英文契約書の単語・用語  日本語の「被~」という表現について

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契約書・法律文書に限らず、一般的な文章でも「被~」という表現が使われています。何気なく使っていますが、なじみがない言葉だと、「被~」という表現を目にしたとき、「はてこの意味は・・・・」と一瞬考えてしまう経験があります。「被」という言葉の意味を国語辞典で調べてみると、色々な意味があります。今回とりあげるのは、「被」の意味のなかでも、「他人から、行為や恩恵などを受ける」、「行為を表す漢語に付いて、他から…される、他からその行為をこうむる」の意味の部分です。例えば、「被害」をいう言葉があります。意味としては、「損害や危害をこうむること」、「受けた損害や危害」とあります。当然ですが、被害を受けた人は、「被害者」です。

日本語だと「他から…される、他からその行為をこうむる」人や対象を表す場合、単純に「被」に後に行為の対象となる事柄をくわえるだけですが(「被~」を使わない場合、使う必要がない場合も多くあります。なを、契約書・法律文書では「被~」の表現が多くみられます)。英語の場合はどうでしょうか。契約書翻訳の観点から見てみます。

1. 単純に「被~」と英訳できない

契約書翻訳も含めて「被~」を日本語から英語にする場合に「被+~」とするわけにはいきません。

英語は、日本語の様に、ひとつひとつの文字が意味を表す表意文字でないため、文字自体にidea(意図、考え方)がありません。そのため、日本語の「被」にあたる英単語を付けて、「~を受ける、~される、~こうむる」の意味を持たせることはできません。

英語では、日本語のさまざまな「被+~」の言葉のそれぞれ対応する英単語・句があります。例えば、動詞の場合、過去分詞のみ、過去分詞+人またはもの、あるいは、ある言葉の後ろに「ee」を付けて、「被…」とする場合もあります。

上記の例には、下記に表にあるように被保険者(insured、assured)、被害者(injured parson)、被許諾者(grantee、licensee)等があります。

以下にいくつかの例を挙げてみます。なを、「被+~」に対応する英単語には以下に記載した単語以外のものもあります。

被裏書人 indorsee、endorsee
被害 harm、injury
被開示者 disclosee
被害者 Injured、injured parson、 victim
被拐取者 abducted person
被害届 incident report
比較法 comparative jurisprudence、comparative law
被疑者 suspect
被許諾者 Grantee、 licensee
被拘禁者 detained person
被後見 wardship
被後見人 ward
被告 defendant
被告事件 criminal case
被告自身の証言 defendant’s own testimony
被告人 criminal defendant
被収容者 inmate
被上訴人 respondent、appellee
被選択権者 optionor
被相続人 *decedent
被担保債権 claim secured
被保険者 insured、assured
被保証人 guarantee
被用者 employee

*「被」が付いても、被相続人は、「相続人が相続によって承継する財産や権利義務のもとの所有者」で、相続人(heir)は、「被相続人の財産上の地位を承継する人」

The child of a decedent shall be an heir.「被相続人の子は、相続人となる。」(民法

2. 「被~」の言葉の意味を把握した上で、適切な英単語やフレーズを作成する

上記のように、多くは、辞書等に記載がありますが、そうでない場合も多く、また定訳がない場合もあります。その場合、その「被~」の言葉の意味を把握した上で、適切な英単語やフレーズを作成する必要があります。

 

以下に上記の例を使った例文を作成してみました。

The act or omission of one insured will not invalidate the policy as to the other insured.

(いずれかの被保険者の作為または不作為によって他の被保険者に対する証券の効力が失われない。)

A copy of the insured amounts and the receipt of payment shall be provided each year.

(保険総額と領収書のコピーは、毎年、提供されるものとする。)

Premiums are determined in accordance with an insured person’s salary.(保険料は、被保険者の給与に応じて決定されます。)

In the Agreement, it shall clarify where responsibility lies before deciding the final repair cost to be paid to the insured.(契約では、被保険者に支払う最終的な修理費用を決定する前に、責任がどこにあるかを明確にするものとします。)

用例、例文は契約書翻訳の観点から当方にて作成したものですが、内容を参考にされる場合は、辞書・専門書をご確認の上、ご自身の責任でお願いします。

参考図書

大辞泉(小学館)

法律英単語(自由国民社)

ランダムハウス英和大辞典

ビジネス法律英語辞典(日経文庫)

日本法令英訳プロジェクト

 

 

 

英文契約書の単語・用語 entitle、entitlementおよびこれらの類語・類似表現

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単語「entitle」は、英文契約書や法律文書の欠かせない定番の単語の1つです。さまざまな場面で使用されます。契約書翻訳の観点から概説します。

1. entitle

「権利を与える、資格を与える、〜に題名をつける」

Licensor is entitled to ~(ライセンサーは~の資格を与えられている・ライセンサーは~する権利がある)

This Agreement shall entitle Reseller to purchase Products at the discounted prices.(本契約は、再販業者が割引価格により製品を購入する権利を与えるものとします。)

entitleの名詞形は「entitlement」(権利・資格(付与))です。

2. 類語・類似表現

類語・類似表現には以下のようなものがあります。これらは本来、それぞれ文脈に応じた使い分けが必要ですが、以下に作成した例文では、結果的に「何かの権利・資格が与えられている=何かの権利・資格を有している」というニュアンスになります。英文契約書で使われる代表的な意味とそれに合わせて作成した例文(*を除く)を通して、これらについての用法をざっと見てみます。また、ここで書いた各単語の意味は契約書という観点からかなりしぼってあります。これ以外にも多くの意味と用法があります。

a)  give

「権限を付与する・権限を与える」

例えばgive somebody authority to doの形で、The managing committee gives the person in charge the authority to supervise the subcontractors.(運営委員会は、担当者に下請け業者を監督する権限を与える)

b)  vest

「(権利・財産)与える、授ける」

vest someone with authority((人に)権限を付与する)の形で、例えば、

The board of directors may vest the employees with the award of superior performance. (取締役会は、優れた業績に対する賞を従業員に与えることがきる。)

またはvest in(帰属する)の形で、例えばThe ownership of the properties shall be vested in the successor.(物件の所有権は後継者に帰属する。)

*The receipts from work shall vest in the national treasury. (作業の実施による収入は、国庫に帰属する。)http://www.japaneselawtranslation.go.jp/kwic/?re=01

b.  confer

「~を授与する」

confer something on someoneの形で、Nothing in this Agreement, express or implied, shall not be intended to confer on any third party any right under this Agreement.(本契約のいかなる条項も、明示・黙示を問わず、本契約に基づく権利を第三者に与えることを意図しない。)なお、本例文は、強調のため文章を倒置してあります。

c. bestow

「~を授ける、与える、贈る」

例えばbestow something on someoneの形で

The committee shall bestow the full authority on him.(委員会は彼に完全な権限を与える。)

私見ですが、「bestow」は実際の翻訳作業では、正直あまりお目にかかることはありません。

c)  allow

「許す、認める」

This Agreement shall not allow the Buyer to establish the right of lien to the products prior to the payment thereto. (本契約は、購入者が製品の支払い前に製品に対する抵当権を設定することを許可しない。)

「entitle」を使って上の文章と同じような感じの意味を持つ例文を作ってみました。

This Agreement shall not entitle the Buyer to establish the right of lien to the products prior to the payment thereto. (本契約は、購入者が製品の支払い前に製品に対する抵当権を設定する権利を与えない。)

上記の例文を購入者側の立場から見た場合は、以下の様な例文になります。

The Buyer shall not be entitled to establish the right of lien to the products prior to the payment thereto. (購入者は、製品への支払い前に製品に対する抵当権を設定する権利を与えられていない。)

Only one (1) entry is allowed per person during the contest period.(コンテスト期間中、出品作品は1人につき1点のみとします。)

d)  permit

「許す、許可する、許す、可能にする」名詞形は「permission」

以下の例文は、同意を与えて「許す、許可する」の意味。

The Licenser shall not permit the Licensee to use its trademark without the prior written permission of the Licenser.(ライセンサーは、ライセンサーの書面による事前の許可なしに、ライセンシーがその商標を使用することを許可しない。)

e)  authorize

「正式に許可する、認可する」名詞形は「authorization」

Distributor is authorized to sell the products under this Agreement. (ディストリビューターは、本契約に基づき製品を販売することを許可されています。)

f)  grant

「許可する、承諾する」名詞形もgrant「許可,認可」

辞書を見ると「願いにより許可する」という意味もあり、英文契約書でも、そのようなニュアンスの例文を作ってみました。

Upon a request of the Licensee, the Licenser may grant the Licensee to use such license after payment of the license fee. (ライセンシーの求めに応じ、ライセンサーは、ライセンス料の支払い後に当該ライセンスの使用を許可することができる。)

すでに述べたように、実際には、上記いずれの言葉もそれぞれの状況に応じた使い分けが必要ですが、例文的には結果的に「何かの権利または資格が与えられている=何かの権利または資格を有している」という解釈で作成しました(いささかとってつけたような感じはありますが)。上記の言葉の他にも様々な表現やフレーズがあります。これらについては、別の機会を設けたいと思います。

参考図書:

ランダムハウス英和大辞典(小学館)

ビジネス法律英語辞典(日経文庫)

How to Create Effective Sentences in English (文英堂)

The New Oxford New Dictionary of English (Oxford University Press)

日本法令外国語訳データベースシステム

英文契約書の用語・単語 defect・faultについて

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今回は、defectについてです。英文契約書でもいろいろな場面で使われますが、典型的な一例としては、引き渡された商品または提供されたサービスに瑕疵があった場合、商品を受け取った、またはサービスを提供された当事者がどのような救済や補償を受けることができるか、という文脈で使用されます。「瑕疵」という言葉を改めて辞書で確認すると、「きず、欠点、あやまち」「法律で、通常あるべき品質を欠いていること。また、意思表示に詐欺あるいは強迫などの事由があること。」と示されています。英和辞典でも、主な意味は、「欠点、欠陥、弱点」等となっています。

ここでは、defectに関連して商品の保証、瑕疵の検査、瑕疵の取り扱い、瑕疵に起因する救済や補償の方法、その他法律的な部分に踏み込むことはせず、英文契約書で単語defectがどのように使われているかのみに絞り、作成した例文を通して使い方を簡単に見てみます。

1.  defectの用例

If the Purchaser has found a defect after the acceptance inspection, the Purchaser shall promptly report the Buyer of such defect in writing and the Buyer shall promptly provide the Purchaser with the replacement. (受領検査の後、買主が瑕疵を発見した場合、買主は、かかる瑕疵につき書面により売主に速やかに報告を行い、売主は、速やかに買主に代替品を提供する。

If the Purchaser finds a defect at a later date, the Purchaser shall also report this without delay.(買主が、後日、瑕疵を見つけた場合、買主は、遅滞なく、このことを報告する。)

上記の例文では、「物品の瑕疵」についての内容ですが、「物品の瑕疵以外の瑕疵」については、以下のような感じになります。

Systemic Failure means, in relation to the Equipment, a material defect which:

(システムの不具合とは、装置に関連して、以下の重大な瑕疵を意味する。)

Program Error means a reproducible defect or combination of defects in the Software that results in a failure of the Software.(プログラムエラーとは、ソフトウェアの不具合をもたらしたソフトウェアの再現可能な瑕疵または瑕疵の組み合わせを意味する。)

2. 他の語との組み合わせ

defectを使用した例として、「英文契約書の用語、構文(その17)でとりあげた「free from defects」などがあります。

The Products shall be free from defects in workmanship and material. (製品は、仕上がりと材料に瑕疵がないものとする。)

その他、defectと他の語を組み合わせた用語は、主なもので、形容詞も含めるとdefect in title(権原の瑕疵)、defect liability(欠陥責任)、defective declaration of intention(瑕疵のある意思表示)、defective title(瑕疵のある権限)

3. defectの類語

defectの類語には、「fault」があります。faultの主な意味は、(過失の)責任、誤り、過失、違反、欠点、欠陥、瑕疵、故障等です。defectの類語ですが、経験的に多くは、以下に作成した例文のような使われ方をします。

The information that is at the time of disclosure already in the public domain or becomes available from public sources through no fault of the Recipient.(開示時点においてすでに公知である情報、または「受領当事者」の過失によることなしに、一般の情報源から利用可能になった情報。)

その他、defectに相当する語として、failure(不履行、故障、不具合等)、malfunction(故障、不具合等)等があります。

これらの単語は、英文契約書に限らず、当方で扱っている技術書・マニュアル等でもいわば常連の単語です。最初に述べたようにdefect・faultが関連する分野は、多岐にわたります。ブログ程度は収まらない内容を含んでいますが、機会があれば、それらの表面だけでも少しずつ眺めてみたいと思います。

参考図書:

研究社新英和大辞典(第5版)

ビジネス法律英語辞典(日経文庫)

法律英単語(自由国民社)

英文契約書の用語・単語  unlessについて

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unless自体は英文契約書で使われるだけの単語というわけではありませんが、他の語と組み合わされて成句を作り、独特の使われ方をする場合があります。unlessは「使いづらい、わかりにくい」と感じている方も多いと思いますが、ネイティブが非常によく使う接続詞です。

1. unlessの意味

接続詞としての意味:…でない限り、もし…でなければ、〜を除いては、ただし〜の場合を除く

通常 if…notと言い換えられますが、unlessで始まる成句の内容が実際に起こる確率の方が低い場合が多く、「起こるとは思わなかった事が発生した場合には」という表現になっています。

2. unlessの成句

英文契約書で、よく目にする成句をいくつか取り上げてみました。

unless any objection is reserved(ただし、異議をとどめたときは、この限りでない。)

unless any other intention is manifested (別段の意思表示がないときは)

unless the context requires otherwise(文脈上他の意味に解すべき場合を除き)等があります。

その他、otherwiseと一緒になり、以下のように使用されます。

unless otherwise indicated above (上記において別段の指示がある場合を除き)

unless otherwise noted(特に規定する場合を除く)

unless otherwise stated (特に明記される場合を除き)

unless otherwise terminated(その他解除される場合を除き)

unless otherwise provided for in this Agreement(本契約に別段の定めがある場合を除き)

unless otherwise specifically set out in the Agreement(本契約にその他特段に規定される場合を除き)

unless otherwise agreed in writing (書面により別段の同意がある場合を除き)

unless otherwise agreed by the parties hereto (その他本契約の当事者が合意する場合を除き)

この他にも状況に応じた多くの表現があります。

以下は、unlessを使用した例文です。

Payment shall be made in US Dollars unless otherwise stated in the Purchase Order (注文書にその他記載する場合を除き、支払いは米ドルとする)

Unless otherwise provided for by law, shareholders shall have the stock purchase right.(株主は、法律の定める場合を除いて、新株について引受権を有する。

The residual assets in the case of the dissolution of a Financial Instruments Membership Corporation shall be distributed equally among its members, unless otherwise stipulated by the articles of incorporation or resolution of a general meeting.(金融商品会員制法人が解散した場合における残余財産は、定款又は総会の決議により別に定める場合のほか、会員に平等に分配しなければならない。)(金融商品取引法

 

3. unlessの類似表現

「except〜(〜を除いて)」、「except that〜(〜の場合を除いて)」、「except as」、「if〜not(もし〜でなければ)」等がunlessの代わりに使用されることがあります。

Except as set forth in Schedule1(附則1に規定される場合を除き)

Except as otherwise provided herein, neither party may unilaterally terminate this Agreement.(本契約によりその他特段の定めがある場合を除き、いずれの当事者も、一方的に、本契約を解除することはできない。)

Except as expressly permitted under this Agreement(本契約において明示的に許可される場合を除き)

Except as otherwise provided for in the Article of Incorporation,(定款に別段の定めのある場合を除き)

A request for issuance of a warrant or examination of a witness shall be accompanied with the document set forth in item (iii) of Article 2; except that this shall not apply when a treaty provides otherwise.

(令状又は証人尋問の請求は、第二条第三号の書面を提出して、しなければならない。ただし、条約に別段の定めがある場合には、この限りでない。)(国際捜査共助等に関する法律

The following claims shall be extinguished if not exercised for one year: (次に掲げる債権は、一年間行使しないときは、消滅する。)

This function can be disabled if not required.(この機能を使用しない場合は無効にできます。)

契約書翻訳の観点から「unless」とその類語について簡単に見てみましたが、最後に最近、たまたまツイッターで送られて来た、インドのラジニーシ(Rajneesh)(1931-1990)の言葉で「unless」について終わります。
The heart is like a flower. Unless it is open, it cannot release its fragrance into the world! 直訳的に読むと(心は花の様です。開いていない場合、その香りを世界に放つことはできません!)ですが、実際にはこんな感じになると思います。(心は花の様!開いてこそ、その香りは世界に解き放されます!

参考図書:

ランダムハウス英和大辞典(小学館)

法律英単語(自由国民社)

ビジネス法律英語辞典(日経文庫)

日本法令英訳プロジェクト

 

英文契約書の単語・用語 due、 due to

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単語「due」は、英文契約書に限らず、様々な分野で使用され、様々な意味を持ちます。そのため、契約書では様々に訳されるため、ある意味つかみどころのない言葉です。「due」の用法についてもその語源も含めて様々な解説がされていますが、今回は英文契約書における「due」の使われ方のうち、とりあえず知っておけば便利な使い方に絞って、主なものを契約書翻訳の観点から作成した例文を通して見てみます。

1. dueの語源

「due」の語源については、様々な説明があります。

とりあえず、Oxford Dictionary of Englishにある「due」の語源(Origin)を見ると、「Middle English (in the sense of “payable”): from Old French deu “owed”, based on Latin debitus “owed”, from debere “owe”とあります。

「中世英語(「支払うべき」の意味):ラテン語のdebitus「owed(:支払い義務を負う/(義務を)負った)」に基づき、debere「owe(支払い義務を負う/義務を)負っている)」に由来する古期フランス語のdeu「owed(支払い義務がある/(義務を)負った)」です。

さらに意味を確認してみると、以下のように記載されています。

形容詞としての用法

(1) Expected at or planned for at a certain time. Of a payment required at a certain time. (特定の時期に予定され、または計画されていること。特定の時期に必要される支払い。)

(2) of a proper quality or extent. Adequate(適切な品質または範囲。適切。) driving without due care and attention. (細心の注意(相当な配慮と注意)を払わずに運転する。)

名詞としての用法

(1) one’s dueの場合。a person’s right(人が持つ権利)

(2) duesの場合。an obligatory payment(義務的としてなすべき支払い)、a fee(料金)

2. dueの主な意味

様々な意味を持ちますが、ここではあくまでも英文契約書で使われることが多い「due」の意味を中心に見てみます。(上記のように「due」は、形容詞、名詞、副詞として使われますが、ここでは文法に関する説明は行いません。実務的にはこのようなものであると理解すれば十分です。なを、以下の用例以外にも様々な意味があります。)

a.「当然支払われるべき」、「支払期日が到来した」、「満期の」等

b.「正当な、」、「当然の」、「相応の」等

c.「~のために、~に帰すべき:「due to」として」

d.「当然与えられるべき「due toまたはdue」として」

e.「~する予定で」

3. 英文契約書で見られるdueを使った用語のいくつかの例

すでに述べたように様々な意味と用法があります。due単体でも使用されますが、多くの場合、他の単語と組み合わされて、「句= phrase」として使用されます。*例えば、以下のような語句があります。

due act 正当な行為:legitimate act
due care 相当な注意:a good deal of care, (all) reasonable care, due attention
due date 支払期日、満期日:the date on which something falls due, especially the payment of a bill.(何かが期日を迎える日付、特に請求書の支払い。)
due diligence 相当な注意:reasonable steps taken by a person in order to avoid committing an offence, especially in buying or selling something.(特に何かを売買する際に、犯罪を犯さないようにするために人がとる合理的な措置)
due process (of laws) 法の適正手続き、適正な手続き:fair treatment through the normal judicial system通常の司法制度による公正な扱い)
due reason 正当な理由

*上記以外にも、適宜、他の語と組み合わされ、または単体で使用される場合が多くあります。これらも含めいずれも文脈・内容により適用される意味が異なります。契約書等で長い条文の中で使われている場合など、文脈・内容を把握して意味を確定します。

4. dueを使った例文

以下に、主に上記の「due」の用例を使った例文を作成してみました。

The train is due in Tokyo at 6:25 p.m. (列車は午後6時25分に東京に到着の予定)

He is due to graduate in June. (6月に卒業することになっている)

This accident was due to a system error. (事故はシステムエラーに起因した。)

the money due to him. (彼に支払うべき金)

Any amounts which are not paid within the due date will be subject to interest of one percent (1%) per month, which will be immediately due and payable.(支払期日までに支払われない額は、1ヵ月当たり1%の利子が科せられ、即時に支払期日が到来する。)

Prior to the due date for filing by the Company of any Tax return, report or other filing that relates to a tax period beginning before the Closing Date and ending after the Closing Date…. (会社が、クロージング日前から開始し、クロージング日後に終了する課税期間に関連する納税申告、報告書、またはその他の提出物の提出期日に先立ち….)

There are no Tax liens on any of the assets of the Company, except for liens for Taxes not yet due.まだ期限が到来していない税に対する先取特権を除き、会社の資産のいずれに関しても、税の先取特権は存在しない。

The Company shall be timely paid over such taxes or other amounts to the appropriate governmental authorities to the extent due and payable.(会社は、適時、かかる税または他の額を納付すべき範囲まで当該政府機関へ支払うものとする)

 

Each party agrees to exercise due care in protecting the Confidential Information from unauthorized use and disclosure. (各当事者は、不正使用および不正開示から機密情報を保護するための相当な注意を払うことに同意する。)

 

Some of the key issues already identified to be investigated further during the due diligence process exist. (デューデリジェンスプロセス(適性評価)中にさらに調査する必要があるとすでに特定されている重要な問題がある。

5. その他のいくつかの用例

become due (fall due) (満期になる)

the honor due (to) him(彼に与えられるべき名誉)尊敬・称賛などが〉(人に)当然与えられるべき((to …))toが省かれる場合がある。

以下は、「当然の」、「正当な」、「それ相当の」、「十分な」の意味です。

with (all) due respect(十分に敬意を表して)

in due form(正式に)

in due time(そのうちに)

会費、組合費、料金、手数料、税金を表して(通例~s)

club dues(クラブ会費)

harbor dues(入港税)

ざっと見ただけですが、英文契約書に記載されているか、否かにかかわわらず、単語「due」の使い方は、難しいものがあります。理由のひとつは、冒頭に述べたように他の単語と組み合わされ場合、それが使われた文脈により、日本語の訳が変わるためです。ネイティブからすれば「due」はあくまでも「due」です。単語「due」慣れるためには、やはり多くの文例に接する必要があるようです。

 

参考図書

The New Oxford Dictionary of English (Oxford University Press)

Business English (BARRONS)

ランダムハウス英和大辞典(小学館)

法律英単語(自由国民社)

英文契約書の用語・単語 「base」と「basis」

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契約書翻訳の観点から、経験上、よく目にしたり、よく使われたり、または知っておいて損はないと思われる英文契約書でよく使われる単語と用語を取り上げています。

英文を読んでいると「~ basis」、または「based on」等という単語をよく見かけます。これらの用語は、英文契約書に限らず、日常的にさまざまな分野で使用されます。この用語に使い方を覚えると、英文契約書に限らず、自分で英文を書いたり読んだりするのに意外と便利です。ここでは、英文契約書で散見されるフレーズを中心にいくつかの例文を通してこれらの使い方を見ていきます。まず、元となる単語「base」と「basis」の意味を振り返ってみます。

1. 「base」と「basis」の主な意味

基本的に「base」と「basis」の主な意味は同じです。主な意味としては「*the lowest part or edge of something, especially the part on which it rests or is supported」 (*Oxford Dictionary of English)

すなわち、「何かの最下部もしくは端、特にそれが置かれている、もしくは支えられている部分」であり、「基礎」、「元になるもの」であり、「base」は、「ベース」として日本語で使われます。なお、今回は、その中でも、「basis」について見てみます。

2. 「on the basis of」が使われたフレーズのいくつか

On the basis of ~(~に基づいて)およびOn a(n) basis(基準として)は、個々の状況に合わせて挿入する単語により色々な状況を表現することができます。契約書においてはどのような基準で、どのような状態によって、どのような状況下でのような、現状を説明する必要があるため使用される場合が多々あります。

On the basis of、on basis of、on a basis ofの場合は、ofの後に単語を入れます。「~を基にして」、「~を基準として」の意味となりますが、On a basisの場合は、On aとbasisの間に単語入れます。間に入れた単語を基にして、「~を基準として」のように使用します。たとえば、On a xxx basisとなり、「xxxを基準に(基に)」してのようになります。

on the basis ofを使用した例文

In lieu of such fractional share, the Company shall make a cash payment therefor on the basis of the Exercise Price then in effect.(当該端株に代わり、会社は、その時点で有効な権利行使価格に基づき現金支払いを行う。)

on the basis of the known beliefs and values, xxxx(確信していた信念と価値に基づき、xxxx)

N company shall pay F company a quarter yearly compensation on the basis of N company’s report against the invoice from F company. (N社は、F社からの請求に対し、N社のリポートに基づき、年に4回の報酬をF社に支払うものとする。)

3. 「on an (a) xxxx basis」、「on the xxxx basis」が使われたフレーズのいくつか

on an equal basis             対等に[で]

Working conditions should be determined by the workers and employers on an equal basis.(労働条件は、労働者と使用者が、対等の立場において決定すべきものである。)(労働基準法

on a trial basis:試しに

The plant has installed a solar power generation system on the roof on a trial basis.

(工場は、屋根に太陽光発電システムを試験的に設置する。)

on a fifty-fifty basis: 五分五分で

The new firm was owned on a fifty-fifty basis by the two companies.(新しい会社は、2社により対等に(折半で)所有されている。)」

on a first-come-first-served basis: 先着順で

Reservations will be taken on a first-come, first-served basis on the day

(当日の先着順にて予約を受付ます。)

4. 便利な使い方の例:臨機応変に実情に合わせて使用可能

以下のように、単語を入れ替えれば、臨機応変に実情に合わせて使用することができます。

a. 時間軸で

on an everyday basis: 日常の

on a daily basis: 1日ごと、日々、毎日

on a five-day week basis: 週5日制で

on a monthly basis: 毎月、月1回(の頻度で)、月単位で、月額で

on a quarterly basis: 四半期ごと

on a long-term basis: 長い期間にわたり

on a regular basis: 定期的に

on an irregular basis: 不定期に

on an ad hoc basis: 臨機応変に

on a permanent basis: 永久的に

b.  地域単位で

on a prefectural basis: 県単位で

on a national basis: 全国規模で

on a global basis: 世界中の

c. その他

on a part-time basis: パートタイムで、時間給で

on an interactive basis: 対話形式で

on a parallel basis: 平行に

on a steady basis: 手堅く

on a segment by segment basis: 分野ごとに

amortized on a straight-line basis over 5 years: 5年間の定額法により償却する

on an experimental basis: 試製ベースで

on a voluntary basis: 自主的に

on a commercial basis: 商業ベースで

on a yen basis: 円建てで

on a cost effective basis: 高い費用対効果で,高いコストパフォーマンスで

on an individual basis: 人[個別]的に

参考図書:

ランダムハウス英和大辞典(小学館)

カレッジライトハウス和英辞典(研究社)

The New Oxford Dictionary of English (Oxford University Press)他

 

英文契約書の用語(単語編)expire, expiration, terminate, termination

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いずれも英文契約書法律文書ではなくてはならない単語です。ここでは、契約書・法律文書で使用されるexpire, expiration, terminate, terminationについて、作成した例文を通して、契約書翻訳の観点から主な使われ方を見てみます。

1. expire, expirationについて

expireは動詞、expirationはその名詞形です。

a. 主な意味は、期間や権利が「満了する」、「終了する」、「失効する

辞書をみると、expireは、第一義として、主にある期間や権利、具体的には契約期間・保証期間等が「満了する」、「終了する」、「失効する」、「期限が切れる」、「満期になる」等の意味があると記載されています。なを、英語特有の1つの単語にいろいろな意味があるという性質から、一例ですが、expireの名詞形のexpirationの場合「呼気」などの意味があります。「expire」は契約書法律文書に限らず、日常用語として使われ、例えば、パスポートの有効期限が切れる(失効する)場合、「My passport will expire next month」等となります。

b .英文契約書における用例

英文契約書では、例えば契約期間が切れる(満了)する場合は、「This agreement shall become effect on the effective date and shall expire on YYMMDD.(本契約は、発効日に発効し、xx年xx月xx日に満了する)」

上記の例は、契約期間を定めただけのものですが、「契約期間を定めて、当初定められた契約期間が終了した後はどうするか」を決める必要があることが多々あります。

例えば、当初の契約期間(仮に3年間とします)が終了した後も、問題がなければ契約期間を延長したい場合は、例えば、「This Agreement shall be commenced from the effective date and continued for three (3) three years and thereafter automatically extended for additional one-year. (本契約は発効日から開始され、3年間継続され、その後自動的にさらに1年間延長される。)」この延長について当事者間の協議により延長するか否かを決めておく場合は、「and thereafter automatically extended for additional one-year」の後に、例えば、provided, however, that such extension period shall be determined based on consultation between the parties of this Agreement(ただし、当該延長期間は、本契約の当事者間の協議に基づいて決定される。)などとします。上記は、例文用に作成したほんの一例で契約期間の内容、性質、契約期間の定め方の方法等もさまざまで、それらの書き方も多々あります。

c. その他の意味

ところで同じ「満了する」の意味でも、保険や債券(例:手形など)、定期預金の場合、「満期になる」、「満期を迎える」等の言い回しがあります。これが日本語の難しい側面です。いずれの場合でも「expire」を使うことができます。The term of casualty insurance with installment savings expires in next year. (積み立て保険は来年満期になる)なを、満期=期限の到来という意味では、「mature」、「due」を使うこともあります。例えば、手形の支払期日が来た場合、A bill maturesとか、A bill falls due等の表現があります。

その他法律文では、ほんの一例ですが以下のように使われる場合もあります。

When the term of office of a commission member expires, the commission member is to perform the duties until the successor is appointed.(委員の任期が満了したときは、当該委員は、後任者が任命されるまで引き続きその職務を行うものとする。)(電気事業法

「expiration」については、多くの場合「expiration date(満了日・失効日・満期日)等」等、他の語と組み合わせて使用されます。

2. terminate, terminationについて

a. expire, expirationとの微妙な違い

terminateは動詞、terminationはその名詞形です。

いずれもexpire, expirationと同様に主に「終わり」を意味しますが、expire, expirationが、契約書の場合は、当初定められた契約期間が単に終了する(満了する)的な意味合いで使われるのに対し、辞書を見ると、terminateの第一義は、「終わらせる」、「終結させる」-何らかの理由等で終了させる―と記載されています。特に契約の場合は、契約を終了させる(terminate a contract)と説明されており、terminate, terminationは、基本的には「契約の解除、解約-終わらせる」の意味で使われます。

A settlor and a beneficiary may terminate a trust at any time by an agreement between them.

委託者及び受益者は、いつでも、その合意により、信託を終了することができる。)(信託法)http://www.japaneselawtranslation.go.jp/kwic/?re=01

英文契約書で使われる頻度でみると、経験的に、expire, expirationは「契約期間が満了する、満期になる」というニュアンスであり、terminate, terminationは、多くが「定められた契約期間の途中でその契約を終了する」の意味で使われています。(ただし個々の英文契約書によりますが、文脈的に、「terminate」が解除=満了または単に契約の終了の意味を含む場合もあります。このあたり文脈により判断する必要があります。)

例えば、「early termination」なる用語があります。The term of this Agreement shall be for three (2) years commenced from its effective date unless otherwise earlier terminated hereunder.(本契約の期間は、本契約に基づき早期に終了する(中途解約の)場合を除き、発効日から開始して3年間とする。)この例文の場合、動詞terminate+earlierの形ですが、契約期間にかかわらずとにかく契約を終わらせるという趣旨です。いずれにしても、契約期間中であっても、さまざまな理由で契約を解除する必要があることが想定される場合「terminate」を使用して、例えば、This Agreement shall be terminated in the following cases: (本契約は以下の場合解除される)この場合の解除理由は、相手方の契約違反や不履行に起因する場合等さまざまです。例えば、相手方の契約違反によるものなどは、Either party may, at any time, terminate this Agreement without a notice if other party breaches the terms and conditions of this Agreement.(いずれの当事者も相手方が本契約の条件に違反した場合、通知なしにいつでも本契約を解除することができる)

b. 「終了するという意味」での多様な使われ方

terminateは、終了するという意味では、様々な事柄に使用されます。

Program will terminate due to the system error(システムエラーによりプログラムを終了します)

If the parties have not specified the term of employment, either party may request to terminate at any time. In such cases, employment shall terminate on the expiration of two weeks from the day of the request to terminate.(当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。)(民法

3. expire, expirationとterminate, terminationについて

例えば、同一の文章の中でexpireとterminateが両方使用される場合があります。

以下に例文を作成してみました。これは上記のexpireとterminateの性質に由来します。

If this Agreement is terminated by either Party during the period of this Agreement, in which case this Agreement will expire on the date of such termination.(本契約の期間中にいずれかの当事者によって本契約が解除された場合、その場合、本契約は当該解除日に失効する。)

参考図書:

法律英単語 (自由国民社)

ランダムハウス英和大辞典(小学館)

カレッジライトハウス和英辞典(研究社)

日本法令外国語訳データベース

 

英文契約書の用語と単語 「に~させる」の表現 (その2)-compel、enforce、makeを使った場合

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英文契約書で良く見かける用語と単語に関して、前回と同様に使役動詞「~させる」の使い方と使い分けについてです。今回は、英文契約書の用語と単語 「に~させる」の表現 (その1)-cause、imposeを使った場合として、例文を通して、英文契約書での用例を見てみました。今回は、「に~させる」の表現(その2)として、compel、enforce、makeその他を使った表現を契約書翻訳の観点から見てみます。多くの場合、使役動詞を契約書で使用するケースは、「契約当事者も契約内容を守るが、契約当事者の関係者にもその契約内容を守らせる」ということを約するために使用されます。

1. Compel

「(人)に~させる」の意味では、compelはどちらかというと、「無理に~させる」、「強いる」、「強いて~させる」の意味になります。

具体的には、「compel someone to do」の形で、例えば、The Government may compel a person who enters this country to conform to the rules applicable to such person.(政府は、この国への入国者に、入国者に適用される規則に従うように強制することができます。)

また、「compel someone to 名詞」の形で、「強いて〔ある行動を〕とらせる」の意味で使われます。例えば、Buyer shall have the right to compel Supplier to specific performance of the Order.(バイヤーは、サプライヤーによる注文の特定の履行を強制する権利を有するものとします。)なを、本題から外れますが、以下のように書くこともあります。Buyer shall have the right to compel specific performance of the Order by Supplier.

2. Enforce

主たる意味としては、実施する、施行する、強いる、強要する、強める、強調する、強く主張する等の意味があります。

以下に例文を作成してみました。

Each party has the right to enforce this Agreement against the other party by temporary restraining order, injunction, or other equitable relief, without proving actual damages.

「各当事者は、実際の損害賠償を証明することなく、保全命令、差し止め、またはその他の衡平法上の救済により、相手方に対して本契約を執行する(契約を行わせる)権利を有する。」

なを、enforceは、「(人に)に~させる」の意味よりも、以下のように「施行する」、「実施する」の意味で使用される場合が多く見受けられます。

The prefecture concerned shall pay the necessary expenses for the Prefectural Governor to enforce this Act.

「都道府県知事がこの法律を施行するために必要とする経費は、当該都道府県の負担とする。」(建設業法

No person other than a party to this Agreement shall have any rights to enforce any term of this Agreement.

「本契約の当事者以外の者は、本契約の条件を実施するためのいかなる権利も有さない」

  1.  Make

「(人)に~させる」の意味では、日常的に使われる最も一般的な言葉です。もちろん英文契約書でも使用されることがあります。「(人)に~させる」という使い方では、「make + 目的語 + 原形」の形で、英文契約書の用語と単語「に~させる」の表現(その1)の例文、「The Contractor shall cause its subcontractor to carry their identification cards when conducing the site survey.」の文章に「make」を使用してみると、The Contractor shall make its subcontractor carry their identification cards when conducing the site survey. (請負業者は、現地調査を実施する際に、下請業者に身分証明書を携帯させるものとする)

「cause someone to do」が「make someone do」の形になるだけで意味は同じです。経験的には、英文契約書の場合、「make」よりも「cause」が使われています。

4. その他の表現について

「(人)に~させる」という表現は、英文契約書において以外と多く目にする機会があり、以前から取り上げてみたい内容でした。

「(人)に~させる」の意味では、上記のcompel、enforce、make、前回のcause、imposeを使った表現のほかにもさまざまな単語、表現があります。それらについては、別の機会を設けて見てみたいと思います。

参考図書:

カレッジライトハウス英和辞典(研究社)

英和大辞典(研究社)

ビジネス法律英語辞典 日経文庫

日本法令外国語訳データベースシステム

 

英文契約書の用語と単語 「に~させる」の表現 (その1)-cause、imposeを使った場合

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日常でも「(人)に~させる」という表現を使うことがあります。英文契約書では、当事者も契約内容を順守・履行するが、その関係者にも契約内容を順守・履行させるという内容を様々な単語・用語で表現します。

その中から今回は、「cause」と「impose」を使って「(人)にも行わせる」の表現を契約書翻訳の観点から見てみます。

「cause」は、名詞では、原因、理由、根拠、正当な理由、主張、主義、訴訟などに意味があり、動詞として「に~させる」、「~の原因となる」、「~を引き起こす」,「~をもたらす」の意味があります。下記は「に~させる」について作成した例文です。

Party A will hold and will cause their respective representatives to hold in confidence all documents and information concerning the Party B furnished to Party A.(甲は、乙が甲に提供したすべての文書及び情報の機密を保持し、また、自社の各々の代表者にもその機密を保持させるものとする。)

Party A shall keep and shall cause each related party to keep confidential, and cause its affiliates and subseries to keep confidential, all information relating to Party A’s businesses(甲は、甲の事業に関連するすべての情報を秘密に保持し、また各関係者にも秘密として保持させ、またその関連会社および子会社にも秘密として保持させるものとする。)

The Contractor shall cause its subcontractor to carry their identification cards when conducing the site survey. (請負業者は、現地調査を実施する際に、下請業者に身分証明書を携帯させるものとする)

Party A shall cause its customers to agree the safety management rules listed in the following Table 1.(当事者Aは、顧客に次の表1に記載の安全管理基準に同意させるものとする。)

In the event that the Minister of Agriculture, Forestry and Fisheries deems necessary, he/she shall cause its employees to cooperate with Prevalence Reconnaissance Business by prefectures. (農林水産大臣は、必要があると認めるときは、その職員をして都道府県の発生予察事業に協力させる。)(種苗法

この「cause somebody to do」のほかに、「に~させる」「compel somebody to do」、「force somebody to do」などがあります。

2. Impose.

語源的には、「上に置く」の意味合いがあるため、(政府等の強制力があるentityが)(制裁・税・罰金などを)(人・物に)課する、強制する。(責任・負担などを)(人などに)負わせる,押しつける等の意味があります。

経験的に英文契約書で良く見かける「impose」の用法は、主に「~に~を課する」、「~に~を強いる」が多いようです。

The distributor shall provide repair services without imposing a financial burden on customers(販売代理店は、顧客に金銭的負担を強いることなく、修理サービスを提供する)なを、この文章は通常、こんな感じになります。「The distributor shall provide customers with repair services without cost.」

The Government imposed the high taxation. (政府は高い税を課した。)

作成した下記の例文は、「impose」の用法としてよく目にするものです。

The parties hereto shall impose the same obligation of the Confidentiality equivalent to that of this Agreement on third party and shall assume the responsibility to cause the third party to observe it.(本契約の両当事者は、第三者との間において本契約におけるものと同様の義務を負わせ、これを順守させる義務を負う。)

The Company may impose additional security requirements from time to time by written notice.(会社は、書面による通知により適切な時期に追加の安全要件を課すことができる。)

Party A reserves the right to impose a late penalty interest according to delay damages under Civil Code.(会社は、 民法の損害遅延金に関する条項に基づき遅延利息を課す権利を留保する。)

「に~させる」または「~させる」という表現は、上記のほかにもいろいろな用語・単語を使用したものがあります。これらについては、機会を改めてとりあげます。

参考図書:

英和大辞典(研究社)

ビジネス法律英語辞典 日経文庫

英文契約書の用語・単語 establish、exclusive

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英文契約書でよく使われる単語の中から今回は、「establish」と「exclusive」を契約書翻訳の観点から取り上げてみました。

1. establish

色々な意味がありますが、英文契約書法律文書で良く目にする用法としては、「(会社・法人等など)を設立する・開設する」、「(法律など)を制定する」、「(担保権)を設定する」、「(計画など)策定する」、「実証する/確証する」等で使用されているようです。

Our company was established in 1993. (当社は、1993年に設立された)

A person seeking to establish an incorporated association must prepare articles of incorporation and include in it the following particulars:(社団法人を設立しようとする者は、定款を作成し、次に掲げる事項を記載しなければならない)(民法

There is quite a lot of work required to build an event and establish the initial communication campaign, however once set up, it is run daily without human intervention.(イベントの構築および初期の広報キャンペーンの確立のためには、極めて多くの作業が必要となるが、一度立ち上げてしまえば、人間が介入すること無く、日常的に機能していく)

Party X may establish a security interest on its property (当事者Xは、その資産に担保権を設定する)

「担保」という言葉は、security、 mortgage、 guarantee、collateral等、異なる用語で使用されます。個々の意味については、別の機会にします。

なを、「establish」の用法ではありませんが、「~を担保に供する」という表現が一般でも使われます。一例ですが例文を作ってました。

This Agreement shall be for providing the Share Certificates, etc. as a collateral(本契約は、株券等を担保として提供するものとします。)この他にも様ざまな表現があります。

2. exclusive

一般に「排他的」、「独占的」、「唯一の」などの意味で使われます。さて、ここでは一般的な使い方を見てみます。

特定の事に限定するという意味:

for the exclusive use of members. (メンバー専用)

an exclusive interview(独占インタービュー)

an exclusive private club(専用プライベートクラブ)

exclusive to the stores.(店舗限定)

an exclusive economic zone.(排他的経済水域)

exclusive of xxxで、xxxを除くという意味:

exclusive of tax(税抜きで)

相互に排他的という意味:

mutually exclusive(共存しない、一方のみが、互いに矛盾する、相互に排他的、相容れない)

英文契約書法律文書でも、多くはこれらの意味で使用されます。

経験的にan exclusive agreement/contract/deal、exclusive rights/an exclusive licenseなどが契約書では良く使用されます。

例文を作ってみました。

Either party shall have the right to request the dispute to be finally settled by arbitration in accordance with the Rules for expedited arbitrations of the Arbitration Institute of the XXX Chamber of Commerce.(いずれの当事者も、XXX商工会議所の仲裁機関の簡易仲裁の規則に従い、最終的に仲裁により当該紛争を解決することを求める権利を有する。)

Licensor is the sole and exclusive owner of the copyright and all like rights for the Licensed Territory in the products;(ライセンサーは、製品に関し許諾地域における著作権と同様なすべての権利に係わる唯一かつ排他的な所有者である。)

Company A shall sell the Products to Japan on an exclusive basis for use in the Application under the terms and conditions set forth herein. (A社は、本契約に規定の条件に基づき本アプリケーションの独占的使用において本製品を日本において販売する)

参考図書:

法律英単語(自由国民社)

ビジネス法律英語辞典 (日経文庫)

英和大辞典(研究社)他

Japan Law Translation