英文契約書の単語・用語 「not only ~ but also ~」について

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1. not only ~ but also ~とは

not only A but also B(AだけではなくBも)は、多分、中学で習った構文です。口語ではこの表現はあまり使われません。基本的には、「どちらも~である」という表現ですので、話し言葉では、「AもBも~である」という様な表現になると思います。

Ted can speak English and Japanese.(テッドは英語と日本語を話すことができる)でなく、Ted can speak not only English but also Japanese.の「英語ばかりでなく日本語も話すことができる」というような、あえて回りくどい言い方をして、but also以下を強調し、「テッドは日本語も話せるんだよ。」という、最も相手に伝えたいことを文章の後ろの方に置く、いわゆる倒置の表現を使って強調しています。

 

not only A but alsoには、いろいろなバリエーションがあります。まずは、簡単な文章で確認してみましょう。

(前半部のnot onlyが省略されたり、後半部のbut (also)が省略されたりする場合があります。)

以下に作成した例文のように、基本的には、Aが名詞ならBも名詞、形容詞なら形容詞、句/節の場合なら句/節が入ります。AとBの部分には文法的に「同等・対等」なものが入ります。

例文

He is not only shy but also bashful.(彼は内気であるばかりでなく恥ずかしがりやだ。)

He keeps not only a cat, but also a dog.(彼は猫だけでなく犬も飼っている。)

That’s not only big, but also heavy.(それは大きいだけでなく重い。)

Not only you but also me can benefit from the service.(きみだけでなく私もそのサービスから利益を得られる。)

He not only arrived late but also forgot to bring his books.(彼は遅れてきただけでなく、本を持ってくるのを忘れた。)

Traveling in Tohoku is interesting not only in summer but also in winter.(東北を旅することは夏だけでなく冬も面白い。)

Workers shall, not only observe matters necessary for preventing industrial accidents, but also endeavor to cooperate in the measures pertaining to prevention of industrial accidents conducted by employers or other said parties.(労働者は、労働災害を防止するため必要な事項を守るほか、事業者その他の関係者が実施する労働災害の防止に関する措置に協力するように努めなければならない。)労働安全衛生法

2. 英文契約書での用例

not only ~ but also ~ の構文は、英文契約書でも使用されることがあります。英文契約書で用例については、以下に例文を作成しました。

Party A shall endeavor not only to avoid falling short of the standards specified by the specifications but also to further improve the level of its standards.(大学は、基準より低下した状態にならないようにすることはもとより、その水準の向上を図ることに努めなければならない。)

In the sending of the document prescribed in this Agreement, not only the original, but also a copy of the document is acceptable considering any other circumstances.(本契約に規定する文書の送付は、原本のほか、その他の事情を考慮して、文書のコピーも認めることができる。)

Employees shall, not only observe matters necessary for preventing industrial accidents, but also endeavor to cooperate in the measures pertaining to prevention of industrial accidents conducted by this company.(従業員は、労働災害を防止するため必要な事項を守るほか、本会社が実施する労働災害の防止に関する措置に協力するように努めなければならない。)

上記の例文は、以下の様に書き換えられます。

Employees shall observe matters necessary for preventing industrial accidents and endeavor to cooperate in the measures pertaining to prevention of industrial accidents conducted by this company.

参考図書

ランダムハウス英和大辞典(小学館)

研究社新英和辞典(研究社)他

(写真:ドイツ バイエルン ケーニヒス湖)

英文契約書の単語・用語 「~がない」の表現について

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日常生活でも「~がない」という表現が使われます。国語辞典を見ると「~がない」といってもさまざまな「~がない」があります。例えば、「お金がない:~を持っていない:所有してない」、「それを見たことがない:経験がない」、「彼は家にいない:不在です」、「そのような事実はない:存在しない」等、これら以外にもさまざまな意味あります。(日本語は奥が深い!)

当然ですが、「~がない」という表現を英語に置き換える場合、上記の例では、I have no money (お金がない)、I have never seen it (それを見たことがない)、He is not here.(彼はいない)等で表現されます。もちろん「~がない」=「No」を文頭や文中につけて表現することもありますが、この用例も含めて、英文契約書の中で使われる「~がない」という表現について良く目にするもの、知っておいて損がないいくつかの単語・用語・表現を*作成した例文を通して見てみます。特に「 物事が存在しない」という意味を中心に、契約書翻訳の観点から見ています。(*一部除く)

1.「No」または「None」を使用した例

None of the parties may assign or transfer any of its or their rights under this Agreement. (いずれの当事者も、本契約に基づく当事者、もしくは各当事者の権利を譲渡または移転することはできない。)

No previous agreements, arrangements or contracts shall apply to this Agreement. (いかなる以前の合意、取り決めまたは契約も本契約には適用されない)

2.「there is no」を使用した例

The Contractor shall assure that there is no impact to business operations if such interruption occurs. (請負業者は、そのような中断が発生した場合でも、事業運営に影響がないことを保証する。)

3.「be free from」を使用した例

「be free from」は、以前にも売買契約書を例にとって「英文契約書の用語、構文(その17)」で取り上げたことがあります。

The Products to be delivered hereunder shall  be free from defects and faulty materials and correspond with any sample and conform to any description, instructions, specifications, and other conditions agreed between the parties. (本契約に基づき引き渡される製品は、瑕疵がなく、材料にも欠陥がなく、サンプルと一致し、説明書、指示書、仕様書および両当事者間で合意したその他の条件に準拠する(抄訳))契約書に限らず、技術文書でも良くみられます。

The finished surface shall be free from any burr, scratch, and damage. (仕上げ面には、バリ、引っかき傷、損傷がないものとする)

4.「in the absence of」を使用した例

In the absence of a choice of law under the preceding Article, the formation and effect of a juridical act shall be governed by the law of the place with which the act is most closely connected at the time of the act. (前条の規定による選択がないときは、法律行為の成立及び効力は、当該法律行為の当時において当該法律行為に最も密接な関係がある地の法による。)(法令第8条

5.「not exist」を使用した例

Any obligation of the Seller of this Agreement to inspect the quality of the transferred products to third party from the Buyer does not exist. (本契約の売主には買主から第三者に譲渡された製品の品質を検査する義務はない。)

Nothing in」を使用した例

Nothing in this Agreement shall be construed to create any other relationship between the parties hereto. (本契約のいかなる内容も、「両当事者」間にいかなるその他の関係を構築することはない。)この文章は、定型文として良く目にします。

いずれも英文契約書に限らず、経験上、「~がない」の表現が必要な英文のドラフティングを行うときに覚えておくと以外に便利です。なを、「~がない」については、上記以外にさまざまな単語、用語、表現があります。それらはまた別の機会に見てみたいとおもいます。

参考図書:

大辞泉 (小学館)

ランダムハウス英和大辞典(小学館)他

(写真はベトナムハロン湾)

英文契約書の単語・用語 デファクト(de facto)「事実上の」について

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英文契約書では、ラテン語やフランス語などからの用語が使用されていることがあります。

これまでにも、英文契約書の用語、構文からbona fide」、「Force Majeure」、「inter alia」、「per annum」、「pari passu 等を契約書翻訳の観点からとりあげています。今回は、このデファクト(de facto)について見てみます。

De Facto(デファクト)とは

De Facto(デファクト)とは、ラテン語由来の言葉であり、「事実上の」という意味を表しています。De Facto(デファクト)という言葉に関連して、*デファクト・スタンダード(De Facto Standard)という言葉があります。*デファクト・スタンダード(De Facto Standard)とは、ISO、DIN、JISなどの標準化機関等が定めた規格ではなく、市場における競争や広く採用された「結果として事実上標準化した基準」を指します。

デファクト・スタンダードは、一般に「事実上の標準」と翻訳されています。

De Facto(デファクト)の対義語

デファクト(de facto)の対義語(意味が反対となる語や、意味が対照的になっている語はDe jure(デジュール)です。これには「法律上の」「規則上の」という意味があります。

なを、デジュール・スタンダード(De Jure Standard)と呼ばれる規格があり、これは公的な標準化機関で合議制により認証された規格です。

De FactoとDe Jure両方の言葉を使って、その違いを見てみます。

A distinction must be made between what is found de jure and de facto.

(法律上の内容と事実を区別する必要があります。)

例:

de facto standard(デファクト・スタンダード) – 事実上の標準、

対義語は、de jure standard(デ・ジュリ・スタンダード) – 法律上の標準、規則上の標準

de facto monopoly(デ・ファクト・モノポリ) – 事実上の市場独占

de facto husband / wife(事実上の夫 / 妻) – 内縁関係の配偶者

de facto state of marriage  – 事実上の婚姻関係

The person who should be given compensation for bereaved family shall be the spouse of a worker (including the person who has de facto marital relations with him or her even without a marriage notification; hereinafter the same rule shall apply).

(遺族補償を受けるべき者は、労働者の配偶者(婚姻の届出をしなくとも事実上婚姻と同様の関係にある者を含む。以下同じ。)とする。)(労働基準法施行規則

The country was de facto divided between two states.

(その国は事実上2つの州に分かれていた。)

XXX is de facto official language in YYY.

(YYYでは、XXXが事実上の公用語です。)

XXX is de facto bankrupt.

(XXXは、事実上の破綻状態です。)

with the death of his father, he became the de facto head of the family

(父の死に伴い、彼が一家の事実上の長となった。)

デファクトという表現ではなじみがないですが、「事実上の」という表現は、日常でも多く使用されています。

平易な書き方

de factoを使わなくても、例えば、effective、practical、factualやその他の言葉を使い「事実上の」という表現を表すことができます。

例1)if either party becomes de facto company liquidation;

(いずれかの当事者が事実上の会社整理となったとき…)

上の文章は以下の様に書き換えられます。

if either party effectively becomes company liquidation;

例2)He is the de facto manager.

(彼が事実上の管理者です。)

上の文章は以下の様に書き換えられます。

He is the manager in all.  He is the virtual manager. He is the manager as a matter of practice.

参考図書:

デファクト・スタンダード」2021年5月4日 (火) 12:26『ウィキペディア日本語版』

対義語」2021年4月17日 (土) 15:32『ウィキペディア日本語版』

法律英単語ハンドブック(自由国民社)

Japanese Law Translation

The New Oxford Dictionary of English (Oxford University Press)

Merriam-Webster (Webster)

英文契約書の単語・用語  日本語の「被~」という表現について

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契約書・法律文書に限らず、一般的な文章でも「被~」という表現が使われています。何気なく使っていますが、なじみがない言葉だと、「被~」という表現を目にしたとき、「はてこの意味は・・・・」と一瞬考えてしまう経験があります。「被」という言葉の意味を国語辞典で調べてみると、色々な意味があります。今回とりあげるのは、「被」の意味のなかでも、「他人から、行為や恩恵などを受ける」、「行為を表す漢語に付いて、他から…される、他からその行為をこうむる」の意味の部分です。例えば、「被害」をいう言葉があります。意味としては、「損害や危害をこうむること」、「受けた損害や危害」とあります。当然ですが、被害を受けた人は、「被害者」です。

日本語だと「他から…される、他からその行為をこうむる」人や対象を表す場合、単純に「被」に後に行為の対象となる事柄をくわえるだけですが(「被~」を使わない場合、使う必要がない場合も多くあります。なを、契約書・法律文書では「被~」の表現が多くみられます)。英語の場合はどうでしょうか。契約書翻訳の観点から見てみます。

1. 単純に「被~」と英訳できない

契約書翻訳も含めて「被~」を日本語から英語にする場合に「被+~」とするわけにはいきません。

英語は、日本語の様に、ひとつひとつの文字が意味を表す表意文字でないため、文字自体にidea(意図、考え方)がありません。そのため、日本語の「被」にあたる英単語を付けて、「~を受ける、~される、~こうむる」の意味を持たせることはできません。

英語では、日本語のさまざまな「被+~」の言葉のそれぞれ対応する英単語・句があります。例えば、動詞の場合、過去分詞のみ、過去分詞+人またはもの、あるいは、ある言葉の後ろに「ee」を付けて、「被…」とする場合もあります。

上記の例には、下記に表にあるように被保険者(insured、assured)、被害者(injured parson)、被許諾者(grantee、licensee)等があります。

以下にいくつかの例を挙げてみます。なを、「被+~」に対応する英単語には以下に記載した単語以外のものもあります。

被裏書人 indorsee、endorsee
被害 harm、injury
被開示者 disclosee
被害者 Injured、injured parson、 victim
被拐取者 abducted person
被害届 incident report
比較法 comparative jurisprudence、comparative law
被疑者 suspect
被許諾者 Grantee、 licensee
被拘禁者 detained person
被後見 wardship
被後見人 ward
被告 defendant
被告事件 criminal case
被告自身の証言 defendant’s own testimony
被告人 criminal defendant
被収容者 inmate
被上訴人 respondent、appellee
被選択権者 optionor
被相続人 *decedent
被担保債権 claim secured
被保険者 insured、assured
被保証人 guarantee
被用者 employee

*「被」が付いても、被相続人は、「相続人が相続によって承継する財産や権利義務のもとの所有者」で、相続人(heir)は、「被相続人の財産上の地位を承継する人」

The child of a decedent shall be an heir.「被相続人の子は、相続人となる。」(民法

2. 「被~」の言葉の意味を把握した上で、適切な英単語やフレーズを作成する

上記のように、多くは、辞書等に記載がありますが、そうでない場合も多く、また定訳がない場合もあります。その場合、その「被~」の言葉の意味を把握した上で、適切な英単語やフレーズを作成する必要があります。

 

以下に上記の例を使った例文を作成してみました。

The act or omission of one insured will not invalidate the policy as to the other insured.

(いずれかの被保険者の作為または不作為によって他の被保険者に対する証券の効力が失われない。)

A copy of the insured amounts and the receipt of payment shall be provided each year.

(保険総額と領収書のコピーは、毎年、提供されるものとする。)

Premiums are determined in accordance with an insured person’s salary.(保険料は、被保険者の給与に応じて決定されます。)

In the Agreement, it shall clarify where responsibility lies before deciding the final repair cost to be paid to the insured.(契約では、被保険者に支払う最終的な修理費用を決定する前に、責任がどこにあるかを明確にするものとします。)

用例、例文は契約書翻訳の観点から当方にて作成したものですが、内容を参考にされる場合は、辞書・専門書をご確認の上、ご自身の責任でお願いします。

参考図書

大辞泉(小学館)

法律英単語(自由国民社)

ランダムハウス英和大辞典

ビジネス法律英語辞典(日経文庫)

日本法令英訳プロジェクト

 

 

 

英文契約書の単語・用語 entitle、entitlementおよびこれらの類語・類似表現

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単語「entitle」は、英文契約書や法律文書の欠かせない定番の単語の1つです。さまざまな場面で使用されます。契約書翻訳の観点から概説します。

1. entitle

「権利を与える、資格を与える、〜に題名をつける」

Licensor is entitled to ~(ライセンサーは~の資格を与えられている・ライセンサーは~する権利がある)

This Agreement shall entitle Reseller to purchase Products at the discounted prices.(本契約は、再販業者が割引価格により製品を購入する権利を与えるものとします。)

entitleの名詞形は「entitlement」(権利・資格(付与))です。

2. 類語・類似表現

類語・類似表現には以下のようなものがあります。これらは本来、それぞれ文脈に応じた使い分けが必要ですが、以下に作成した例文では、結果的に「何かの権利・資格が与えられている=何かの権利・資格を有している」というニュアンスになります。英文契約書で使われる代表的な意味とそれに合わせて作成した例文(*を除く)を通して、これらについての用法をざっと見てみます。また、ここで書いた各単語の意味は契約書という観点からかなりしぼってあります。これ以外にも多くの意味と用法があります。

a)  give

「権限を付与する・権限を与える」

例えばgive somebody authority to doの形で、The managing committee gives the person in charge the authority to supervise the subcontractors.(運営委員会は、担当者に下請け業者を監督する権限を与える)

b)  vest

「(権利・財産)与える、授ける」

vest someone with authority((人に)権限を付与する)の形で、例えば、

The board of directors may vest the employees with the award of superior performance. (取締役会は、優れた業績に対する賞を従業員に与えることがきる。)

またはvest in(帰属する)の形で、例えばThe ownership of the properties shall be vested in the successor.(物件の所有権は後継者に帰属する。)

*The receipts from work shall vest in the national treasury. (作業の実施による収入は、国庫に帰属する。)http://www.japaneselawtranslation.go.jp/kwic/?re=01

b.  confer

「~を授与する」

confer something on someoneの形で、Nothing in this Agreement, express or implied, shall not be intended to confer on any third party any right under this Agreement.(本契約のいかなる条項も、明示・黙示を問わず、本契約に基づく権利を第三者に与えることを意図しない。)なお、本例文は、強調のため文章を倒置してあります。

c. bestow

「~を授ける、与える、贈る」

例えばbestow something on someoneの形で

The committee shall bestow the full authority on him.(委員会は彼に完全な権限を与える。)

私見ですが、「bestow」は実際の翻訳作業では、正直あまりお目にかかることはありません。

c)  allow

「許す、認める」

This Agreement shall not allow the Buyer to establish the right of lien to the products prior to the payment thereto. (本契約は、購入者が製品の支払い前に製品に対する抵当権を設定することを許可しない。)

「entitle」を使って上の文章と同じような感じの意味を持つ例文を作ってみました。

This Agreement shall not entitle the Buyer to establish the right of lien to the products prior to the payment thereto. (本契約は、購入者が製品の支払い前に製品に対する抵当権を設定する権利を与えない。)

上記の例文を購入者側の立場から見た場合は、以下の様な例文になります。

The Buyer shall not be entitled to establish the right of lien to the products prior to the payment thereto. (購入者は、製品への支払い前に製品に対する抵当権を設定する権利を与えられていない。)

Only one (1) entry is allowed per person during the contest period.(コンテスト期間中、出品作品は1人につき1点のみとします。)

d)  permit

「許す、許可する、許す、可能にする」名詞形は「permission」

以下の例文は、同意を与えて「許す、許可する」の意味。

The Licenser shall not permit the Licensee to use its trademark without the prior written permission of the Licenser.(ライセンサーは、ライセンサーの書面による事前の許可なしに、ライセンシーがその商標を使用することを許可しない。)

e)  authorize

「正式に許可する、認可する」名詞形は「authorization」

Distributor is authorized to sell the products under this Agreement. (ディストリビューターは、本契約に基づき製品を販売することを許可されています。)

f)  grant

「許可する、承諾する」名詞形もgrant「許可,認可」

辞書を見ると「願いにより許可する」という意味もあり、英文契約書でも、そのようなニュアンスの例文を作ってみました。

Upon a request of the Licensee, the Licenser may grant the Licensee to use such license after payment of the license fee. (ライセンシーの求めに応じ、ライセンサーは、ライセンス料の支払い後に当該ライセンスの使用を許可することができる。)

すでに述べたように、実際には、上記いずれの言葉もそれぞれの状況に応じた使い分けが必要ですが、例文的には結果的に「何かの権利または資格が与えられている=何かの権利または資格を有している」という解釈で作成しました(いささかとってつけたような感じはありますが)。上記の言葉の他にも様々な表現やフレーズがあります。これらについては、別の機会を設けたいと思います。

参考図書:

ランダムハウス英和大辞典(小学館)

ビジネス法律英語辞典(日経文庫)

How to Create Effective Sentences in English (文英堂)

The New Oxford New Dictionary of English (Oxford University Press)

日本法令外国語訳データベースシステム

英文契約書の用語・単語 defect・faultについて

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今回は、defectについてです。英文契約書でもいろいろな場面で使われますが、典型的な一例としては、引き渡された商品または提供されたサービスに瑕疵があった場合、商品を受け取った、またはサービスを提供された当事者がどのような救済や補償を受けることができるか、という文脈で使用されます。「瑕疵」という言葉を改めて辞書で確認すると、「きず、欠点、あやまち」「法律で、通常あるべき品質を欠いていること。また、意思表示に詐欺あるいは強迫などの事由があること。」と示されています。英和辞典でも、主な意味は、「欠点、欠陥、弱点」等となっています。

ここでは、defectに関連して商品の保証、瑕疵の検査、瑕疵の取り扱い、瑕疵に起因する救済や補償の方法、その他法律的な部分に踏み込むことはせず、英文契約書で単語defectがどのように使われているかのみに絞り、作成した例文を通して使い方を簡単に見てみます。

1.  defectの用例

If the Purchaser has found a defect after the acceptance inspection, the Purchaser shall promptly report the Buyer of such defect in writing and the Buyer shall promptly provide the Purchaser with the replacement. (受領検査の後、買主が瑕疵を発見した場合、買主は、かかる瑕疵につき書面により売主に速やかに報告を行い、売主は、速やかに買主に代替品を提供する。

If the Purchaser finds a defect at a later date, the Purchaser shall also report this without delay.(買主が、後日、瑕疵を見つけた場合、買主は、遅滞なく、このことを報告する。)

上記の例文では、「物品の瑕疵」についての内容ですが、「物品の瑕疵以外の瑕疵」については、以下のような感じになります。

Systemic Failure means, in relation to the Equipment, a material defect which:

(システムの不具合とは、装置に関連して、以下の重大な瑕疵を意味する。)

Program Error means a reproducible defect or combination of defects in the Software that results in a failure of the Software.(プログラムエラーとは、ソフトウェアの不具合をもたらしたソフトウェアの再現可能な瑕疵または瑕疵の組み合わせを意味する。)

2. 他の語との組み合わせ

defectを使用した例として、「英文契約書の用語、構文(その17)でとりあげた「free from defects」などがあります。

The Products shall be free from defects in workmanship and material. (製品は、仕上がりと材料に瑕疵がないものとする。)

その他、defectと他の語を組み合わせた用語は、主なもので、形容詞も含めるとdefect in title(権原の瑕疵)、defect liability(欠陥責任)、defective declaration of intention(瑕疵のある意思表示)、defective title(瑕疵のある権限)

3. defectの類語

defectの類語には、「fault」があります。faultの主な意味は、(過失の)責任、誤り、過失、違反、欠点、欠陥、瑕疵、故障等です。defectの類語ですが、経験的に多くは、以下に作成した例文のような使われ方をします。

The information that is at the time of disclosure already in the public domain or becomes available from public sources through no fault of the Recipient.(開示時点においてすでに公知である情報、または「受領当事者」の過失によることなしに、一般の情報源から利用可能になった情報。)

その他、defectに相当する語として、failure(不履行、故障、不具合等)、malfunction(故障、不具合等)等があります。

これらの単語は、英文契約書に限らず、当方で扱っている技術書・マニュアル等でもいわば常連の単語です。最初に述べたようにdefect・faultが関連する分野は、多岐にわたります。ブログ程度は収まらない内容を含んでいますが、機会があれば、それらの表面だけでも少しずつ眺めてみたいと思います。

参考図書:

研究社新英和大辞典(第5版)

ビジネス法律英語辞典(日経文庫)

法律英単語(自由国民社)

英文契約書の用語・単語  unlessについて

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unless自体は英文契約書で使われるだけの単語というわけではありませんが、他の語と組み合わされて成句を作り、独特の使われ方をする場合があります。unlessは「使いづらい、わかりにくい」と感じている方も多いと思いますが、ネイティブが非常によく使う接続詞です。

1. unlessの意味

接続詞としての意味:…でない限り、もし…でなければ、〜を除いては、ただし〜の場合を除く

通常 if…notと言い換えられますが、unlessで始まる成句の内容が実際に起こる確率の方が低い場合が多く、「起こるとは思わなかった事が発生した場合には」という表現になっています。

2. unlessの成句

英文契約書で、よく目にする成句をいくつか取り上げてみました。

unless any objection is reserved(ただし、異議をとどめたときは、この限りでない。)

unless any other intention is manifested (別段の意思表示がないときは)

unless the context requires otherwise(文脈上他の意味に解すべき場合を除き)等があります。

その他、otherwiseと一緒になり、以下のように使用されます。

unless otherwise indicated above (上記において別段の指示がある場合を除き)

unless otherwise noted(特に規定する場合を除く)

unless otherwise stated (特に明記される場合を除き)

unless otherwise terminated(その他解除される場合を除き)

unless otherwise provided for in this Agreement(本契約に別段の定めがある場合を除き)

unless otherwise specifically set out in the Agreement(本契約にその他特段に規定される場合を除き)

unless otherwise agreed in writing (書面により別段の同意がある場合を除き)

unless otherwise agreed by the parties hereto (その他本契約の当事者が合意する場合を除き)

この他にも状況に応じた多くの表現があります。

以下は、unlessを使用した例文です。

Payment shall be made in US Dollars unless otherwise stated in the Purchase Order (注文書にその他記載する場合を除き、支払いは米ドルとする)

Unless otherwise provided for by law, shareholders shall have the stock purchase right.(株主は、法律の定める場合を除いて、新株について引受権を有する。

The residual assets in the case of the dissolution of a Financial Instruments Membership Corporation shall be distributed equally among its members, unless otherwise stipulated by the articles of incorporation or resolution of a general meeting.(金融商品会員制法人が解散した場合における残余財産は、定款又は総会の決議により別に定める場合のほか、会員に平等に分配しなければならない。)(金融商品取引法

 

3. unlessの類似表現

「except〜(〜を除いて)」、「except that〜(〜の場合を除いて)」、「except as」、「if〜not(もし〜でなければ)」等がunlessの代わりに使用されることがあります。

Except as set forth in Schedule1(附則1に規定される場合を除き)

Except as otherwise provided herein, neither party may unilaterally terminate this Agreement.(本契約によりその他特段の定めがある場合を除き、いずれの当事者も、一方的に、本契約を解除することはできない。)

Except as expressly permitted under this Agreement(本契約において明示的に許可される場合を除き)

Except as otherwise provided for in the Article of Incorporation,(定款に別段の定めのある場合を除き)

A request for issuance of a warrant or examination of a witness shall be accompanied with the document set forth in item (iii) of Article 2; except that this shall not apply when a treaty provides otherwise.

(令状又は証人尋問の請求は、第二条第三号の書面を提出して、しなければならない。ただし、条約に別段の定めがある場合には、この限りでない。)(国際捜査共助等に関する法律

The following claims shall be extinguished if not exercised for one year: (次に掲げる債権は、一年間行使しないときは、消滅する。)

This function can be disabled if not required.(この機能を使用しない場合は無効にできます。)

契約書翻訳の観点から「unless」とその類語について簡単に見てみましたが、最後に最近、たまたまツイッターで送られて来た、インドのラジニーシ(Rajneesh)(1931-1990)の言葉で「unless」について終わります。
The heart is like a flower. Unless it is open, it cannot release its fragrance into the world! 直訳的に読むと(心は花の様です。開いていない場合、その香りを世界に放つことはできません!)ですが、実際にはこんな感じになると思います。(心は花の様!開いてこそ、その香りは世界に解き放されます!

参考図書:

ランダムハウス英和大辞典(小学館)

法律英単語(自由国民社)

ビジネス法律英語辞典(日経文庫)

日本法令英訳プロジェクト

 

英文契約書の単語・用語 due、 due to

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単語「due」は、英文契約書に限らず、様々な分野で使用され、様々な意味を持ちます。そのため、契約書では様々に訳されるため、ある意味つかみどころのない言葉です。「due」の用法についてもその語源も含めて様々な解説がされていますが、今回は英文契約書における「due」の使われ方のうち、とりあえず知っておけば便利な使い方に絞って、主なものを契約書翻訳の観点から作成した例文を通して見てみます。

1. dueの語源

「due」の語源については、様々な説明があります。

とりあえず、Oxford Dictionary of Englishにある「due」の語源(Origin)を見ると、「Middle English (in the sense of “payable”): from Old French deu “owed”, based on Latin debitus “owed”, from debere “owe”とあります。

「中世英語(「支払うべき」の意味):ラテン語のdebitus「owed(:支払い義務を負う/(義務を)負った)」に基づき、debere「owe(支払い義務を負う/義務を)負っている)」に由来する古期フランス語のdeu「owed(支払い義務がある/(義務を)負った)」です。

さらに意味を確認してみると、以下のように記載されています。

形容詞としての用法

(1) Expected at or planned for at a certain time. Of a payment required at a certain time. (特定の時期に予定され、または計画されていること。特定の時期に必要される支払い。)

(2) of a proper quality or extent. Adequate(適切な品質または範囲。適切。) driving without due care and attention. (細心の注意(相当な配慮と注意)を払わずに運転する。)

名詞としての用法

(1) one’s dueの場合。a person’s right(人が持つ権利)

(2) duesの場合。an obligatory payment(義務的としてなすべき支払い)、a fee(料金)

2. dueの主な意味

様々な意味を持ちますが、ここではあくまでも英文契約書で使われることが多い「due」の意味を中心に見てみます。(上記のように「due」は、形容詞、名詞、副詞として使われますが、ここでは文法に関する説明は行いません。実務的にはこのようなものであると理解すれば十分です。なを、以下の用例以外にも様々な意味があります。)

a.「当然支払われるべき」、「支払期日が到来した」、「満期の」等

b.「正当な、」、「当然の」、「相応の」等

c.「~のために、~に帰すべき:「due to」として」

d.「当然与えられるべき「due toまたはdue」として」

e.「~する予定で」

3. 英文契約書で見られるdueを使った用語のいくつかの例

すでに述べたように様々な意味と用法があります。due単体でも使用されますが、多くの場合、他の単語と組み合わされて、「句= phrase」として使用されます。*例えば、以下のような語句があります。

due act 正当な行為:legitimate act
due care 相当な注意:a good deal of care, (all) reasonable care, due attention
due date 支払期日、満期日:the date on which something falls due, especially the payment of a bill.(何かが期日を迎える日付、特に請求書の支払い。)
due diligence 相当な注意:reasonable steps taken by a person in order to avoid committing an offence, especially in buying or selling something.(特に何かを売買する際に、犯罪を犯さないようにするために人がとる合理的な措置)
due process (of laws) 法の適正手続き、適正な手続き:fair treatment through the normal judicial system通常の司法制度による公正な扱い)
due reason 正当な理由

*上記以外にも、適宜、他の語と組み合わされ、または単体で使用される場合が多くあります。これらも含めいずれも文脈・内容により適用される意味が異なります。契約書等で長い条文の中で使われている場合など、文脈・内容を把握して意味を確定します。

4. dueを使った例文

以下に、主に上記の「due」の用例を使った例文を作成してみました。

The train is due in Tokyo at 6:25 p.m. (列車は午後6時25分に東京に到着の予定)

He is due to graduate in June. (6月に卒業することになっている)

This accident was due to a system error. (事故はシステムエラーに起因した。)

the money due to him. (彼に支払うべき金)

Any amounts which are not paid within the due date will be subject to interest of one percent (1%) per month, which will be immediately due and payable.(支払期日までに支払われない額は、1ヵ月当たり1%の利子が科せられ、即時に支払期日が到来する。)

Prior to the due date for filing by the Company of any Tax return, report or other filing that relates to a tax period beginning before the Closing Date and ending after the Closing Date…. (会社が、クロージング日前から開始し、クロージング日後に終了する課税期間に関連する納税申告、報告書、またはその他の提出物の提出期日に先立ち….)

There are no Tax liens on any of the assets of the Company, except for liens for Taxes not yet due.まだ期限が到来していない税に対する先取特権を除き、会社の資産のいずれに関しても、税の先取特権は存在しない。

The Company shall be timely paid over such taxes or other amounts to the appropriate governmental authorities to the extent due and payable.(会社は、適時、かかる税または他の額を納付すべき範囲まで当該政府機関へ支払うものとする)

 

Each party agrees to exercise due care in protecting the Confidential Information from unauthorized use and disclosure. (各当事者は、不正使用および不正開示から機密情報を保護するための相当な注意を払うことに同意する。)

 

Some of the key issues already identified to be investigated further during the due diligence process exist. (デューデリジェンスプロセス(適性評価)中にさらに調査する必要があるとすでに特定されている重要な問題がある。

5. その他のいくつかの用例

become due (fall due) (満期になる)

the honor due (to) him(彼に与えられるべき名誉)尊敬・称賛などが〉(人に)当然与えられるべき((to …))toが省かれる場合がある。

以下は、「当然の」、「正当な」、「それ相当の」、「十分な」の意味です。

with (all) due respect(十分に敬意を表して)

in due form(正式に)

in due time(そのうちに)

会費、組合費、料金、手数料、税金を表して(通例~s)

club dues(クラブ会費)

harbor dues(入港税)

ざっと見ただけですが、英文契約書に記載されているか、否かにかかわわらず、単語「due」の使い方は、難しいものがあります。理由のひとつは、冒頭に述べたように他の単語と組み合わされ場合、それが使われた文脈により、日本語の訳が変わるためです。ネイティブからすれば「due」はあくまでも「due」です。単語「due」慣れるためには、やはり多くの文例に接する必要があるようです。

 

参考図書

The New Oxford Dictionary of English (Oxford University Press)

Business English (BARRONS)

ランダムハウス英和大辞典(小学館)

法律英単語(自由国民社)

英文契約書の用語・単語 「base」と「basis」

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契約書翻訳の観点から、経験上、よく目にしたり、よく使われたり、または知っておいて損はないと思われる英文契約書でよく使われる単語と用語を取り上げています。

英文を読んでいると「~ basis」、または「based on」等という単語をよく見かけます。これらの用語は、英文契約書に限らず、日常的にさまざまな分野で使用されます。この用語に使い方を覚えると、英文契約書に限らず、自分で英文を書いたり読んだりするのに意外と便利です。ここでは、英文契約書で散見されるフレーズを中心にいくつかの例文を通してこれらの使い方を見ていきます。まず、元となる単語「base」と「basis」の意味を振り返ってみます。

1. 「base」と「basis」の主な意味

基本的に「base」と「basis」の主な意味は同じです。主な意味としては「*the lowest part or edge of something, especially the part on which it rests or is supported」 (*Oxford Dictionary of English)

すなわち、「何かの最下部もしくは端、特にそれが置かれている、もしくは支えられている部分」であり、「基礎」、「元になるもの」であり、「base」は、「ベース」として日本語で使われます。なお、今回は、その中でも、「basis」について見てみます。

2. 「on the basis of」が使われたフレーズのいくつか

On the basis of ~(~に基づいて)およびOn a(n) basis(基準として)は、個々の状況に合わせて挿入する単語により色々な状況を表現することができます。契約書においてはどのような基準で、どのような状態によって、どのような状況下でのような、現状を説明する必要があるため使用される場合が多々あります。

On the basis of、on basis of、on a basis ofの場合は、ofの後に単語を入れます。「~を基にして」、「~を基準として」の意味となりますが、On a basisの場合は、On aとbasisの間に単語入れます。間に入れた単語を基にして、「~を基準として」のように使用します。たとえば、On a xxx basisとなり、「xxxを基準に(基に)」してのようになります。

on the basis ofを使用した例文

In lieu of such fractional share, the Company shall make a cash payment therefor on the basis of the Exercise Price then in effect.(当該端株に代わり、会社は、その時点で有効な権利行使価格に基づき現金支払いを行う。)

on the basis of the known beliefs and values, xxxx(確信していた信念と価値に基づき、xxxx)

N company shall pay F company a quarter yearly compensation on the basis of N company’s report against the invoice from F company. (N社は、F社からの請求に対し、N社のリポートに基づき、年に4回の報酬をF社に支払うものとする。)

3. 「on an (a) xxxx basis」、「on the xxxx basis」が使われたフレーズのいくつか

on an equal basis             対等に[で]

Working conditions should be determined by the workers and employers on an equal basis.(労働条件は、労働者と使用者が、対等の立場において決定すべきものである。)(労働基準法

on a trial basis:試しに

The plant has installed a solar power generation system on the roof on a trial basis.

(工場は、屋根に太陽光発電システムを試験的に設置する。)

on a fifty-fifty basis: 五分五分で

The new firm was owned on a fifty-fifty basis by the two companies.(新しい会社は、2社により対等に(折半で)所有されている。)」

on a first-come-first-served basis: 先着順で

Reservations will be taken on a first-come, first-served basis on the day

(当日の先着順にて予約を受付ます。)

4. 便利な使い方の例:臨機応変に実情に合わせて使用可能

以下のように、単語を入れ替えれば、臨機応変に実情に合わせて使用することができます。

a. 時間軸で

on an everyday basis: 日常の

on a daily basis: 1日ごと、日々、毎日

on a five-day week basis: 週5日制で

on a monthly basis: 毎月、月1回(の頻度で)、月単位で、月額で

on a quarterly basis: 四半期ごと

on a long-term basis: 長い期間にわたり

on a regular basis: 定期的に

on an irregular basis: 不定期に

on an ad hoc basis: 臨機応変に

on a permanent basis: 永久的に

b.  地域単位で

on a prefectural basis: 県単位で

on a national basis: 全国規模で

on a global basis: 世界中の

c. その他

on a part-time basis: パートタイムで、時間給で

on an interactive basis: 対話形式で

on a parallel basis: 平行に

on a steady basis: 手堅く

on a segment by segment basis: 分野ごとに

amortized on a straight-line basis over 5 years: 5年間の定額法により償却する

on an experimental basis: 試製ベースで

on a voluntary basis: 自主的に

on a commercial basis: 商業ベースで

on a yen basis: 円建てで

on a cost effective basis: 高い費用対効果で,高いコストパフォーマンスで

on an individual basis: 人[個別]的に

参考図書:

ランダムハウス英和大辞典(小学館)

カレッジライトハウス和英辞典(研究社)

The New Oxford Dictionary of English (Oxford University Press)他

 

英文契約書の用語(単語編)expire, expiration, terminate, termination

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いずれも英文契約書法律文書ではなくてはならない単語です。ここでは、契約書・法律文書で使用されるexpire, expiration, terminate, terminationについて、作成した例文を通して、契約書翻訳の観点から主な使われ方を見てみます。

1. expire, expirationについて

expireは動詞、expirationはその名詞形です。

a. 主な意味は、期間や権利が「満了する」、「終了する」、「失効する

辞書をみると、expireは、第一義として、主にある期間や権利、具体的には契約期間・保証期間等が「満了する」、「終了する」、「失効する」、「期限が切れる」、「満期になる」等の意味があると記載されています。なを、英語特有の1つの単語にいろいろな意味があるという性質から、一例ですが、expireの名詞形のexpirationの場合「呼気」などの意味があります。「expire」は契約書法律文書に限らず、日常用語として使われ、例えば、パスポートの有効期限が切れる(失効する)場合、「My passport will expire next month」等となります。

b .英文契約書における用例

英文契約書では、例えば契約期間が切れる(満了)する場合は、「This agreement shall become effect on the effective date and shall expire on YYMMDD.(本契約は、発効日に発効し、xx年xx月xx日に満了する)」

上記の例は、契約期間を定めただけのものですが、「契約期間を定めて、当初定められた契約期間が終了した後はどうするか」を決める必要があることが多々あります。

例えば、当初の契約期間(仮に3年間とします)が終了した後も、問題がなければ契約期間を延長したい場合は、例えば、「This Agreement shall be commenced from the effective date and continued for three (3) three years and thereafter automatically extended for additional one-year. (本契約は発効日から開始され、3年間継続され、その後自動的にさらに1年間延長される。)」この延長について当事者間の協議により延長するか否かを決めておく場合は、「and thereafter automatically extended for additional one-year」の後に、例えば、provided, however, that such extension period shall be determined based on consultation between the parties of this Agreement(ただし、当該延長期間は、本契約の当事者間の協議に基づいて決定される。)などとします。上記は、例文用に作成したほんの一例で契約期間の内容、性質、契約期間の定め方の方法等もさまざまで、それらの書き方も多々あります。

c. その他の意味

ところで同じ「満了する」の意味でも、保険や債券(例:手形など)、定期預金の場合、「満期になる」、「満期を迎える」等の言い回しがあります。これが日本語の難しい側面です。いずれの場合でも「expire」を使うことができます。The term of casualty insurance with installment savings expires in next year. (積み立て保険は来年満期になる)なを、満期=期限の到来という意味では、「mature」、「due」を使うこともあります。例えば、手形の支払期日が来た場合、A bill maturesとか、A bill falls due等の表現があります。

その他法律文では、ほんの一例ですが以下のように使われる場合もあります。

When the term of office of a commission member expires, the commission member is to perform the duties until the successor is appointed.(委員の任期が満了したときは、当該委員は、後任者が任命されるまで引き続きその職務を行うものとする。)(電気事業法

「expiration」については、多くの場合「expiration date(満了日・失効日・満期日)等」等、他の語と組み合わせて使用されます。

2. terminate, terminationについて

a. expire, expirationとの微妙な違い

terminateは動詞、terminationはその名詞形です。

いずれもexpire, expirationと同様に主に「終わり」を意味しますが、expire, expirationが、契約書の場合は、当初定められた契約期間が単に終了する(満了する)的な意味合いで使われるのに対し、辞書を見ると、terminateの第一義は、「終わらせる」、「終結させる」-何らかの理由等で終了させる―と記載されています。特に契約の場合は、契約を終了させる(terminate a contract)と説明されており、terminate, terminationは、基本的には「契約の解除、解約-終わらせる」の意味で使われます。

A settlor and a beneficiary may terminate a trust at any time by an agreement between them.

委託者及び受益者は、いつでも、その合意により、信託を終了することができる。)(信託法)http://www.japaneselawtranslation.go.jp/kwic/?re=01

英文契約書で使われる頻度でみると、経験的に、expire, expirationは「契約期間が満了する、満期になる」というニュアンスであり、terminate, terminationは、多くが「定められた契約期間の途中でその契約を終了する」の意味で使われています。(ただし個々の英文契約書によりますが、文脈的に、「terminate」が解除=満了または単に契約の終了の意味を含む場合もあります。このあたり文脈により判断する必要があります。)

例えば、「early termination」なる用語があります。The term of this Agreement shall be for three (2) years commenced from its effective date unless otherwise earlier terminated hereunder.(本契約の期間は、本契約に基づき早期に終了する(中途解約の)場合を除き、発効日から開始して3年間とする。)この例文の場合、動詞terminate+earlierの形ですが、契約期間にかかわらずとにかく契約を終わらせるという趣旨です。いずれにしても、契約期間中であっても、さまざまな理由で契約を解除する必要があることが想定される場合「terminate」を使用して、例えば、This Agreement shall be terminated in the following cases: (本契約は以下の場合解除される)この場合の解除理由は、相手方の契約違反や不履行に起因する場合等さまざまです。例えば、相手方の契約違反によるものなどは、Either party may, at any time, terminate this Agreement without a notice if other party breaches the terms and conditions of this Agreement.(いずれの当事者も相手方が本契約の条件に違反した場合、通知なしにいつでも本契約を解除することができる)

b. 「終了するという意味」での多様な使われ方

terminateは、終了するという意味では、様々な事柄に使用されます。

Program will terminate due to the system error(システムエラーによりプログラムを終了します)

If the parties have not specified the term of employment, either party may request to terminate at any time. In such cases, employment shall terminate on the expiration of two weeks from the day of the request to terminate.(当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。)(民法

3. expire, expirationとterminate, terminationについて

例えば、同一の文章の中でexpireとterminateが両方使用される場合があります。

以下に例文を作成してみました。これは上記のexpireとterminateの性質に由来します。

If this Agreement is terminated by either Party during the period of this Agreement, in which case this Agreement will expire on the date of such termination.(本契約の期間中にいずれかの当事者によって本契約が解除された場合、その場合、本契約は当該解除日に失効する。)

参考図書:

法律英単語 (自由国民社)

ランダムハウス英和大辞典(小学館)

カレッジライトハウス和英辞典(研究社)

日本法令外国語訳データベース