英文契約書の単語・用語 「など、等」の表現について

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契約書翻訳の単語・用語について、今回は日本語の契約書や法律文で良くつかわれている「など、等」について、英文契約書との対比で考えてみました。

1. 日本語の「など、等」

日本語の「など、等」は、一義的には「一例を挙げ、あるいは、いくつか並べたものを総括して示し、それに限らず、ほかにも同種類のものがあるという意味を表す」言葉です。言い換えると、「一般に同種のものを並べた上でそのほかにも同種のものがあることを表す接尾語です。」

例:「この記入欄には、本人の氏名等が必要です」は、「この申請書には、本人の氏名、住所、登録印が必要です」の意味になります。

そのほか「など、等」は(引用句、または文を受けて)それが大体の内容であることを表す「……というようなことを」の意味を表すこともあります。(これら以外にも様々な意味があります)。

例:「xxx等の場合、xxxに連絡すること」

いずれの使い方も便利ですが、あいまいさが残ります。

2. 英語の場合の「など、等」

英語の場合でも似たような表現があります。例えば、「what have you」という表現は、これは、「あなたが持っているもの」という意味ではなく、使用される場所は文末です。以下に例文を作成しました。

(1)I borrowed American History, American Law, Introduction to Anglo-American Law and what have you from the library.(図書館でアメリカの歴史、アメリカ法、英米法入門などを借りました。)
(2)I’m very busy with work at home, my part-time job, and what have you.(家事やバイトやらで、すごく忙しい。)
(3)By the end of the month, we have to pay rent, electricity, gas, and what have you. (月末までに、家賃や電気代やガス代その他を払わなければならない。)
(4)At the sundries store, they sell detergents, daily necessities, household goods, and what have you. (小間物屋さんでは、洗剤、日用品、家庭用品などを売っている。)

いずれの例文の場合でも、文末のwhat have youは、「などなど、等々」という意味になります。

例文(1)を例にとると、借りた本をAmerican History, American Law, Introduction to Anglo-American Lawと個々に列挙して、他にもいくつか借りた本ある場合、ひとくくりにして「what have you」を使い、「など、等」を表現します。

すなわち、「任意のあるものを並べて、それ以外にも何かがある」ことを「what have you」を文末に置いて表現します。なを、訳語として暫定的に「など、等」としてあります。

3. 英語の「what have you」と日本語「など、等」の使い方

「what have you」を使う場合、上記のように、任意のあるものを複数並べ、文末に「what have you」置きます。
日本語の「など、等」の前に置かれる言葉は、英語の場合と異なり、1つの言葉でも成立します。もちろん、複数の場合もあります。

以上、英語で日本語の「など、」等」に近い表現である「what have you」についてみてみましたが、英文契約書では、「what have you」を使用した例は、今まで見たことがありません。理由の1つとしては、私見ですが、この言葉が口語体であることと、上記の日本語の「など、等」のように、あいまいさがあることが一因かと思われます。

4. 英文契約書の特徴-基本的に厳格で網羅的な内容

英文契約書の特徴の1つとして、厳格で網羅的な表現多く使われていること-すべての事柄について、あらゆる状況を想定し、例外の状況にも対応した文章とし、あいまいさを避けるために複数の同じ意味合いの言葉を使用し、さらに、一文にいろいろな条件・状況の設定を盛り込んでいる場合が多いことがあげられます。

これらは、英米法の口頭排除の原則(Parol Evidence Rule)、最終性条項または完全なる合意といわれる(Entire Agreement)における書面重視の考え方によるとされます。一般に、英文契約書において可能な限り、考えられるすべての事項につき文章化することを行います。そのため、表現が厳格で網羅的な内容になるため、1つの文、条文が長くなり、契約書全体も長いものになります。なを、契約書によっては、あえて抽象的な表現やあいまいさを残した表現に出会うこともあります。金銭にかかわる部分でよくみかけるようです。

5. 「など、等」に相当する英文契約書の表現の例
英文契約書では「など、等」に相当する表現として「including, but not limited to」、「including without limitation」があります。いずれも「~を含み、~に限定されない」という意味です。例えば、ある事柄に対して、相手方に対して責任を負わない、もしくは責任を負わせる、または当事者双方が責任を負わない場合等の規定について、適用する事例を列挙する場合に使われます。なを、相手方に対して責任を負わない-自己に対する免責を例にとれば、その条項に免責適用事例が「include」されるだけでは不十分で「but not limited to」を追加することで、適用事例を「include」しただけで、ある意味、制限的列挙を回避するといわれますが、「but not limited to」が入っていたとしても、実際には当該条項について紛争が生じることもあります。
Force Majeure means any event caused by occurrences beyond a party’s reasonable control, including, but not limited to, acts of God, fire or flood, earthquake, war, terrorism, labor dispute, pandemic, system malfunction, governmental regulations, policies or actions enacted or taken subsequent to execution of this Agreement, or any labor, telecommunications or other utility shortage, outage or curtailment.
上記の作成した例文は、「不可抗力条項で使用される例」です。この例では、不可抗力事由を列挙しながら、「including, but not limited to,」の構文を列挙した事由の前に置いて、列挙した事由に限定されないことを明示的に示しています。

6.  日本語の「など、等」に対応するその他の英語
その他、日本語の「など、等」に一義的(1つの意味として)に対応する英語は、他にも、and so forth、and so on、etc.、and othersなどがあります。ただし、これらについても使われるケースはまれです。例えば、「同種のものが複数ある場合を表すには、多くの場合、英単語の複数形を使います。」
ただし、日本語で作成された契約書を英文に翻訳する場合、「xxx等」となっていた場合、文脈的に「and so forth、and so on、etc.、and others」とすることがあり、または、「xxx等」の部分を「xxxs(複数形)」とすることもあります。

特に日本の法律文は、「等」が多用されています。参考までにほんの一部ですが法令の英訳例をみると以下のような体裁です。

事業の届出等(Notification of Business, etc.)(電気用品安全法

港湾運送事業等(The Port and Harbor Transportation Business, etc.)(港湾運送事業法

会社と誤認させる名称等の使用の禁止((No Use of Name, etc. which is Likely to be Mistaken for a Company)(会社法

中には、同種のものが複数ある場合を表すのに複数形を使用しているケースもありますが、上記のような体裁が大部分を占めるようです。

以上、日本語の契約書や法律文で使われる「など、等」について、英文契約書との違いの部分の概要について見てみました。

例文は契約書翻訳の観点から当方にて作成したものですが(法律文を除く)、例文を含め、ブログの内容を参考にされる場合は、辞書・専門書をご確認の上、ご自身の責任でお願いします。


参考図書:
The New Oxford Dictionary of English (Oxford University Press)

研究社新英和辞典(研究社)
Japanese Law Translation
デジタル大辞泉(小学館)他

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英文契約書の単語・用語 ラテン語の慣用句

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契約書翻訳に、特に日本語から英語への翻訳にも一部関連しますが、ビジネスライティングの分野では、相当以前から、一般に「Effective Writing」が推奨されています。1つの側面として「Effective Writing」を通して個人の「Writing Skill」、すなわち「文書作成能力」をさせ、優れた文書により自己の能力を向上させ、企業の業績の向上に資するという効果があるとされています。

一例をあげるとビジネス文でも1980年代以前は、「ご依頼により」という表現は、英文契約書では定番の用語「in accordance with your request」、「in compliance with your request」等が使われていたことがあるそうです。

例えば、こんな感じです。「We will send 100 the Products in accordance with your request.」

現在でも様々な言い方があるでしょうが、この例に関してすぐ頭に浮かぶのは「We will send 100 the Products at your request.」などです。「in accordance with your request」、「in compliance with your request」を使う選択肢は、最初から頭に浮かびません。ビジネス文を例にとりましたが、言葉は生き物であり、その時々に変化してゆくものです。

前回、「英文契約書の文章が難しいといわれることの理由」をいくつか列挙しました。その理由の1つとして「英文契約書には、例えば「force majeure」、「in lieu of」、「bona fide」,「mutatis mutandis」等のフランス語やラテン語がまじっていることがあります。」ということを書きました。

これらの言葉は、英文契約書(法律文書)の特有の用語・言い回しの一部をなす、いわゆる、リーガルジャーゴン(Legal Jargon)と称されるものです。上記のほかにも「pari passu」、「ipso facto」、「per annum」、「pro rata」、「inter alia」などがあります。しかし、自分で契約書のドラフティングを行う場合、あえて難しい表記・表現、言い回わしを使う必要もないと思います。平易な言葉により契約に対する当事者双方の意図が正しく記載されている契約書も多くあります。

前置きが長くなりましたが、今回は、自分でドラフティングをする場合、(1)上記のようなフランス語やラテン語を使わずにほぼ同様な表現ができる場合について例文を通していくつか見てみます。また、(2)そのような言葉をそのまま使ったほうが良い言葉、(3)とりあえず使わないほうが無難な言葉についても見てみます。(いずれも当方の主観的なもので、様々な考え方があります)

1.ほぼ無理なく英語で代用できる例

a. in lieu of(~の代わりに)

英語では「instead of(まれに、in stead ofもあります)」に相当します。

The warranty is in lieu of all implied warranties. (本保証は、すべての黙示的保証に代わるものである)⇒ This warranty is instead of all implied warranties.

Action By Written Consent of the Stockholders in Lieu of Special Meeting Action By Written Consent of the Stockholders instead of Special Meeting.

b.  pro rata(比例して、案分して、割合に応じて)

英語では「proportionally」に相当します。pro rata allocation 「比例配分」のように使われることもあります。

The Seller acknowledges and agrees that, the Seller selling Shares and/or Options to the Buyer will receive its pro rata portion of the Purchase Price.(売主は、株式および/またはオプションを買主に販売する売主が購入価格の比例部分を受け取ることを承認し、これに同意します。) Seller acknowledges and agrees that Seller selling stock and/or options to Buyer will receive a proportional part of the purchase price.

c.  per annum(英語では「per year=1年あたり」の意味です)

The rate of such interest shall be 5% per annum.」(当該利率は年5%とする)The rate of such interest shall be 5% per year.

d. bona fide (ラテン語「善意の~」、「真正の~」、「誠実な~」)

一部の辞書では「善意の~」とされる場合が多いようですが、文脈上で「真正の~」、「誠実な~」などの意味もあり、和訳の際は注意。英語では、「good faith」あたりが一番近いかも。

No bona fide pledgee or other holder of issued shares as collateral security shall be personally liable as a shareholder.(担保として発行された株式の真正の質権者またはその他の所持人は、株主として個人的な責任を負わないものとします。)

If the parties hereto are unable to resolve their dispute through bona fide negotiations, all disputes arising out of this Agreement shall be finally settled by arbitration in accordance with the Rules of the Japan Commercial Arbitration Association. If the parties hereto are unable to resolve their dispute through negotiations in good faith, all disputes arising out of this Agreement shall be finally settled by arbitration in accordance with the Rules of the Japan Commercial Arbitration Association.

この場合のbona fideも「善意の交渉」、「誠実な交渉」などと訳されます。

The restrictions placed on the authority set forth in the preceding paragraph can not be asserted against a bona fide third party.(前項の権限に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。)(医療法)

2. 定型文としてそのまま使ったほうが良いと思われる言葉

a. force majeure (不可抗力)

あえて説明することもないかと思われますが、英文契約書では定番の言葉で、フランス語の「superior force大いなる力」を語源としており、一般的には「人の力ではどうすることもできない力や事態」を表します。

Force Majeure means any event caused by occurrences beyond a party’s reasonable control, including, but not limited to, acts of God, fire or flood, earthquake, war, terrorism, labor dispute, pandemic, system malfunction, governmental regulations, policies, or actions enacted or taken subsequent to execution of this Agreement, or any labor, telecommunications or other utility shortage, outage or curtailment

「force majeure」については、以前、英文契約書の用語、構文(その9)「Force Majeure」、英文契約書の一般条項(その5)不可抗力条項英文契約書の用語:再びForce Majeure(不可抗力)についてなどでとりあげたことがあります。

b.  mutatis mutandis(語源はラテン語で、契約書や法律文で使われる場合は、主に「準用する」の意味で使われます。辞書によっては、「必要な変更を加えて」などと記載されていることもあります。)

The meetings and proceedings of each committee of directors consisting of 2 or more directors shall be governed mutatis mutandis by the provisions of the Articles regulating me proceedings of directors so far as the same are not superseded by any provisions in the Resolution of Directors establishing the committee. (2名またはそれ以上で構成される各取締役委員会の会議と手続きは、当該委員会を設置した取締役の決議の条項により、同様な事項が破棄されない限り、取締役(会)の手続きを規律する会社定款の条項を準用する。)

c. per diem(ラテン語で日当、1日につき、日割りで)

契約書にも使われますが、経験的にはビジネス英語とまでいかなくても、仕事をしてゆく上での日常会話として使われます。

The employer shall pay a per diem JPY20,000 per working day based on the revised working rules agreed between the employer and employees.( 雇用者は、雇用者と従業員との間で合意した改定後の就業規則に基づき、1労働日あたり2万円の日当を支払う)

3.  とりあえず使わないほうが無難な言葉の幾つか

pari passu(ラテン語で「同じ順位の、公平に」)

ipso facto(ラテン語、事実として、事実上;‘by the fact itself)

inter alia(ラテン語、なかんずく,特に;among other things):ある事柄が適用される状況を例示的に列挙する文章において、例示した内容がすべてではないこと明示するために使われます。

The site manager is, inter alia, engaged in the works of coordinating among the employees, contractors, and customers at the place of the customer.(現場管理者は、特に顧客先で請負業者の従業員と顧客の間の調整業務に従事する。)
ある事柄が適用される状況を例示的に列挙する事柄が多い場合には、例示した内容がすべてではないこと明示するために、英文にした場合、「including without limitation」、「including but not limited to」で代用することができますが、上記の例文は、他にもしごとがあるけれど、「単にその中で特に」という意味で作成しており、「including without limitation」、「including but not limited to」は使いません。この場合、英文では以下のような例が考えられます。「including without limitation」、「including but not limited to」については、以前「英文契約書の用語、構文 「including, but not limited to、subject to等」(その4)」でとりあげたことがあります。

The site manager is, especially saying, engaged in the works of coordinating among the employees, contractors, and customers at the place of the customer.

ipso jure (ラテン語、法律上、法律上当然に)

If the employees of Contractor perform the Service under this Agreement, he or she shall incur, ipso jure, the liability stared in the relevant laws and regulations(請負業者の従業員が本契約に基づいてサービスを実行する場合、その従業員は、法律上当然に、関連する法律および規制に基づく責任を負う)

英文契約書のラテン語のイディオムは、多くの場合、上記のように他の英語で代替できますが、上記の「1.ほぼ無理なく英語で代用できる例」、「2. 定型文としてそのまま使ったほうが良いと思われる言葉」にある言葉以外は、ドラフティング時にあまり使う必要もないかと思います。

ただし、英文契約書を読む場合や和訳を必要とする場合は、知っておくべき用語です。

実際、英文契約書にはここでとりあげた以外のラテン語等が使われていることもあります。

ラテン語やフランス語が英文契約書翻訳で使われる経緯につていは、「英文契約書の単語・用語 同義語の併記について(その1)Norman Conquest(ノルマン征服)による影響」に簡単な説明があります。

以上、契約書翻訳の視点からとりあえず知っておくと便利な言葉について簡単に触れてみました。

例文は契約書翻訳の観点から当方にて作成したものですが、例文を含め、ブログの内容を参考にされる場合は、辞書・専門書をご確認の上、ご自身の責任でお願いします。

参考図書:

研究社新英和辞典(研究社)

ランダムハウス英和大辞典(小学館)

法律英単語ハンドブック(自由国民社)

英文ビジネス契約書大辞典増補版(日本経済新聞社)

日本法令外国語訳データベースシステム

Write for Business (Longman)

The New Oxford Dictionary of English (Oxford University Press)

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英文契約書の翻訳 - 長文読解について

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契約書翻訳に際しても、英文契約書の翻訳を含め最近ではAIによる翻訳が採用されることも多くなってきているようです。AIによる英文契約書翻訳の正しさを確認する意味でも、英文契約書そのものについての理解が必要です。端的に言えば「その契約の種類を問わず、その契約内容に、契約に対する当事者双方の意図が正しく記載され、これにより契約が正しく履行され、さらに当事者間の誤解や紛争を防ぐための事柄が記載されているものであるか」を見極める必要があります。しかしながら、「英文契約書の文章は難しい」と言われています。それは、英文契約書には、初見ですぐに理解するのが難しい表現、語彙、規程があるからと思われます。以下、私見ですが、その理由について考えていました。

1. 英文契約書の文章が難しいと言われる理由

(1)一義的に見て契約書は、それ自体は法律ではありませんが、契約書が法律文書であるという点にあるのかもしれません。法律文に使われている法律用語は、「本来的に法概念の抽象性・一般性を本来の特性とする高度に抽象化された部分」があり、その性質上、法律用語が使われた類の契約書の文章には、慣れていないと、すぐに理解にできない単語や成句、独特な表現があります。契約書によっては、法律の条文の一部がそのまま記載されていることもあります。

(2)上記のように英文契約書の特色の1つとして、「基本的ある事柄について、一般的かつ包括的表現を行うことはあまりなく」、反対に「ある事柄について、そこに含まれるであろう個々の事例を1つ1つ列挙する傾向」があります。このため内容が細かく、かつ文章の量も多くなります。これにより、時として、「文章の構造が複雑で読みにくくなってしまう傾向がある」ということが多々あります。

日本の契約書の場合、法律文にもみられるように「一般的・包括的/抽象的に表現される傾向」があり、例えば、良く眼にする内容として「本契約に定めなき事項または疑義を生じた場合、両当事者の協議によりこれを解決する」等の一文が定番として記載されているのを良く見かけます。

もちろん英文契約書でも、例えば「Matters not stipulated in this Agreement or any doubt, with respect to the interpretation or performance of this Agreement shall be discussed and resolved based on the coordination between the parties」)のような一文(当方作成の例文。)を記載することもあります。)

多くの場合、英文契約書では、上記の理由により条項の一文が長くなり、日本の契約書と比べ、相対的に複雑化する傾向が見られます。

(3)文章の構造が複雑で読みにくくなる傾向の要因の1つとして例えば、1つの文章について、その時々で追加、修正された箇所が多々あると、一文が非常に長く複雑になることがあります。これなどは古くから使われている(特に、長年使いまわしされている)契約書において顕著です。すなわち問題の発生、時代の変化等、さまざまな要因により、それが当初作成した時点では、考え得るすべてのことを網羅した内容であっても、後に加筆、修正、削除等が行われます。また、古くから使われている契約書を含め、契約書によっては、すでに現在、一般には使われていないような古くからの表記・表現、言い回し、または難しい表記・表現、さらには時として冗長な言い回しが使われていることがあります。

また、条文によっては、恣意的に遠回しな表現が使用されていることもあります。

これら上記の事柄が合わさった場合、契約書はより難解なものになります。

なを、契約書ではありませんが、経験的に古い表記・表現が使われていることが多いのが、公証人が作成した証書とか、かつて欧米の植民地・宗主国であった国々の公文書にみられることがあります。

(4)、英文契約書には、例えば「force majeure」、「in lieu of」、「bona fide」,

「mutatis mutandis」等のフランス語やラテン語がまじっていることがあります。

(5)その他、英語を母国語としない起草者が作成したことによる独特な表現、または英語を英語以外の言語からの翻訳で生じた文法的な瑕疵、読みにくさ等があります。

いずれにしても、上記の事柄の幾つかが、英文契約書や法律文書に初めて触れた場合の難しさにつながり、英文契約書の内容を理解するうえでの1つの妨げになっているかと思われます。

2.  長文の読解についての一例

そこで、今回は以前に掲載した「長文の読解についての一例」を以下に改めて掲載しました。簡単なものですが、契約書の和訳の理解の一助になればと思います。

ABC Company shall, to the fullest extent permitted by law, indemnify, defend upon request, and hold harmless XYZ Company and its members, officers, directors, employees, agents, representatives, subsidiaries, affiliates, successors, and assigns (collectively, “Indemnitee”) against all losses, claims, damages, expense and liabilities sustained or incurred by the “Indemnitee” for any damage, harm, loss or injury of any kind, direct or indirect, to any property, entity or person,  including, but not limited to, claims for injuries to employees of the “Indemnitee”, ABC Company and/or any related party, arising directly or indirectly out of any act, omission, conduct, negligence or default by ABC Company or a its related party or their respective officers, directors, employees, agents, representative, subsidiaries, successors, or assigns (“ABC Company’s Parties”) and/or arising directly or indirectly out of or in any manner associated with the Obligations under this Agreement or any contact with or encountering of any property, equipment, vehicles, facilities or personnel of the “Indemnitee”, regardless of whether any such liability, damage, loss or injury is caused by, results from or arises out of the negligence, fault or other liability of the “Indemnitee” or any other party to be indemnified.

ポイント1-インデックスとなる単語、表現を見つけて、グループ化

このような場合、インデックスとなる単語、表現を見つけ、かつ、グループ分けすることで、すっきりとした翻訳が可能になります。まず、以下のように上記の文章をグループに分けます。

ABC Company shall, to the fullest extent permitted by law, indemnify, defend upon request, and hold harmless XYZ Company and its members, officers, directors, employees, agents, representatives, subsidiaries, affiliates, successors, and assigns (collectively, “Indemnitee”) against all losses, claims, damages, expense and liabilities sustained or incurred by the “Indemnitee” for any damage, harm, loss or injury of any kind, direct or indirect, to any property, entity or person,

 including, but not limited to, claims for injuries to employees of the “Indemnitee”, ABC Company and/or any related party,

arising directly or indirectly out of any act, omission, conduct, negligence or default by ABC Company or a its related party or their respective officers, directors, employees, agents, representative, subsidiaries, successors, or assigns (“ABC Company’s Parties”)

and/or arising directly or indirectly out of or in any manner associated with the Obligations under this Agreement or any contact with or encountering of any property, equipment, vehicles, facilities or personnel of the “Indemnitee”,

regardless of whether any such liability, damage, loss or injury is caused by, results from or arises out of the negligence, fault or other liability of the “Indemnitee” or any other party to be indemnified.

ポイント2-「including, but not limited to、」「arising directly or indirectly」と「regardless of whether ~」に注目

「including, but not limited to」の場合、その前にある文章を訳した後に、「including, but not limited to」で分け、「上記は、以下を含むが以下に限定されない」と限定すれば、すっきりと訳すことができます。

(例文の下線部分の訳)を含むが「(例文の下線部分の訳)に限定されない」というように、一つの文章の様に訳すと長くなり、読み手もどこに焦点を置いて読む(訳す)のか迷ってしまいます。

また、「arising directly or indirectly」と「and/or arising directly or indirectly」のように、同じ文章があるときは、必ず、xxxおよび/またはxxxのように、「arising directly or indirectly」の文章ごとに訳します。

ポイント3-長い文章の訳し方の一例

また、長い文章の後に、「regardless of whether ~」のような言葉がでてきた場合、前の長い文章から訳し始めて、「(それ以前の文章を全部入れて)、whether以下であるか否かにかかわらない。」とすると、訳すのが大変になります。この場合、長い文章を訳した後に、[上記は、whether以下であるか否かにかかわらない。」とします。

この様に整理した後に、文章として読んで分かり易いようでしたら、そのままのこれを訳文といたします。

ただし、文章の流れが若干スムースでないように思われる場合、読みやすくするために、シャッフルして文章を入れ替えることも可能です。

なを、このブログは、「英文契約書の文章が難しいと言われる理由」について、文章の構成についての私見であり、英米法(Anglo-American Law)の解説ではありません。ここに記載した「長文の読解についての一例」についても、これまでのブログの内容と同じ、「とりあえず覚えておくと便利」という視点からのものです。

ちなみに、ひとくくりに英米法といいますが、周知のように米国法と英国法には、相違が存在します。また、契約の概念(定義)にしても、例えば、日本法と米国法では異なります。

例文は契約書翻訳の観点から当方にて作成したものですが、例文を含め、ブログ内容を参考にされる場合は、辞書・専門書をご確認の上、ご自身の責任でお願いします。

参考図書:

研究社新英和辞典(研究社)

ランダムハウス英和大辞典(小学館)

アメリカの法律と歴史 増補版(自由国民社)

英米法講義(青林書院新社)

法律用語辞典(有斐閣)

The New Oxford Dictionary of English (Oxford University Press)

Collins Concise Dictionary(Harper Collins Publishers) その他 UCC、Restatement2d

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英文契約書の単語・用語 例外、否定の意味を表す言葉(その2)

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契約書翻訳には、いくつもの「例外」、「否定」の意味を表す単語・用語が使われます。前回に続き「例外」、「否定」の意味を表す英語の単語・用語の代表的な言葉をリストアップして、改めてそれらの意味と簡単な使い方を確認し、英文契約書での使われ方について作成した例文(簡単なもの)を通して、契約書翻訳の視点からみてみます(思いついたものに関しては英文契約書以外の使われ方も含めます)。

ここでとりあげた言葉の意味と用法については、このブログの趣旨である英文契約書について「覚えておくと便利」という趣旨に合わせて、限られた意味と用法のみをとりあげています。訳文はすべて暫定訳です(法律文を除く)

5. unless: 条件を示す接続詞「~でない限り」、「~しない限り」または、例外を示す前置詞として「〜を除いては」、「〜以外に」の意味で使われます。英文契約書では、otherwiseと組み合わされて成句を作ります。例えば、Unless otherwise specified in this Agreementは、「本契約において別に定められた場合を除いて・・・;本契約において別段の定めがない場合を除き」など意味で使用されます。

似たような意味(「〜を除いては」、「〜以外に」)でのいくつかの使われ方のパターンとしては、「Unless otherwise stated ~」、「Unless otherwise noted ~」、「Unless otherwise agreed in writing」、「Unless otherwise provided for in  ~」、「Unless the context requires otherwise」、「Unless the context requires otherwise」などがあります。Unlessを使った文章では、基本的に前提となる文があり、その中で例外的要素を強調するというパターンが一般的です。和文英訳の際など、使い勝手が良いフレーズで覚えておくと便利です。いずれも、まず日常的な文章では使われることはないと思われます。

Unless the context otherwise requires, words importing the singular include the plural and vice versa, words importing a gender include every gender.(文脈上他の意味に解すべき場合を除き、単数を意味する文言は、複数を含み、逆も同様であり、性別を意味する文言は、すべてのその他の性別を含む)

6. except:

「例外」を表す場合に用いられます。「except〜(〜を除いて)」のほか、他の語と組み合わされて成句として使われます(例:except + 動詞の原形「~する以外は」、except + to + 動詞の原形~「~する以外は」、except for:「~を別にすれば、~以外の点では」、except from「~から除外する」、except that~「ただし、~を除いて=unless」、except where~「~の場合を除き」、except when「~の時以外は、~の時を除き」、except as「〜を除き」、except as  otherwise等)

Except as set forth in this Article, the Seller shall not disclose any and all information provided by the Buyer. (本条に規定する場合を除き、売主は買主から提供されたあらゆる情報を開示しない)

Except as otherwise provided herein, neither party may unilaterally terminate this Agreement.(本契約によりその他特段の定めがある場合を除き、いずれの当事者も、一方的に、本契約を解除することはできない。)

*unlessとexceptについては、以前にとりあげたことがありますが、改めてまとめてみました。

7. If not:ifの否定文でunlessとほぼ同じ表現として扱われています。

辞書では「もし…でないとするなら」、「…でないとしても」などと書かれていますが、

You will catch cold if you don’t wear warm clothes today.

You’ll be late for a school tomorrow if you are not going to bed early.

The parties hereto may lose the rights under this Agreement if not exercised the said rights.

(本契約の当事者は、当該権利を行使しなかった場合、本契約に基づく権利を失うことがある)

The Contractor shall keep, or shall cause its subsidiary or affiliate to keep the Confidential information of the Customer, if not, the Customer may immediately terminate this Agreement at any time(契約者は、顧客の機密情報を保持し、その子会社または関連会社に保持させるものとする。そうでない場合、顧客はいつでも直ちに本契約を解除することができる)これは、やや無理がある例文ですが、こんな感じになるようです。

8. nor: 否定を表す接続詞で、「〜もまたない」という意味です。通常、否定文の中で二つ以上の要素をつなげる際に使用されます。

I don’t like apples nor oranges.

This rule shall not apply to seasonable workers nor contract workers.

これは、「This rule shall not apply to seasonable workers or contract workers.」でも可です。

そのほか、neitherまたはnotと相関的に使われます。

He neither drinks nor smokes.

英文契約書でも、例えば、Neither the Contractor nor its subsidiary or affiliate must deal with the Antisocial Fores for any reason.(請負業者およびその子会社または関連会社は、理由を問わず、反社会的勢力と取引を行ってはならいものとする。)

これらのような使い方のほかに例えば、以下のように使われることもあります。

No money shall be expended, nor shall the State obligate itself, except as authorized by the Diet.(国費を支出し、又は国が債務を負担するには、国会の議決に基くことを必要とする。)(日本国憲法第85条

なを、単語「No」を使った否定については、以前、「英文契約書における独特の用語、構文(その20)「no event shall」、「英文契約書の用語、構文(その21)文頭の否定」および「英文契約書における文頭の否定(その2)」において、例えば、In no event shall ABC Corporation be liable for any damages caused by or in relation to this Service.、Nothing in this Agreement shall be construed as creating ……….とかNone of the parties may assign or transfer any of its or their rights or obligations under this Agreement.などの作成した例文を載せてあります。

いままで述べてきたほかにも「例外」、「否定」の意味を表す単語・用語は多くありますが、とりあえず、覚えておくと便利な言葉のいくつかをとりあげてみました。機会があればそのほかの単語・用語についても取り上げてみたいと思います。なを、内容を参考にされる場合は、辞書・専門書をご確認の上、ご自身の責任でお願いします。

参考図書:

ランダムハウス英和大辞典(小学館)

カレッジライトハウス和英辞典(研究社)

英語論文執筆ガイド(講談社)

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英文契約書の単語・用語 - 役に立ちそうな英語表現

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契約書翻訳の視点に立ったいつもの「英文契約書の単語・用語」についての記事から離れて、今回は、最近気になった役に立ちそうな英語の表現の幾つかについて書いてみました。訳文はすべて暫定訳です。

1. Where do you see yourself in five years?とは

欧米の企業、中でも米国の企業の面接の際によく聞かれる質問の1つに、“Where do you see yourself in five years?”があるといわれます。

「5年後の自分はどうなっていると思いますか?」という意味になりますね。

または、“Where will you be in five years”とも言い換えることもできます。

この種の質問の目的は、面接者が、その仕事が面接を受けている人の全体的なキャリア目標にどの程度適合しているかについて確認するためです。

2. 質問への答え方は
5年後にどうなりたいかという具体的なイメージがなくても、その仕事に対するあなたの熱意を示すこの質問への答え方がいくつかあります。

ここでは、それに対する面接の回答ではなく、“Where do you see yourself in five years?”に注目し、これと同様な文章について考えてみたいと思います。

一般的な場合、「Find」が他動詞でとして使われ、「~を見つける」という意味になります。他動詞には目的語が必要です。この場合は「見つけられる対象物」が必要です。つまり、主語+ find + 目的語(見つけられるもの)の順の文章になります。

具体的な例を以下に示します。

(1) I found my wallet that I lost yesterday

(2)Scientists need to find a solution to this problem.

(3)he jury found it difficult to convict the defendant

ところで「Find」は「知らないうちに〜をしている」や「思わず〜をしてしまう」など、自分自身が何かを無意識にやっていることを表す(見つける)場合に使われる表現であり、「You will find yourself」自体には、「自分をみつめる」「自分の能力を知る」「自分が~だと分かる」「気が付いたら~であることが分かった」という意味になります。

You see yourself xxxでは、あなたが、xxxの状態になりますよという意味になります。知っておくと便利です。

3. You see yourselfの使い方

いろいろな場面で、You see yourselfが使われている表現を見てみます。

In a short time, you will find yourself speaking Russian.

(ロシア語を話している自分に気づきます。(すぐに、ロシア語を話せるようになりますよ。)

Keep doing this and you will find yourself debt free.

(借金が無くなっているようになります。(やり続けていれば、借金が解消されます。))

If this is not brought under control, you will find yourself with more problems than just diabetes.

(糖尿病以外の他の問題にも自分で気が付くようになります。(管理しないと、糖尿病だけではなく、他の問題も生じてきます。)

When you enter it, you will find yourself in a place where time has literally stood still.(中へ入ると、文字通り時間が止まった場所にいるような気になります。)

Just take public buses 200 meters away from here, and you will find yourself at the place where you want to go in only 15 minutes. (ここから200メートル離れた公共バスを利用すれば、わずか15分で行きたい場所に到着します。)

If you are willing to put in the work, you will find yourself enjoying a life of wealth and abundance.(喜んで仕事に取り組めば、豊かで裕福な暮らしを楽しむことができるでしょう。)

上記のように、ごく一般的な単語を使って、結構含蓄のある文書を作成することができます。

ところで、“Where do you see yourself in five years?”で、5年後になりたい自分自身の“aspiration”も聞くのも良いかもしれません?

4. aspirationとは?

熱望、願望、志、大志と訳され、ビジネス世界で自分が成し遂げたい事柄に対する強い思いや向上心という意味です。

ちなみに、aspirationは、美徳、技術や他の高い特質であり、ambitionの場合は、昇進、名声、名誉等になります。visionの場合は、視界、視野、洞察力。先見性といった意味になります。

Let’s have an aspiration talk!

参考図書:

ランダムハウス英和大辞典(小学館)

カレッジライトハウス和英辞典(研究社)

新英和中辞典(旺文社)

英文契約書の単語・用語 例外、除外、否定の意味を表す言葉のいくつか(その1)

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契約書翻訳にかかわらず英語には、いくつもの「例外」、「否定」の意味を表す単語・用語があります。英文契約書においてもこれらの単語・用語が使われています。今回はとりあえず、「例外」、「否定」の意味を表す英語の単語・用語の代表的な言葉をリストアップして、改めてそれらの意味と簡単な使い方を確認し、それらの中でも、英文契約書での使われ方について作成した例文(簡単なもの)を通して、契約書翻訳の視点からみてみます(思いついたものに関しては英文契約書以外の使われ方も含めます)。
なを、とりあげた言葉の意味と用法については、このブログの趣旨である英文契約書について「覚えておくと便利」という趣旨に合わせて、限られた意味と用法のみをとりあげています。訳文はすべて暫定訳です(法律文を除く)。

否定の意味を表す単語・用語

1. but:  主に「しかし」「ただし」「けれども」の意味で、文中で二つの対立する事柄や、前述の内容と対照的な内容をつなぐ役割を果たします。前置詞としても使われ、「~以外の」にという意味を表します。副詞として「ほんの〜だけ」の意味を表すこともあります。

He is a newcomer, but he is a promising youth; He is a newcomer but he is a promising youth. It is not red, but black.

「but」は、口語的な意味合いが強いことばのせいか、「しかし」「ただし」「けれども」等の意味としては、英文契約書ではあまりお目にかかりません。(「but」よりも「however」とか「although」とか「though」が使われます(後述))。英文契約書で「but」を使った定番のフレーズの1つとして「including, but not limited to」があります。

Residuals means information in non-tangible form; which may be retained by persons who have had access to the Confidential Information, including ideas, concepts, know-hows or techniques contained therein, but not limited thereto.(残存記憶情報(残滓情報)とは、無形の形態による情報で、これらは、機密情報に含まれるアイデア、概念、ノウハウ、または技術を含み、これらに限定されない機密情報にアクセスした人物が保持する可能性があるものを意味する。)

“parent company” means any entity which is prescribed by Ministry of Justice Order as a corporation who controls the management of a stock company, including, but not limited to, a company which has a stock company as its subsidiary company;(会社法

なを、日~英の翻訳で、日本語の助詞の「が」を「but」で置き換えることもあります。

2. however:「however」は英語の接続詞で「but」に相当します。日本語では「しかし」、「だが」、「ただし」などと訳されます。文脈により「どんなに〜でも」「しかしながら」などとも訳されることもあります。

英文契約書では、前文の内容に対する条件や例外を示す際に単体で使用されるほか、同じ条項の本文の例外を示す際に接続詞として「本文但し書き」として使用されます。この場合、「provided, however, that」の形式で使わる場合が良く見かけられます。このフレーズの後には基本的に権利または義務を規定する文章が記載されます。先行する文章の間はセミコロン(;)かカンマ(、)で区切ります。

The effective period of this Agreement shall be for three (3) years starting from February 01, 2023; provided, however, that the effective period may be extended or shortened prior to the expiration date hereof based on a consultation among the parties hereof. (本契約の有効期間は、2023年2月1日から3年間有効とする。但し、有効期間満了前までに甲乙丙協議の上当該期間を延長又は短縮することができる。)

なを、「provided, however, that」と似た「provided that」のパターンがあります。本来、「~を条件とする」の意味ですが、文脈的に「ただし、(~を条件とする)」のように訳すことがあります。()部分は特に強調したい場合を除き訳さない場合もあります。The Contractor shall be responsible for all services under this Agreement provided that the Contractor shall completely perform the services in accordance with the specifications attached to this Agreement.

そのほか、「provided that」の「that」を書略して「provided」が単体で使われて、但し書きとして「ただし… である場合に~」の意味で使われることもあります。

なを、「however」を単体で使用する場合の例としては、The Contractor shall be responsible for any and all services under this Agreement. However, the Contractor’s liability hereunder shall in no event exceed the fees stipulated in this Agreement.(コントラクターは、本契約に基づくすべてのサービスに責任を負うものとします。ただし、本契約に基づくコンストラクターの責任は、いかなる場合も、本契約に規定された料金を超えないものとする)

「除外」を表す用語・単語として「unless otherwise」と「except」等がありますが、これらについては、後述します。

3. although、though

「although」は、文と文をつなぐ接続詞で、「~であるにもかかわらず」「~だけれども」「~であるが」、「しかし」、「~だが」という意味があります。「although」は書き言葉として使われ、英文契約書でも多く見受けられます。「though」は、「although」に比して口語的です。ちなみに上記の「He is a newcomer, but he is a promising youth.」は、「Although he is a newcomer, he is a promising youth.」とすることもできます。「although」は、文頭と文尾のいずれにも置くことができます(thoughが文末にくるときは、「、」を付けます)。

Although the Products sold to the customers may not returned to the Company, the supplier may return the Products safely retained in supplier’s warehouse to us if any defect is found in the Products prior to delivery to the customer.(顧客に販売した製品は当社に返品することはできませんが、顧客への引き渡し前に製品に欠陥が発見された場合、サプライヤーはサプライヤーの倉庫に安全に保管されている製品を当社に返品することができます。)

4. in spite of、despite

前置詞の働きをする「in spite of」と「despite」は、いずれも「~にもかかわらず」と訳されますが、辞書をみると「in spite of」は「…に反して」という積極的なニュアンスを含み、「despite」は「…と関係なく」という消極的なニュアンスを持つとされています。

これらは英文契約書では、基本的には文中で使用されます。

The Contractor shall remain responsible to Customer for the performance of its obligations despite any subcontract and shall be responsible to the Customer for acts, defaults, and negligence of the subcontractors as if they were the acts, defaults or negligence of the Contractor.

(請負業者は、下請け契約にかかわらず(外注した場合でも)、引き続き顧客に対しての責任を負うものとし、その義務の履行について引き続き顧客に対して責任を負うものとし、下請け業者の行為、不履行、過失については、あたかも請負業者の行為、不履行、過失であるかのように、顧客に対して責任を負うものとします。)

契約書では、見たことがありませんが、例えば、レポートの類では「despite」を文頭にもってきて強調構文として文章を作り上げる例をずいぶん見てきました。

文頭で「~にもかかわらず」とする場合(すなわち「上記にかかわらず」)は、例えば「Notwithstanding the above」、「Notwithstanding the foregoing」、「Notwithstanding anything to the contrary in xxx」などが使用されます。

Notwithstanding anything to the contrary in this Article, either party may terminate this Agreement at any time on 30 days prior written notice to the other party.

思いつくままに書いてきましたが、ほかにもいつくか取り上げたい単語・用語があります。

あまり長くなっても「ブログ」としてはいかがなものかと思い、それらについては次回にゆずりたいと思います。なを、例文もその時々で思いつくままに書いています。内容を参考にされる場合は、辞書・専門書をご確認の上、ご自身の責任でお願いします。

ランダムハウス英和大辞典(小学館)

カレッジライトハウス和英辞典(研究社) 英語論文執筆ガイド(講談社)

Winer

英文契約書の単語・用語「従う」または「遵守する・順守する・守る」の簡単なまとめ

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契約書翻訳の視点から以前に書いた、「英文契約書の用語の定番の「従う」または「遵守する・順守する・守る」という用語・単語(その1)、(その2)」」について、「まとめ」として加筆、修正したものです。いずれの言葉も日本語では、日常的に「従う」も「守る」大体が同じ意味として使用されます。ただし、翻訳の場合、英語から日本語への翻訳でも、文脈に応じて、同じ単語を、適宜、これら意味に振り分けて訳出する場合が多くあります。同様に日本語から英語への翻訳の場合も、文章の内容と意図に応じて、「従う」、「遵守する・順守する・守る」に対応する単語を、適宜使い分けます。ここでは、とりあえず知っておくと良いいくつかの単語・用語を英文契約書翻訳の視点から見てみます。なお、単語と作成し例文に付記された訳語は、基本的に暫定訳、または仮訳です。

1.「従う

「従う」それ自体、日本語としても様々な意味があります。英語の単語、用語でも「従う」の意味を単語・用語、または「従う」と訳される単語・用語は多くありますが、ここでは、英文契約書、法律文で「決めたことや規則に従う」の意味で使われる中から、とりあえず知っておくと便利ないくつかのパターンを取り上げます。

a. 日常的な例:

I follow his advice.  Most people follow customs in this local community.

I accept his request.

b. 技術文書で見かける例:

Operator must follow the proper procedure to turn off the machine in order to prevent data corruption on the machine hard drive. (オペレーターは、装置のハードドライブのデータの破損を防ぐために、装置をOFFにする場合、適切な電源OFF手順に必ず従ってください。)

c. 「従う」を意味するいくつかの用語・単語

accept:(受け入れる、従う)

abide by :(法律・協定。規則などに)従う

follow: 「(忠告・命令・慣習などに)従う」

obey:(命令・法律などに)従う

observe: (命令・法律などに)従うfollow:(忠告・命令・慣習などに)従う

comply with:(命令・規則・要求などに)従う

in accordance with:(~に従う、~に従って)

in agreement with:(~に従って)

in substantial accordance with (実質的に従って)

conform to:(慣習・しきたりなどに)従う

in conformity to(with): (~に従って)

in deference with:(~に従って)

in obedience to:(~に従って)

pursuant to、in pursuant of: (~に従って、~に応じて」、~により)

いずれも、「従う」または「遵守する・順守する・守る」としてそのまま使えるものです。

ところで、英文和訳の場合、これらの単語は、訳出した場合、上記のように(~に従う、~に従って)と同じように訳される場合がほとんどですが、和文英訳の場合は、文脈に沿った単語・用語を選択することを必要とする場合が多くあります。

作成した例文を通していくつか見てみます。

The employees shall obey and observe all rules and regulations reasonably established by the Company from time to time. (従業員は、会社が合理的に定めたすべての規則および規定を随時遵守しなければならない)

The Licensee shall operate fully to comply with the liabilities arising from this Agreement. (ライセンシーは、本契約から生じる責任を遵守するためにその義務を完全に遂行する)

Each party hereto agrees to comply with its obligations under this Agreement. (本契約の各当事者は、本契約に基づく義務を遵守することに同意する)

The Contractor will abide by all laws applicable to its provision under this Agreement and is responsible for any fees or permits necessary therefore. (契約者は、本契約に基づく規定に適用されるすべての法律を遵守し、そのために必要な料金または許可について責任を負う)

The Licensor grants to the Licensee for the duration of this this License Agreement a non-exclusive license to use the Mark as a trade mark on or in relation to the Products in Sales Territory in accordance with the terms thereof. (ライセンサーは、本ライセンス契約の有効期間中、本契約の条件に従って販売地域内の製品または製品に関連してマークを商標として使用する非独占的ライセンスをライセンシーに付与する)

「accept」には、さまざまな意味(例:受け入れる、受納する、引き受ける、受諾する、応じる…:)があります。I accept his proposal. We accept the entrustment of businesses.

以下のように、文脈的に「従う」とすることもあります。If you do not accept our instruction specified in the separate agreement, you may not renew the basic agreement. (別途規約に定める当社の指示に従わない場合には、基本契約を更新することはできない)

指示に従わない=「を受諾しない・に同意しない・を受け入れないなどでも可」。

The employees shall accept the workplace policies and procedures, instruction and supervising as well as the existing internally or externally code of conduct. (従業員は、職場の方針と手順、指示と監督、および既存の社内または社外の行動規範に従うものとする。)

If Party X fails to perform its obligations under this Agreement, Party Y may terminate this Agreement pursuant to the termination clause hereof. (当事者Xが本契約に基づく義務を履行できない場合、当事者Yは本契約の解除条項に従って本契約を解除できる)

The Contractor shall reimburse the expenses borne by the Customer to the Customer the pursuant to the provision under this Agreement. (契約者は、本契約の規定に従い、お客様が負担した費用をお客様に弁済する。)

「pursuant to」は、契約書や法律文の常套句です。良く知られているように「従う」の他に「~に応じて」、「~により」などとされる場合もあります。例えば、上記の例文も文脈的に「契約者は、本契約の規定により」とする場合もあります。

2.文脈的に「従う」として訳せるいくつかの言葉の例:

「subject」を使った例

「subject」そのものは様々な意味に使われ、なじみのあるところでは、「主題・事柄・(書物や作品などの)標題」ですが、「be subject to」は文脈的に「~に従って」とされることがあります。

This Agreement is subject to all applicable federal, state and local laws.

(本契約は、適用される連邦法、州法および地域法に従います(準拠します)。)

類似の表現:This Agreement shall be governed by and construed in accordance with the laws of Japan.

The prices of Products shall be reviewed periodically in accordance with prevailing market conditions and are subject to change or withdrawal without any prior notification at the sole discretion of manufacture.(製品の価格は、一般的な市場の状態に従って定期的に再検討を行い、事前の通告なしに、メーカーの単独の裁量により、変更撤回されることがある)

ブログの内容とは外れますが以下の文章も良くみかけます。

The specifications of this Product are subject to change without any prior notice. (本製品の仕様は予告なく変更される場合があります。)

「submit」を使った例

The parties hereto shall submit any dispute arising from this Agreement to the exclusive jurisdiction of the Tokyo District Court of Japan.(本契約の当事者は、本契約に起因する紛争については日本の東京地方裁判所の専属管轄権に服する(従う)。)「submit」には「~に服従する」の意味もあり。文脈的に「~に従う」としてみました。「専属管轄権に服する」などとすることもあります。

その他:

例文は契約書翻訳の観点から当方にて作成したものですが、内容を参考にされる場合は、辞書・専門書をご確認の上、ご自身の責任でお願いします。

参考図書:

ランダムハウス英和大辞典(小学館)

ビジネス法律英語辞典(日経文庫) カレッジライトハウス英和辞典(研究社)

英文契約書の単語・用語/ entrust(entrustment)による委託と受託(「まかせる」と「引き受ける」)の表現の簡単なまとめ

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契約書翻訳の視点から以前投稿した「entrust(entrustment)による委託と受託(「まかせる」と「引き受ける」)の表現(その1)、(その2)」に加筆、修正したまとめです。主に和文英訳の視点から見てみました。

英文契約書に限らず、法律文書等でお目にかかるのが「委託」と「受託」という言葉です。

今回は、特に「entrust」とentrustの名詞形「entrustment」を使用した「委託」と「受託」の表現を中心に契約書翻訳の観点から見てゆきます。

これらの単語の主な意味としては、「entrust: 任せる、委託する、委任する、預ける、信託する」。「entrustment: 委託」です。「委託」に対応する言葉は、「受託」です。以下「entrust」と「entrustment」他を使用した「委託」と「受託」の表現について簡単に作成した例文等を通して見てみます(法律文を除く)。


1.「委託」と「受託」の意味

「委託」と「受託」の意味を法律用語辞典でみると、

委託 :一般的に法律行為または事実行為を他人または他の機関に依頼すること……。」

受託:一般的に委託、委嘱、あるいは請託を受けること……。」とあります。

国語辞典を見ると、「委託:ゆだね任せること、人に頼んで代わりにやってもらうこと」、「受託:頼まれて引き受けること。」とあります。端的にいえば表題のように「まかせる」と「引き受ける」ことです。


2.「entrust」と「entrustment」他を使用した「委託」の表現

「委託」や「委託する」を表す単語は、「entrust」と「entrustment」の他にも、trust、 consignment、charge、commission、delegate等多くの単語がありますが、これらについては後述します。

ここでは「entrust」を中心に作成した例文を通していくつかの用例を見てみます(法律の条文を除く)。

なを、「entrust」を使った「委託する」の表現のパターンは、例えば「A person entrusts someone with something」、「A person entrusts something to someone」などです。

I entrust him with my business.

I entrust my business to him. 

Party A shall entrust Party B with the sales of Party A’s products (hereinafter referred to as “Products”) for areas designated by Party A. (当事者Aは、当事者Aが指定した地域での当事者Aの製品(以下「製品」という)の販売を当事者Bに委託する)

Payment date and method are entrusted with the Board of directors. (支払日と支払方法は取締役会に委任されている)

Party A shall not entrust all or part of Party A’s business related to this Project to any third party without a prior written consent by Party B.(甲は、乙の事前の書面による承諾無しに、本プロジェクトに関連する甲の業務の全部若しくは一部を第三者に委託してはならない。)

A prefectural governor, etc. may delegate custody of dogs and cats to an organization established for the purpose of animal welfare. (都道府県知事等は、動物の愛護を目的とする団体その他の者に犬及びねこの引取りを委託することができる。)(動物の愛護及び管理に関する法律

The Seller shall entrust the customs clearance of the Goods to the local agent. (売主は商品の通関手続きを現地代理店に委託する)。

「entrust」の代わりに「trust」を使用することもできますが、一般的には「entrust」が使用されています。


3.「entrust」と「entrustment」他を使用した「受託」の表現

「受託」を1語で表す単語は、trust、requisition、contract等があるようですが、「entrust」使った「受託する」の表現は、例えば「be entrusted with something」等となります。この場合「受託する」は「~を任せられる・~を委託される・委託を受ける=~受託する」と表現されます。なを、trustを使う場合は、「be given something in trust」。

The sales agent shall be entrusted with sales of the Products based on this Agreement within the sales territory.
(販売代理店は、販売地域内での本契約に基づく製品の販売を委託される)

The executive officer (who is) entrusted with the day‑to‑day management shall be appointed by annually meeting of the board of directors.
(日常の管理を委託された執行役員は、毎年、取締役会により任命される)

The Customer shall entrust the Services under this Agreement to the Contractor and the Contractor shall undertake it.(顧客は、本契約に規定するサービスを請負に委託し、請負業者はこれを受託する)


4.委託者・受託者の表現

「entrust」から派生して「委託者」を表す単語は、「entrustor」、「受託者」を表す単語は、「entrustee」です。「trust」から派生した「trustor=委託者」「trustee=受託者」も多く使われます。

In case of an application for the indication of trust property with regard to shares or for the cancellation thereof, the trustor or the trustee shall file the application in the form designated by the Company together with the share certificates.
(株式に関する信託財産の表示又はその抹消を請求するときは、委託者又は受託者は、当社所定の請求書に株券を添えて提出するものとする。)

そのほか「委託者」を表す単語には、settlor、consignor、assignor等があります。この中で、consignorは、主に「販売・運送等の委託」、settlorは、「信託」、に関連するものに多く使用されるようです。そのほか、委託者とされても、例えば、assignorは「財産・権利当の譲渡人・委託者」とされます。

なを、例えば、client: 依頼人、customer:顧客、依頼人等も、「何らかの物事を依頼する人」という意味がある場合、委託者とされることがあります。その意味では「委託者」という言葉は、広い意味で使用されるようです。:調査会社の顧客(調査会社に調査を頼む人=依頼人)=委託者。

面倒なのは、日本語で「委託」とい言葉が使われている存在でも、その内容を見ると「受託者」であることがあります。

:委託先(委託を依頼する相手)=受託者(委託をうける側=委託を受けた者)

注意が必要です。

This Agreement stipulates the conditions that the person entrusted with the food service on behalf of the food service provided by the Contractor.
(本契約は、請負業者が提供するフードサービスに代わってフードサービスを委託した者(フードサービスの委託先)が行う条件を規定しています。)

The competent minister may have officials of the Ministry enter the office, factory, workplace, or warehouse of an automobile manufacturer, etc. or an entrustee and inspect the books, documents, and other objects pursuant to the provisions of Cabinet Order to the extent necessary for the enforcement of this Act, …………
(主務大臣は、この法律の施行に必要な限度において、政令で定めるところにより、その職員に、自動車製造業者等又はその委託を受けた者の事務所、工場、事業場又は倉庫に立ち入り、帳簿、書類その他の物件を検査させることができる。)(使用済自動車の再資源化等に関する法律)

Entrustee shall, at all times during and after the term of this Agreement, keep all of such confidential information in confidence and trust.
(受諾者は、本契約の期間中ならびにその後においても常に、当該機密情報のすべてを機密として保持し、かつ保管するものとする。)

If Party A entrusts the business process related to this Agreement to any third party, the provision under this Article shall be applicable to the entrusted party.
(甲が、本契約にかかわる業務処理を第三者に委託する場合においても、その委託先に対し本条の定めが適用されるものとします。)


5.「entrust」を使用する以外の「委託」の表現と「委託」に準じた表現を持つ単語

和英辞典を見ると「委託」を表す単語は、「entrust」以外にも幾つかあります。調べたところこれらに共通しているのは、例えば、「委託」と訳される場合、冒頭に書いたように「委託:ゆだね任せること」から「ゆだねる」の意味を持って使われるときに「委託」と訳され、時として「委任」と訳されるようです。いずれも多義語で様々な意味もっています。その中のいくつかを見てみます。

1) trust

trustは、様々に意味を持つ多義語ですが、その中でも「信頼(安心)してまかせること」という意味合いで「保管」、「管理」をはじめ、ときとして「委託」の意味合いで使われることがあります。

He trusts the money to the bank. (お金を銀行に預ける)

I can trust you to do this work. (あなたにこの仕事を任せられます)

ただし、このような場合、普通は「entrust」が多く使われます。

He entrusts the money to the bank.

I can entrust you to do this work by yourself

This development was accomplished under the trust from the Government.(本開発は、政府から委託を受けて実施されました)

2) consign、consignment

Consignmentは、主に商品や貨物にかかわる委託:委託(販売)、託送、委託貨物、積送品、送り荷、委託販売品等にかかわって使用されるようですが、広義の「委託」として使われることもあるようです。

The company consigns the product.(会社は、商品を委託販売する)

Product Consignment Sales Agreement.(商品委託販売契約)

A document shall be delivered prior to the conclusion of consignment agreement.(受託契約の締結前に、書面を交付するものとする)

3) commission

Commissionは、委託の意味で使われる場合、主に職権、職務、権限の委託・委任の意味で使われます。以下は、「~に権限を委託する」の動詞の例文です。

We commission him to negotiate on the matter.(その問題について彼に交渉を委託した)

Local government commissions the design of citizen hall to a private company.(地方自治体は、市民会館の設計を民間企業に委託している)

Committee members shall be commissioned by the Chairperson.(委員メンバーは、委員長が委嘱する)

4) delegate

Delegateは、委託の意味で使われる場合、多くはdelegation of authority: 権限の委任(または移譲)の意味で使用されます。

The Prime Minister shall delegate his/her authority under this Act (excluding that specified by Cabinet Order) to the Commissioner of the Financial Services Agency.(内閣総理大臣は、この法律による権限(政令で定めるものを除く。)を金融庁長官に委任する。)(銀行法

This delegation is still pending approval.(この委任はまだ承認待ちの状態です)

5) mandate

We will mandate as an auditor of our company to you.(あなたを当社の監査役に任命します)

The delegation of authority shall be governed by the provisions on mandate.(権限の委譲は、委任に関する規定に従うものとする)

6) request、ask

A public safety commission may ask a company or other corporation to handle all or part of the administrative processes related to abandonment penalties as prescribed in Article 51-4 (other than checking and confirmation processes, payment orders, demands, and measures to collect arrear.)(公安委員会は、第五十一条の四に規定する放置違反金に関する事務(確認事務、納付命令、督促及び滞納処分を除く)の全部又は一部を会社その他の法人に委託することができる)(道路交通法)

この文章に関して言えば、ask自体には、「委託する」の意味合いはないのですが、to以下の「to handle」(処理する、取り扱う)を加えて「~することを求める」=「委託する」という表現になっています。Requestも同様な使い方をします。

ところで、これらの単語の意味として「委任」、「委託」に他に「付託」とか「負託」と書かれていることがあります。あらためて国語辞典で意味を確認してみると、例えば、「委任=仕事などを、他人にまかせること。委託すること」、「負託=責任を持たせて、任せること」、「付託=物事の処置などを任せること」とあり、「任せる」という点では共通しています。

「以上、entrust(entrustment)による委託と受託の表現と「entrust」を使用する以外の「委託」の表現と「委託」に準じた表現を持つ単語についてざっと大まかにみてみました。

契約書翻訳の視点からとりあえず知っておくと便利な事柄を覚え書きの感じで書いたものです。なを、内容を参考にされる場合は、辞書・専門書をご確認の上、ご自身の責任でお願いします。


参考図書:

  • 法律用語辞典(有斐閣)
  • デジタル大辞泉(小学館)
  • 法律英単語(自由国民社)
  • ランダムハウス英和大辞典(小学館)
  • カレッジライトハウス和英辞典(研究社)
  • 日本法令外国語訳データベースシステム他
  • 著作権法第13条1号から4号(法律文の引用について)