英文契約書の単語・用語「従う」または「遵守する・順守する・守る」(その2)

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前回、英文契約書で「従う」または「遵守する・順守する・守る」という意味に対応する用語・単語のいくつかについて見てみました。前回の述べたことですが、ここで取り上げるのは、「決めたことや規則に従う」とい意味です。「遵守する・順守する」を除き、日常的には「従う」や「守る」は同じ意味にとして使用される場合ほとんどかもしれません。翻訳の場合は、どのような言葉を使うか文脈的に厳密に解釈する必要がある場合もあり、いずれにも解釈して問題がないか、いずれにも解釈できることもあります。

前回は、「従う」についての表現を中心にこれに対応する以下の用語・単語「obey:(命令・法律などに)従う、observe(命令・法律などに)従うfollow:「(忠告・命令・慣習などに)従う」

comply with:「(命令・規則・要求などに)従う」、abide by :「(法律・協定。規則などに)従う」、be in accordance with:(~に従う)、conform to:「(慣習・しきたりなど)従う」について見てみました。これらはいずれも、「従う」または「遵守する・順守する・守る」としてそのまま使えるものです。今回は、前回とりあげなかった用語・単語や文脈的に「従う」として訳せる言葉について作成した例文を通して少し触れてみます。

1.  前回、とりあげなかったいくつかの用語・単語の例

If you do not accept our instruction specified in the separate agreement, you may not renew the basic agreement. (別途規約に定める当社の指示に従わない場合には、基本契約を更新することはできない)  指示に従わない=「を受諾しない・に同意しない・を受け入れないなどでも可」。

The employees shall accept the workplace policies and procedures, instruction and supervising as well as the existing internally or externally code of conduct. (従業員は、職場の方針と手順、指示と監督、および既存の社内または社外の行動規範に従うものとする。)

「accept」は、主として受け取る、(申し出などを)受諾する・引き受ける、~に応じるなどとされる場合がありますが、英~日の翻訳では文脈的に「従う」とすることもあります。

If Party X fails to perform its obligations under this Agreement, Party Y may terminate this Agreement pursuant to the termination clause hereof. (当事者Xが本契約に基づく義務を履行できない場合、当事者Yは本契約の解除条項に従って本契約を解除できる)

The Contractor shall reimburse the expenses borne by the Customer to the Customer the pursuant to the provision under this Agreement. (契約者は、本契約の規定に従い、お客様が負担した費用をお客様に弁済する。)

「pursuant to」は、契約書や法律文の常套句です。良く知られているように「従う」の他に「~に応じて」、「~により」などとされる場合もあります。例えば、上記の例文も文脈的に「契約者は、本契約の規定により」とする場合もあります。

 

2.文脈的に「従う」として訳せる言葉の例:

「subject」を使った例

This Agreement is subject to all applicable federal, state and local laws.

本契約は、適用される連邦法、州法および地域法に従います。

「subject」のその他の用法については、

The prices of Products shall be reviewed periodically in accordance with prevailing market conditions and are subject to change or withdrawal without any prior notification at the sole discretion of manufacture.(製品の価格は、一般的な市場の状態に従って定期的に再検討を行い、事前の通告なしに、メーカーの単独の裁量により、変更撤回されることがある。

「subject」そのものは様々な意味に使われ、なじみのあるところでは、「主題・事柄・(書物や作品などの)標題」ですが、「be subject to」は文脈的に「~に従って」とされることがあります。ブログの内容とは外れますが、The specifications of this Product are subject to change without prior notice.(本製品の仕様は予告なく変更される場合があります。)これなどは日常的によくみかけます。

「submit」を使った例

The parties hereto shall submit any dispute arising from this Agreement to the exclusive jurisdiction of the Tokyo District Court of Japan.(本契約の当事者は、本契約に起因する紛争については日本の東京地方裁判所の専属管轄権に従う。)「submit」には「~に服従する」の意味もあり。文脈的に「~に従う」としてみました。「専属管轄権に服する」などとすることもあります。

例文は契約書翻訳の観点から当方にて作成したものですが、内容を参考にされる場合は、辞書・専門書をご確認の上、ご自身の責任でお願いします。

参考図書:

ランダムハウス英和大辞典(小学館)

ビジネス法律英語辞典(日経文庫)

カレッジライトハウス英和辞典(研究社)

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