、水害、竜巻、疫病等の「自然災害」など、当事者に責任のない(当事者の管理に帰せられない、当事者の支配の範囲を超えた)事象により、契約の履行ができなくなった場合です。広範囲で不可抗力の内容を列挙するのが慣例ですが、「不可抗力」とは認められない範囲を別途規定する場合もあります。

Force Majeure means any event caused by occurrences beyond a party’s reasonable control, including, but not limited to, acts of God, fire or flood, earthquake, war, terrorism, labor dispute, pandemic, system malfunction, governmental regulations, policies or actions enacted or taken subsequent to execution of this Agreement, or any labor, telecommunications or other utility shortage, outage or curtailment. (不可抗力とは、天災、火災もしくは洪水、地震、戦争、テロ、労働争議、流行病、システムの機能不全、本契約の締結後に制定された、もしくは講じられた政府の規制、方針もしくは法的措置、または労働、通信、もしくは他のガス電気水道等の公共事業の供給不足、供給停止もしくは供給の削減を含み、これらに限定されない、当事者の合理的な管理能力を超えて発生した事象を意味する。)

この例では、不可抗力事由を列挙しながら、「including, but not limited to,」の構文を列挙した事由の前に置いて、列挙した事由に限定されないことを明示的に示しています。

上記のように具体例を列挙しますが、その契約において不可抗力により生じた「不履行」、「履行遅延」、および「不可抗力の期間」等についての対応は、個別の契約により異なります。また個々の契約においては、上記の「不可抗力」事由の他に、その契約固有の「不可抗力」事由、例えば、工場が被った災害(爆発、火災等)、交通途絶、港湾封鎖、政治的・社会的混乱、国家の分離・独立、これらが金融機関の及ぼす影響等、その他諸々の事由をその契約に応じて記載します。また、不可抗力の発生に関する第三者機関の証明の提出義務などが追加されることがあります。

2.  不可抗力(Force Majeure)の期間と契約解除

「不可抗力の期間」が不可抗力条項にあらかじめ規定して期間を超えて継続した場合の「契約解除」を行う場合は、その旨の規定を設けることが必要とされます。(不可抗力に起因する契約解除に関する規定を設けていない英文契約書も多くあります。)

If the Force Majeure condition continues for 90 days or more, either party may terminate this agreement upon written notice to the other party. (不可抗力の状態が90日以上継続する場合、いずれの当事者も相手方に対する書面の通知により、本契約を解除することができる。)

3.  不可抗力(Force Majeure)における免責

一般には、「不可抗力」の事態が発生しても、支払に関する債務は、免責されないことになっているようですが、実際に「不可抗力」の事態が発生した場合は、(場合により債務の履行が一定期間猶予されても)支払がなされないこともあり、また、国ごとの債権に関する法律の違いなどから、当然、債務の不履行、履行遅延に関する紛争が生じることも多いとされます。また、支払に関する債務の免責以外にも、「不可抗力」の事態が発生した際の契約の履行義務に関する責任の範囲、その他を詳細に規定する場合もあります。(このあたりについては、専門書をご覧ください。)

Neither Party hereto shall be liable to the other party for failure to perform its obligations hereunder due to Force Majeure.(本契約のいずれの当事者も、不可抗力により、本契約に基づくその義務の不履行に対して、相手方に責任を負わせることはないものとする。)

Neither party is responsible for failure to fulfill any non-monetary obligations due to events beyond his or her reasonable control(いずれの当事者も、その合理的管理の範囲を超えた事由に起因する非金銭的債務不履行に対する責任を負わない。)

Any force majeure delay or non-performance as defined herein shall be considered an excusable delay or non-performance, and neither Party shall be entitled to any additional compensation as a result thereof.(本契約に記載の不可効力による遅延もしくは不履行は、正当な(許される)遅延もしくは不履行とみなされ、いずれの当事者も、その結果としての追加的な補償の権利を与えられることはない)

「delay」は、債務の履行が遅れる=債務不履行=お金の支払にかかわるという意味で、契約において大きなインパクトを持つ用語です。

英文契約書に不可抗力条項がない場合は、当事者間の話し合による解決のほか、ウィーン売買条約(日本では2009年8月発効)の適用が可能性としてあります(同条約の「損害賠償」、「免責」および「解除の効果」等-同条約の規定では、契約の不履行が不可抗力によることが証明できれば免責を受けられます。)。ただし、相手方の国が同条約に未加入であったり、契約に同条約を適用していない場合や、別途準拠法を定めている場合は、同条約は適用されません。

また、ある事象が当事者の管理(または支配)を範囲を超えた事由による場合でも、それらを不可抗力とはみなさない旨をあらかじめ定義する場合もあります。

Neither economic downturn nor significant decline in demand for the Products manufactured by Party A shall be Force Majeure. (いかなる経済の悪化および当事者Aの製品の需要の深刻な低下も不可抗力としない。)

Raw material or labor shortages shall not be considered as force majeure events. (原材料または労働力不足は、不可抗力事由としない。)

ちなみに、日本の民法では、損害賠償について「債務者は不可抗力をもって抗弁することができない。」(第419条第3項)と定められています。

(3) The obligor may not raise the defense of force majeure with respect to the compensation for loss or damage referred to in paragraph (1).(3 第一項の損害賠償については、債務者は、不可抗力をもって抗弁とすることができない。)

Article 274 A farming right holder may not demand release from or reduction in the rent even if there is a loss of profits due to force majeure. (第二百七十四条 永小作人は、不可抗力により収益について損失を受けたときであっても、小作料の免除又は減額を請求することができない。)(民法)(

このブログの目的は、1つの単語に様々に意味を持つ傾向がある英単語が契約書・法律文書で使われる場合、その単語の意味と使われ方を手っ取り早く理解し、英文契約書を読んだり、書いたり、するための一助になればとの考えからです。そのため、不可抗力における免責等を含め、法律的な意味や解釈、その背景については、専門書を参照してください。

参考図書:

法律用語辞典(有斐閣)

デジタル大辞泉(小学館)

法律英単語(自由国民社)

ランダムハウス英和大辞典(小学館)

カレッジライトハウス和英辞典(研究社)

Japanese Law Translation他