英文契約書の用語と単語 「に~させる」の表現 (その2)-compel、enforce、makeを使った場合

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英文契約書で良く見かける用語と単語に関して、前回と同様に使役動詞「~させる」の使い方と使い分けについてです。今回は、英文契約書の用語と単語 「に~させる」の表現 (その1)-cause、imposeを使った場合として、例文を通して、英文契約書での用例を見てみました。今回は、「に~させる」の表現(その2)として、compel、enforce、makeその他を使った表現を契約書翻訳の観点から見てみます。多くの場合、使役動詞を契約書で使用するケースは、「契約当事者も契約内容を守るが、契約当事者の関係者にもその契約内容を守らせる」ということを約するために使用されます。

1. Compel

「(人)に~させる」の意味では、compelはどちらかというと、「無理に~させる」、「強いる」、「強いて~させる」の意味になります。

具体的には、「compel someone to do」の形で、例えば、The Government may compel a person who enters this country to conform to the rules applicable to such person.(政府は、この国への入国者に、入国者に適用される規則に従うように強制することができます。)

また、「compel someone to 名詞」の形で、「強いて〔ある行動を〕とらせる」の意味で使われます。例えば、Buyer shall have the right to compel Supplier to specific performance of the Order.(バイヤーは、サプライヤーによる注文の特定の履行を強制する権利を有するものとします。)なを、本題から外れますが、以下のように書くこともあります。Buyer shall have the right to compel specific performance of the Order by Supplier.

2. Enforce

主たる意味としては、実施する、施行する、強いる、強要する、強める、強調する、強く主張する等の意味があります。

以下に例文を作成してみました。

Each party has the right to enforce this Agreement against the other party by temporary restraining order, injunction, or other equitable relief, without proving actual damages.

「各当事者は、実際の損害賠償を証明することなく、保全命令、差し止め、またはその他の衡平法上の救済により、相手方に対して本契約を執行する(契約を行わせる)権利を有する。」

なを、enforceは、「(人に)に~させる」の意味よりも、以下のように「施行する」、「実施する」の意味で使用される場合が多く見受けられます。

The prefecture concerned shall pay the necessary expenses for the Prefectural Governor to enforce this Act.

「都道府県知事がこの法律を施行するために必要とする経費は、当該都道府県の負担とする。」(建設業法

No person other than a party to this Agreement shall have any rights to enforce any term of this Agreement.

「本契約の当事者以外の者は、本契約の条件を実施するためのいかなる権利も有さない」

  1.  Make

「(人)に~させる」の意味では、日常的に使われる最も一般的な言葉です。もちろん英文契約書でも使用されることがあります。「(人)に~させる」という使い方では、「make + 目的語 + 原形」の形で、英文契約書の用語と単語「に~させる」の表現(その1)の例文、「The Contractor shall cause its subcontractor to carry their identification cards when conducing the site survey.」の文章に「make」を使用してみると、The Contractor shall make its subcontractor carry their identification cards when conducing the site survey. (請負業者は、現地調査を実施する際に、下請業者に身分証明書を携帯させるものとする)

「cause someone to do」が「make someone do」の形になるだけで意味は同じです。経験的には、英文契約書の場合、「make」よりも「cause」が使われています。

4. その他の表現について

「(人)に~させる」という表現は、英文契約書において以外と多く目にする機会があり、以前から取り上げてみたい内容でした。

「(人)に~させる」の意味では、上記のcompel、enforce、make、前回のcause、imposeを使った表現のほかにもさまざまな単語、表現があります。それらについては、別の機会を設けて見てみたいと思います。

参考図書:

カレッジライトハウス英和辞典(研究社)

英和大辞典(研究社)

ビジネス法律英語辞典 日経文庫

日本法令外国語訳データベースシステム

 

英文契約書の用語と単語 「に~させる」の表現 (その1)-cause、imposeを使った場合

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日常でも「(人)に~させる」という表現を使うことがあります。英文契約書では、当事者も契約内容を順守・履行するが、その関係者にも契約内容を順守・履行させるという内容を様々な単語・用語で表現します。

その中から今回は、「cause」と「impose」を使って「(人)にも行わせる」の表現を契約書翻訳の観点から見てみます。

「cause」は、名詞では、原因、理由、根拠、正当な理由、主張、主義、訴訟などに意味があり、動詞として「に~させる」、「~の原因となる」、「~を引き起こす」,「~をもたらす」の意味があります。下記は「に~させる」について作成した例文です。

Party A will hold and will cause their respective representatives to hold in confidence all documents and information concerning the Party B furnished to Party A.(甲は、乙が甲に提供したすべての文書及び情報の機密を保持し、また、自社の各々の代表者にもその機密を保持させるものとする。)

Party A shall keep and shall cause each related party to keep confidential, and cause its affiliates and subseries to keep confidential, all information relating to Party A’s businesses(甲は、甲の事業に関連するすべての情報を秘密に保持し、また各関係者にも秘密として保持させ、またその関連会社および子会社にも秘密として保持させるものとする。)

The Contractor shall cause its subcontractor to carry their identification cards when conducing the site survey. (請負業者は、現地調査を実施する際に、下請業者に身分証明書を携帯させるものとする)

Party A shall cause its customers to agree the safety management rules listed in the following Table 1.(当事者Aは、顧客に次の表1に記載の安全管理基準に同意させるものとする。)

In the event that the Minister of Agriculture, Forestry and Fisheries deems necessary, he/she shall cause its employees to cooperate with Prevalence Reconnaissance Business by prefectures. (農林水産大臣は、必要があると認めるときは、その職員をして都道府県の発生予察事業に協力させる。)(種苗法

この「cause somebody to do」のほかに、「に~させる」「compel somebody to do」、「force somebody to do」などがあります。

2. Impose.

語源的には、「上に置く」の意味合いがあるため、(政府等の強制力があるentityが)(制裁・税・罰金などを)(人・物に)課する、強制する。(責任・負担などを)(人などに)負わせる,押しつける等の意味があります。

経験的に英文契約書で良く見かける「impose」の用法は、主に「~に~を課する」、「~に~を強いる」が多いようです。

The distributor shall provide repair services without imposing a financial burden on customers(販売代理店は、顧客に金銭的負担を強いることなく、修理サービスを提供する)なを、この文章は通常、こんな感じになります。「The distributor shall provide customers with repair services without cost.」

The Government imposed the high taxation. (政府は高い税を課した。)

作成した下記の例文は、「impose」の用法としてよく目にするものです。

The parties hereto shall impose the same obligation of the Confidentiality equivalent to that of this Agreement on third party and shall assume the responsibility to cause the third party to observe it.(本契約の両当事者は、第三者との間において本契約におけるものと同様の義務を負わせ、これを順守させる義務を負う。)

The Company may impose additional security requirements from time to time by written notice.(会社は、書面による通知により適切な時期に追加の安全要件を課すことができる。)

Party A reserves the right to impose a late penalty interest according to delay damages under Civil Code.(会社は、 民法の損害遅延金に関する条項に基づき遅延利息を課す権利を留保する。)

「に~させる」または「~させる」という表現は、上記のほかにもいろいろな用語・単語を使用したものがあります。これらについては、機会を改めてとりあげます。

参考図書:

英和大辞典(研究社)

ビジネス法律英語辞典 日経文庫

英文契約書の用語・単語 establish、exclusive

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英文契約書でよく使われる単語の中から今回は、「establish」と「exclusive」を契約書翻訳の観点から取り上げてみました。

1. establish

色々な意味がありますが、英文契約書法律文書で良く目にする用法としては、「(会社・法人等など)を設立する・開設する」、「(法律など)を制定する」、「(担保権)を設定する」、「(計画など)策定する」、「実証する/確証する」等で使用されているようです。

Our company was established in 1993. (当社は、1993年に設立された)

A person seeking to establish an incorporated association must prepare articles of incorporation and include in it the following particulars:(社団法人を設立しようとする者は、定款を作成し、次に掲げる事項を記載しなければならない)(民法

There is quite a lot of work required to build an event and establish the initial communication campaign, however once set up, it is run daily without human intervention.(イベントの構築および初期の広報キャンペーンの確立のためには、極めて多くの作業が必要となるが、一度立ち上げてしまえば、人間が介入すること無く、日常的に機能していく)

Party X may establish a security interest on its property (当事者Xは、その資産に担保権を設定する)

「担保」という言葉は、security、 mortgage、 guarantee、collateral等、異なる用語で使用されます。個々の意味については、別の機会にします。

なを、「establish」の用法ではありませんが、「~を担保に供する」という表現が一般でも使われます。一例ですが例文を作ってました。

This Agreement shall be for providing the Share Certificates, etc. as a collateral(本契約は、株券等を担保として提供するものとします。)この他にも様ざまな表現があります。

2. exclusive

一般に「排他的」、「独占的」、「唯一の」などの意味で使われます。さて、ここでは一般的な使い方を見てみます。

特定の事に限定するという意味:

for the exclusive use of members. (メンバー専用)

an exclusive interview(独占インタービュー)

an exclusive private club(専用プライベートクラブ)

exclusive to the stores.(店舗限定)

an exclusive economic zone.(排他的経済水域)

exclusive of xxxで、xxxを除くという意味:

exclusive of tax(税抜きで)

相互に排他的という意味:

mutually exclusive(共存しない、一方のみが、互いに矛盾する、相互に排他的、相容れない)

英文契約書法律文書でも、多くはこれらの意味で使用されます。

経験的にan exclusive agreement/contract/deal、exclusive rights/an exclusive licenseなどが契約書では良く使用されます。

例文を作ってみました。

Either party shall have the right to request the dispute to be finally settled by arbitration in accordance with the Rules for expedited arbitrations of the Arbitration Institute of the XXX Chamber of Commerce.(いずれの当事者も、XXX商工会議所の仲裁機関の簡易仲裁の規則に従い、最終的に仲裁により当該紛争を解決することを求める権利を有する。)

Licensor is the sole and exclusive owner of the copyright and all like rights for the Licensed Territory in the products;(ライセンサーは、製品に関し許諾地域における著作権と同様なすべての権利に係わる唯一かつ排他的な所有者である。)

Company A shall sell the Products to Japan on an exclusive basis for use in the Application under the terms and conditions set forth herein. (A社は、本契約に規定の条件に基づき本アプリケーションの独占的使用において本製品を日本において販売する)

参考図書:

法律英単語(自由国民社)

ビジネス法律英語辞典 (日経文庫)

英和大辞典(研究社)他

Japan Law Translation

英文契約書の用語 単語 「entitle」その2

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契約書の翻訳をする際に「entitle」という言葉を目にします。今回は、「entitle」を取り上げてみます。この言葉は、以前、英文契約書の用語 単語編 No. 35で一度取り上げたことがありますが、今回、再度、別の観点から取り上げてみます。

話がそれますが、テレビで野球を見ている時に、「エンタイトルツーベース」とアナウンサーが絶叫しているときがあります。そのまま訳すと「entitled two-base」だと、「ツーベースの資格がある、その資格が与えられる」となります。何かのおかげで二塁まで出塁できるヒットという意味で使われているようですが、「entitled two-base」または「entitled two-base hit」は、和製英語です。英語では、Ground-rule Doubleとなります。ただし、和製英語の中でも「entitle」の意味をそれなりに把握した和製英語です。

1. entitleの意味の復習

「entitle」は、名詞「title」からできた動詞です。名詞の「title」には「肩書き」、「権利・資格」という意味もありますが、それに接頭語「en-」を付けて、「entitle」という動詞になります。

このような形式の名詞から動詞には、「body」に接頭語「em-」を付けて、embodyとなるものがあります。

ちなみに、embodyの主な意味は、「具体的に表現する」、「具体化する」、「具現化する」、「まとめる」、「統合する」という意味があります。何かにボディを与え、具体的なものにしていく、具現化していくとなります。

「entitle」を使った熟語が、「entitle 目的語 to 名詞」です。この場合の目的語は「人」であり、名詞の部分が〔…の〕であり、人に~の権利(資格)を与えるになります。

The Child will establish the Trust and entrust the proceeds of the Loan to the Trust(「子」が「信託」を開設し、「債権」の収益を「信託」に委託します。

Recipient further acknowledges that XXX has treated such Proprietary Information as confidential and secret information that XXX entrusts to Recipient in strict confidence.

(さらに、XXXが「受領者」に極秘として委ねた機密情報および秘密情報として、XXXが、当該「財産」に関する情報を取り扱ったことを「受領者」は、承認する)

When Products are entrusted to the LICENSEE within the framework of the bailment procedure provided in Schedule 4, (スケジュール4に規定される委託手続き(bailment procedure)の範囲内で、商品が、ライセンシーに委託された場合、)

ここから、「誰か(A)に何か(B)をすることができる資格や、何か(B)を所有する権利を与える」という意味になります。この使い方は、契約書では、概して受動態の「A be entitled to B」の形式で使用することが多々あります。この形式だと長い文章では、意味がとりにくい時があります。その場合、いったん、能動態に直してみると訳しやすくなります。

例として、上記の文章(When Products are entrusted to the LICENSEE within the framework of the bailment procedure provided in Schedule 4, )を能動態にすると、以下のようになります。

When xxx entrusted Products to the LICENSEE within the framework of the bailment procedure provided in Schedule 4,

上記は、余り込み入った文章ではないので、分かりやすくなった感がないかもしれませんが、修飾が多い文章である場合、格段に読みやすさが違ってきます。

その他、英文契約書を読んだり、書いたりするうえで、意味「AにBの資格[権利]を与える」とい意味で使用されることをも多く見受けられます。「誰か(A)に何か(B)をすることができる資格や、ものなど何か(B)を所有する権利を与える」という意味の熟語です。また、受動態の「A be entitled to B」も多く使われます。

2. 「entitle」以外の単語を使用した同様な表現

「~の権利[資格]を与える」、「権利[資格]を与える」等の意味では、「entitle」のほかにも「grant right to」、「give a right to」等、さまざまの用語があります。

All employees are entitled to receive all company benefits. (全授業員は会社のすべての福利厚生を受ける資格がある(権利を与えられている))

The buyer shall be entitled to transfer any rights deriving from this Agreement.

(買主は、本契約から得られた権利を譲渡する権利が与えられている。)

なを、「権限を与える」の意味では、英文契約書の用語 単語編 No. 35の中でいくつかの例として、「empower」、「authorize」、「give an authority」、「grant a power」等があることを書きましたが、具体例は、別の機会でということでした。今回、これらの用語について以下に使用例として簡単な例文を作成してみました。

The manufacture shall not grant rights to the Products in whole or in part to third party. (製造業者は、第三者に製品の全部または一部の権利を付与しない)

It shall not grant any right to make protest against the termination of employment. (解雇に抗議する権利を付与するものではない)

It shall give authority to ~(~に権限を与える)

The court may empower a supervisor to give approval in lieu of the permission set forth in the preceding paragraph.

(裁判所は、監督委員に対し、前項の許可に代わる承認をする権限を付与することができる。)(会社更生法

The contracting officer is futurized to enter into the contract(契約担当官は契約を締結する権限を与えられている)

参考図書

ビジネス法律英語辞典 (日経文庫)

英和大辞典(研究社)

法律英単語(自由国民社)他

英文契約書の用語・単語 Clear

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英文契約書の用語・単語の中からClearを取り上げてみました。単語Clear自体は、一般的、日常的な単語で、英文契約書でそれほど頻繁に目にすることなく、特にとりあげる予定もなかったのですが、最近、目にすることが何度かあり、今回は、Clearについてその元になる意味と英文契約書の中でどのように使用されるか、例文を通して、契約書翻訳の観点から見てみます。

1. Clearの成り立ちと意味

まずは、Clearそのものの持つ意味を改めて確認します。

clar, cleaは、ラテン語clare「明るくする、明確にする」が語源です。

ラテン語clareを基にして「きれいな」という意味の英単語clear, clean等が発生しました。

その他 Clareから生まれた派生語

例えば以下があります。

acclare:明確にする、明示する

接頭辞「ac-」には、~の方に向かってという意味があるため、clearな方向に向かってということから、「明確にする」という意味になりました。

declare: 明らかにする、宣告する

接頭辞「de-」は、「下に(down)」という意味を表す意味があるため、「下知する」つまり「宣言する」という意味になりました。(個人・団体・国家などが、意見・方針などを外部に表明すること。)

形容詞として: Clear

綺麗な、澄んだ、透明な、明るい、はっきりした、明瞭な、明晰な、障害のない、空っぽの、開いている、免除された、潔白な、全くの、晴れた等の意味があります。

動詞としての: Clear

「他動詞の場合」

~を綺麗にする、クリアする、全て取り除く、消去する。明確にする、はっきりさせる。通過する、通り抜ける。~の審議を通過する。返済する、清算する。

「自動詞の場合」

澄む、綺麗になる。晴れる。通過する。

副詞としてのクリア: Clearly

はっきりと、疑いもなく、明らかに、明りょうに等の意味があります。

一般的な用法のいくつかの例:

I cleared the table. テーブルを綺麗にした。(テーブルの上を片付けた。つまり何もない状態にする。)

Cleared the snow from the roof. (屋根から雪を取り除いた。屋根から雪を下した。もう雪はない。)

The draft cleared through (the) committee. 草案が委員会の審議を通った。

~の審議を通過する。の場合は、

「pass」的な意味合いで、「ゲーム、基準をクリアする。許可を得る。」のように試験や基準を通過すること、安全に通過する意味もあります。

I clearly remember my sister’s first day of school.(私は、妹が学校に行った初めての日をはっきり覚えています)

It was too dark to clearly remember what was happening. (暗すぎて、何が起こっているのかはっきりと分からなかった)

The report clearly shows that wearing of seatbelts is quite important while driving.
(その報告書は、運転中にシートベルトを装着することが非常に重要であることをはっきりと示している、)

In Kabuki, kumadori makeup clearly indicates the type of character being impersonated.

(歌舞伎では、隈取りと呼ばれる化粧によりどのような人物が演じられているか明確に示します。)

Let’s clear up any misunderstandings. (誤解を解消しましょう。)

It is becoming clear that this would be a serious problem. (これが大変な問題なりそうなことがだんだん分かってきた。)

At last, the researchers found a clear relation between cause and effect.(研究者は、ついに明確な因果関係を発見した)

「It is clearly that ~ (that以下が明らかである。)」

3. 英文契約書等での使われ方

「英文契約書等での使われ方」といっても、Clearについては、上記の一般的用法を線引きは難しいところですが、例えば、

free and clear of any deductions, withholdings(値引きもしくは控除がなされない)

free and clear of all liens, charges and encumbrances(すべての抵当権、負債ならびに債務がない状態で)

All Products information must be indicated on the invoice in a specific and clear manner.(すべての製品情報は、インボイスに具体的かつ明確な方法で記載する必要があります。)

Shave a clear and comprehensive understanding of(明確かつ包括的に理解している)

on the basis of a clear understanding by those employees of their obligation to (~する義務を従業員が明確に理解していることに基づき)

to clear the usage of the names, likenesses, photographs and other attributes of persons (人物の氏名、肖像、写真および他の属性の使用許可を得るために)

Each entry in the section on assets in the summary of the balance sheet of the Company must be subdivided into important suitable entries for the purposes of making clear the status of the property of the Company. (会社の貸借対照表の要旨における資産の部の各項目は、公開会社の財産の状態を明らかにするため重要な適宜の項目に細分しなければならない。)会社法

上記にいくつか、契約書における例文を作ってみましたが、clearは、経験的には、副詞の形Clearlyで、「明確に」、「明らかに」、「明示的に」のように使われるのが多く、見受けられます。

例えば、、The Supplier must clearly separate the Products per lot.(サプライヤーは、ロットごとに製品を明確に分けなければならない。)

All trucks used in the transportation of waste shall be clearly marked with wording as required by any relevant legislation or authority. (廃棄物の輸送に使用するすべてのトラックには、関連する法律または当局が定める文言を明示的に記載すること。)

It clearly violates the terms of the non-disclosure agreement. (それは非開示契約の条件に明らかに違反している。)

参考図書

英和大辞典(研究社)

ランダムハウス英和大辞典(小学館)

新英和大辞典 (研究社)

The New Oxford Dictionary of English (Oxford University Press) 他

法令データベース

 

英文契約書の用語・単語 liableについて

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英文契約書の用語・単語の中で今回は、「liable」について見てみたいと思います。契約書では外せない単語の1つです。まずは、辞書で単語「liable」について主な意味を調べてみると以下の様な意味があります。

1. liableの意味

「(法律上の)責任を負うべきで」、「責任があって」、「(~義務に)服すべきで」、(「病気などに)かかりやすくて」、「~しがちで」、「…しそうで」等

実際に「liable」が使われる場合、「liable」は形容詞のため、英文契約書に限らず、多くは「liable」の頭に「be」を付け、後ろに「to」または「for」を付けた熟語「be liable to」、「be liable for」の形でよく使われます。

be liable to + 名詞または動詞。

とりあえず英文契約書や法律文書等で良く目にするbe liable toの例として、いくつか例文を作ってみました。

The Company shall not be liable for any damages other than those resulting from the obligations stipulated in this Agreement. (当社は、本契約に定める義務に起因する損害以外の損害については一切責任を負わないものとします。)

Neither party hereto shall be liable to the other party for failure to perform its obligations due to the occurrence of any act of God, fire, act of government or state, war, civil commotion, insurrection, embargo and any other reason beyond the reasonable control of either party.(本契約のいずれの当事者も、天災、火事、政府または国家の行為、戦争、内乱、暴動、禁輸、およびいずれかの当事者の合理的な制御を超えるその他の理由が生じた場合、その義務を履行しなかったことについて相手方に責任を負わないものとします。)

Neither Party shall be liable to the other for failure or delay in the performance of a required obligation. (いずれの当事者も、必要な義務の履行における不作為もしくは遅延に対し、相手方に対し責任を負うことはない。)

Neither Party hereto shall be liable to the other party for failure to perform its obligations hereunder or under any Order due to the occurrence of any act of God.

本契約のいずれの当事者も、不可抗力の発生により、本契約に基づく、または、注文に基づく相手方の不履行に対して、相手方に責任を負わせることはないものとする。

その他、法律文で使われる例として。

If a liquidator fails to discharge the liquidator’s duties, the liquidator is liable to compensate such Liquidating Stock Companies for any losses arising as a result.

(清算人は、その任務を怠ったときは、清算株式会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。)(会社法)

いずれもすでに述べた「(法律上の)責任を負うべきで」、「責任があって」の意味で使われています。

ところでこれとは別に、上記の「liable to」に関しては、以前2回ほど取り上げたことがある「subject to」が使われた英文契約書の文章を日本語にした場合、時として「liable to」を使用してある場合と同じような意味に訳せることがあります。英語のネィティブでも、「liable to」と「subject to」は同義語ではないかと思う人もいます。ただし、そこには微妙な違いがあります。以下を参照してください。

2.「liable to」と「subject to」の微妙な違い

A: In the case of “liable to”, an event is likely to happen but may not do so.

B: In the case of “subject to”, something has happened or is going to happen.

Aの「liable to」の場合、イベントが発生する可能性がありますが、発生しない可能性もあります。

Bの「subject to」の場合は、何かが起こったか、または起こりそうです。「subject to」の方が発生し易いようです。

英文契約書を作成する場合、この微妙な違いを考慮して、作成するとよいかもしれません。実際の英訳の場合、混同して使用している場合も多いようです。

上記を踏まえて、以下に、辞書から調べた「be liable to」の例文を掲載します。

3. liable toについて

be liable to~しがちだ、~しそうだ、~の傾向がある、~に傾きやすい、~する恐れがある:良くないことに用いられる表現。

・This computer is liable to break down any minute. : このコンピューターはすぐに故障する。

・He’s liable to do anything. : あいつはどんなことでもやりそうだ。

be liable to〔病気などに〕かかりやすい

be liable to~に対して責任がある、~する義務がある

be liable to a fine: 罰金を科される(可能性がある)

be liable to be wrong: 間違いやすい

be liable to criminal charges: 刑事責任に服すべきである

be liable to criminal punishment:刑事処分を受けるべきである

be liable to custom duty: 関税の対象である

be liable to err: 誤る恐れがある

be liable to make mistake: 間違いを犯しかねない

be liable to pay compensation: 損害賠償を支払うべきである

be liable to recurrence: 再発しやすい

be liable to variation: 変化しやすい

4. subject toについて

subject toの意味としは、

〈…を〉〔…に〕服従させる,従属させる, 〈人を〉〔いやな目に〕あわせる; 受けさせる, [subject oneself で] 〔…に〕身をさらす, 〈ものを〉〔…に〕当てる,かける, 受けやすくて,こうむりやすくて; 〔…に〕かかりやすくて,陥りやすくて等があります。

これらに加え、以前、ブログ「英文契約書の単語・用語 Subject toについて」で述べたように、「subject to」の立ち位置は、その後に続く内容を導入する役目を果たします。契約書の場合、例えば、subject to以降に記載の内容がacceptable(受け入れられる)であれば、その書かれた内容が受け入れられ、unacceptable(受け入れがたい)ものであれば、その書かれた内容は受け入れがたいものであることになります。

例えば、Supplier warrants that the price is not subject to increase.

(サプライヤーは、価格を値上げしないことを保証する。)

また、一般的は事実を述べるだけの場合でも、The contents of this manual are subject to change without prior notice.(本マニュアルの内容は、事前の通告なしに変更されることがあります。)

以下に、辞書から調べた「be subject to」の例文を掲載します。

be subject to〔法律・法則・規則など〕の支配下[影響下]にある

・This Agreement shall be subject to the laws of Japan. : 本契約は日本国の法律に従うものとする。

be subject to〔政府【機関】・管理組織など〕の認可[承認]を必要とする[受けることを条件とする]

be subject to ~しがちである、~の癖がある

be subject to~にさらされる、~を被る

・This region is subject to earthquakes. : この地域は地震が起こりやすい。

・The terms of the contract are subject to change. : 本契約の条件は変わることがあります。

be subject to~次第である、~に依存する

be subject to a $__ fine: _ドルの罰金を科せられる

be subject to a custom duty: 関税対象である

be subject to a major change: 大幅な変更の可能性がある

be subject to a special rule: 特別規則[ルール]の対象になる

be subject to a variety of influence: さまざまな影響を受けることになる

be subject to additional fee:追加料金の対象となる

be subject to adverse effect:弊害[悪影響]を受けることになる

be subject to an annual review:毎年見直される

be subject to appropriate criminal:しかるべき刑事処分を受けさせられる

be subject to approval by: (人)の承認を得ることを条件として

 

「liable to」と「subject to」について見てみました、英文契約書に限らず、これら2つの単語の意味を感覚的に理解するための一助になればと考えました。

参考図書

ランダムハウス英和大辞典(小学館)

新英和大辞典 (研究社)

The New Oxford Dictionary of English (Oxford University Press) 他

 

英文契約書の単語・用語 Subject toについて

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Subject toは、英文契約書でも良く使用される用語の1つですが、英文契約書以外でも日常的に良く目にすることがあります。契約書翻訳の観点から見てゆきます。

1. Subject の意味

例えば、マニュアルなどに

The contents of this manual are subject to change without prior notice.

(本マニュアルの内容は、事前の通告なしに変更されることがあります。)

契約書翻訳の観点から「Subject to」について見て行く前に、単語「Subject」について改めてその意味を確認してみます。

Subjectとは、Random House®によると以下の大まかな意味があります。

a.主題、問題、課題、話題

b.学科、科目

c.対象、

d.題目、題材

e.テーマ

f.臣下、家来

g.被験者

2. Subjectにtoが付くと

単語の”Subject”の場合、主に「主題」「話題」「題材」「テーマ」等の意味で使われることが多いですが、”to”を付けて”subject to”というフレーズにすると以下の意味を持ちます。

1) ~の対象になる、~を受ける(必要がある)

2) ~を条件とし、~を前提とし、~に従い、

3) ~にさらされる、~の影響を受け易い、~に左右される、~しがちである

“Subject”は、日常的に使用する多くの場合において「主題」「話題」「テーマ」等の意味で使用するのが主であり、”to”が付いただけで元々にない意味が生じています。なにせ、アルファベットが26文字しかないためその26文字をフル稼働している感じです。だから英語は難しい

3. Subjectの語源

語源的に考えると、sub「下方に」ject「投げる‐例、inject、project、eject」が語源で、「下の立場に投げ渡す→従える、従う」ことから主語、主題以外にも「被験者、臣下」等の意味が派生しました。そのため、”subject to”では、「さらされてる」、「影響を受けやすい」または「対象となる」のように全くもって「受け身感」が漂うようになります。

ここで分かりやすくするため、以下に例文を記載します。

be subject to breakage (壊れやすい、破損しやすい)

be subject to danger (危険にさらされている)

be subject to error (誤り[間違い]が生じやすい)

be subject to a custom duty (関税対象である)

be subject to a __% tax ( _%の税金が課される)

be subject to audit (監査を受ける)

be subject to exception (例外を受ける)

be subject to availability (在庫があれば)

be subject to change (〔仕様・価格などが〕変更されることがある)

be subject to shareholder approval (株主の承認を条件とする)

be subject to the following:(下記の条件に従って)

4. 「subject to」はその後に続く内容を導入する役目を果たす

上記のように、「subject to」の立ち位置は、その後に続く内容を導入する役目を果たします。subject toの文章は、その後に続く内容が優先されるため、後に続く内容があってこそ成立すると理解すると良いのでは思います。

従って、契約書の場合、subject to以降に記載の内容がunacceptable(受け入れがたい)であれば、その文章自体が受け入れがたいものであることになります。ここが契約書を見るチェックポイントではないでしょうか?そして、カウンターオファーができる場合、カウンターオファーを行います。

5. 契約書等で見られる「subject to」を使用した例文

以下に”subject to”の文例をいくつか作成(*を除く)してみました。

Any actions or claims arising out of or related to this Agreement shall be subject to the exclusive jurisdiction Tokyo District Court for first tail

(本契約に起因または関連するあらゆる訴訟または申し立ては、東京地方裁判所を第一審の専属管轄裁判所とします。)

Supplier warrants that the price is not subject to increase.

(サプライヤーは、価格を値上げしないことを保証する。)

Any transfer of this license is subject to the following restrictions:

(本ライセンスの譲渡は、以下の制限に従います。)

*Appurtenance shall be subject to the disposition of the principal.

(従物は、主物の処分に従う。)

参考図書

新英和大辞典 (研究社)

Random House English-Japanese Dictionary (小学館)

法律英単語(自由国民社)他

 

 

 

 

 

 

 

英文契約書における文頭の否定 (その2)

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1.  英文契約書における文頭の否定

以前「英文契約書における文頭の否定」という題のブログを掲載しました。英文契約書の中には普通の文書には見られないNonという接頭語が始まる言葉が多々見られます。前回の内容からの引用ですが、例えば、「In no event shall~」に導かれるその後の文章部分は、[~でない]の意味になります。例:In no event shall someone be liable for ……………(いかなる場合も(人は)…………に関して責めを負わない。)

「In no event shall」のほかにも、文章の文頭に否定を意味する語句が置かれると、その語句に導かれる文章の内容は、否定文になります(これらの用語が文頭に置かれると、通常、その後に続く文章は、通常肯定文となります)。以前にも指摘したことですが、これは英文契約書に限らず、英文において一般的に見られることです。今回も契約書翻訳の観点から見てゆきます。

2. 文頭の否定とは

例えば、口語英語でも、「No xxx, No life」と言うように、XXXがないと生きていけないなどの表現もあります。絶対、何か欲しいとき、何かしてほしいときなどに使用します。

例えば、音楽好きなら、「No music, No life.」 お菓子が好きなら、「No cookies, No life.」、「No chocolates, No life.」

ところが、この表現(文章(または言葉)の先頭に否定を意味する語句を使う)を、苦手とする方が多いようです。ただし英文契約書の場合、契約上、例えば「あれをしてはいけない」、「これをしてはいけない」との意味で、契約の当事者、相手方、関係者に対してなんらかの規制をかける場合、良く使われます。

3. 文頭の否定と普通の否定文

そこで今回は、「文頭に否定を意味する語句が置かれ、その文章の内容を否定文にする」形式をいわゆる「普通の否定文の形にしてみたら」という観点から、以前ブログ「英文契約書における文頭の否定」で作成した用例のいつくかをいわゆる「普通の否定文の形」してました。

なを、以下に記載してある文章は、あくまで一例であり、この他にも多様で優れた表現があります。

NonやNoで始まるもの 通常の否定文にした場合
In no event shall ABC Corporation be liable for any damages caused by or in relation to this Service. In any events, ABC Corporation shall not be liable for any damages caused by or in relation to this Service.

 

(いかなる場合も、ABC Corporationは、「サービス」に起因する、または関連する損害賠償に対して責任を負わない。)
Neither we nor you will be prevented from disclosing the confidential information; Both we and you will not be prevented from disclosing the confidential information;
(当社と貴社のいずれも、以下の機密情報の開示を妨げられない。)
No party shall be responsible for ~ Any party shall not be responsible for

 

(いかなる当事者も~に責任を負わない)
None of the parties may assign or transfer any of its or their rights or obligations under this Agreement. Any of both parties may not assign or transfer any of its or their rights or obligations under this Agreement.
(いずれの当事者も、本契約に基づく当事者、もしくは各当事者の権利と義務を、譲渡または移転することはできない。)

以前にも、書いたことがありますが、例えば、チケットの変更ができない場合「チケットの変更はできない「We can make no changes~」の様に、言い切ってしまうといささか相手に対して強い調子になり、これを「No changes can be made to the tickets.」とすると一見事務的ですが、「チケットの変更はできないことになっています」事実関係を述べているだけで、「決まりですので、ご了承の程、お願いします。」というニュアンスがあります(納得しないこともあるかもしれませんが)。

なを、以下は、英文契約書で最近見かけた単語の前に「Non」が付いた用語です。訳語を載せてありますが、参考までで、同じ単語でも別の訳語もあり、翻訳者により他の訳語を使う場合も多々あります。

4. 「Non」が付いた用語の例(一部です)

例文 訳語 使用例 訳語
Non-affiliated 系列外の、非加入の nonaffiliated company

cf. affiliated company

Associated company

Subsidiary company

系列外の会社

関係会社/系列会社

関連会社

子会社

non-approved 非承認の、非認定の、未承認の Non-approved use of the Mark マークの認可適用外の使用
non-audit 監査外の non-audit services 監査外業務
Non-disclosure 非開示の Non-disclosure of Confidential Information 機密情報の非開示
Non-commercial 非商業的な only use the Software for your private, non-commercial use. 貴方個人の、非商業的な使用のみのために、本ソフトウェアを使用する
Non-confidential 非機密の It was in its possession on a non-confidential basis before receipt from the other 相手方から受領する前に、非機密として所有していたもの
Non-Conforming 不適格な、

準拠していない

Non-Conforming Products 不適格な製品/不良品
Non-disclosure 非開示の Mutual Non-Disclosure Agreement

Divulgation of the Non-Disclosure Agreement

相互非開示契約

 

非開示契約の漏洩

Non-life insurance 非生命保険/傷害保険/損害保険 Overview of the Non-Life Insurance Business in xxx Xxxにおける傷害保険業界の概説
Non-returnable 返却できない

 

Products are non-returnable except as provided in this Section 9 本製品は、本第9条に規定される場合を除き、返却することができない。
Non-refundable 返金できない

この場合は金銭のみに関する言及

Except as otherwise provided in this Article, all fees are non-refundable. 本条においてその他特段の定めのある場合を除き、すべての料金は、返金できないものとする。
Non-refundable 返金できない

この場合は金銭のみに関する言及

Except as otherwise provided in this Article, all fees are non-refundable. 本条においてその他特段の定めのある場合を除き、すべての料金は、返金できないものとする。

この他にも、Nonbinding(拘束力のない)Noncommittal(言質を与えない)

Noncompliance ((法律、規則などに)準拠しない)、不履行)

Nonconfidence(不信任)Nonconformance(従わないこと、順応(適合)しないこと)Nonconforming(従わない、順奉しない)、Non-Use-Obligations(不使用の義務)

このほかにも、多々あります。

自分で否定内容の文章を起草する場合、なれないうちは、文頭に否定の形式ではなく、いわゆる「普通の否定文」を使うのが良いかと思われます。これも以前書いたことがありますが、ネイティブが書いたドラフティングで、文頭に否定の形式があるのに、後に続く文章を否定文で書いてあるのを見かけたことがあります。おそらくドラフティングの途中で直し忘れたのではないかと思われます。

参考図書:

英和大辞典(研究社)

法律英単語 (自由国民社)

Oxford Dictionary of English他

 

 

 

英文契約書の用語:再びForce Majeure(不可抗力)について

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1. Force Majeure(不可抗力)とは

以前、英文契約書において「不可抗力」と訳される「Force Majeure(フォースマジュール)」について掲載したことがあります(英文契約書の用語、構文(その9)「Force Majeure)。この「不可抗力」とは、一般的に戦争、暴動、ストライキ等に代表される「人的災害」と政府機関の命令等、および地震、台風、洪水、水害、竜巻、疫病等の「自然災害」など、当事者に責任のない(当事者の管理に帰せられない、当事者の支配の範囲を超えた)事象により、契約の履行ができなくなった場合です。広範囲で不可抗力の内容を列挙するのが慣例ですが、「不可抗力」とは認められない範囲を別途規定する場合もあります。

2. Force Majeure(不可抗力)における免責

「不可抗力」に関する条項では、一般的には上記の不可抗力の発生原因(不可抗力事由)を列記し(定義し)、そのうえで、相手方への通知義務、、不可抗力により生じた「不履行」、「履行遅延」に対する責任についての事柄(不可抗力の影響を受けた当事者に対する免責の範囲、免責方法等)、不可抗力の影響を受けた当事者がその影響を軽減する努力を行うことおよび「不可抗力が長期にわたり継続した場合」、「長期にわたり継続した場合の契約解除(解除に要する期間を規定)」等についての対応等が記載されています。その内容は、個別の契約により異なります。一般には、「不可抗力」が発生しても支払い債務は免除されないため、その点についても規定されます。

3. Force Majeure(不可抗力)の例文

以前作成した例文を元に、簡単なものですが不可抗力の条項について例文を作成してみました。

「Force Majeure means any event caused by occurrences beyond a party’s reasonable control, including, but not limited to, acts of God, fire or flood, earthquake, war, terrorism, labor dispute, pandemic, system malfunction, governmental regulations, policies or actions enacted or taken subsequent to execution of this Agreement, or any labor, telecommunications or other utility shortage, outage or curtailment.」

(不可抗力とは、天災、火災もしくは洪水、地震、戦争、テロ、労働争議、世界的流行病(パンデミック)、システムの機能不良、本契約の締結後に制定された、もしくは講じられた政府の規制、方針もしくは法的措置、または労働、通信もしくは他のガス電気水道等の公共事業の供給不足、供給停止もしくは供給の削減を含み、これらに限定されない、当事者の合理的な管理能力を超えて発生した事象を意味する。)

「Neither Party hereto shall be liable to the other party for failure to perform its obligations hereunder due to Force Majeure.」

(本契約のいずれの当事者も、不可抗力により、本契約に基づくその義務の不履行に対して、相手方に責任を負わせることはないものとする。)

「If the Force Majeure condition continues for 90 days or more, either party may terminate this agreement upon written notice to the other party」(不可抗力の状態が90日以上継続する場合、いずれの当事者も相手方に対する書面の通知により、本契約を解除することができる。)

「Raw material or labor shortages shall not be considered as force majeure events.」(原材料または労働力不足は、不可抗力事由としない。)

The provisions of this Article shall not waive the payment obligations that will become due hereunder(本条の規定は、本契約に基づき支払期日が到来する支払債務を免除しない。)

英文契約書に不可抗力条項がない場合は、当事者間の話し合いによる解決のほか、ウィーン売買条約(日本では2009年8月発効)の適用が可能性としてあります(同条約の「損害賠償」、「免責」および「解除の効果」等-同条約の規定では、契約の不履行が不可抗力によることが証明できれば免責を受けられます。)。ただし、相手方の国が同条約に未加入または契約に同条約を適用していない場合、別途準拠法を定めている場合は、同条約は適用されません。

なを、以前、「delay」(遅延、遅滞)について書いたことがあります(英文契約書の用語(単語編)No.21)。不可抗力事象が生じた場合の履行遅延にも関係します。

これまでのブログは、契約書翻訳という観点から覚えておくべき単語・用語等についての意味合いで書いてきました。以前、「不可抗力の条項」について書いたのは、東日本大震災からしばらく後でした(その時は、いずれ発生が確実視されている地震災害(東南海、南海トラフ、首都直下型など)や台風等の気象災害を懸念しましたが)。「不可抗力に関する条項」についても、本来は覚えておくべき単語・用語という観点から書いたものでした。今回の「コロナウィルス」による世界的混乱は、改めて英文契約書における不可抗力の条項の存在意義を認識している次第です。このブログを書き終わろとしたとき、WHOから当該ウイルスにいての「パンデミック」宣言がなされました。現在のような状況(不可抗力を実際に適用するような事態)は、一日でも早く終息してほしいものです。

参考図書

  • 法律用語辞典 有斐閣
  • 英和中辞典 研究社
  • コンパクト六法 岩波書店
  • Oxford Dictionary of English
  • 法律英単語 自由国民社他

英文契約書の用語(単語編)再びCreditについて

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再び「Credit」について

英文契約書の翻訳において経験上、よく目にしたり、よく使われたり、または知っておいて損はないと思われる単語と用語について、契約書翻訳の観点から見てきました。

その中で、単語「Credit」については、英文契約書でも意外と重要な記述のある部分で使用されることもある他、日常生活でもそれなりに使用されています。

当ブログでも

など、折に触れてとりあげてきました。

1 様々な意味を持つ「Credit」

以前も書いたことがありますが、「Credit」については、英文契約書の翻訳の観点からは、例えば、credit(債権、信用、信用貸し、貸方)、credit to the capital(資本への組入れ)、credit $ to(ドルを~の口座に入金する)等、主に「債権」、「債務」の問題としてとらえることが一般的です。この前提に立った場合でも、英文契約書で単語「Credit」遭遇すると、文脈上の理解があるにしても、その「Credit」が実際に何を表したいのか、正確なところを把握するためにその箇所で一旦立ち止まって考えることがあります。その理由の1つとして、契約書に書かれている「Credit」が、「債権」、「債務」を直接に表していない、またはこれにかかわっていないこともあるからです。

「Credit」について改めて辞書を見ると、上記の契約上の「債権」、「債務」の意味のほかに、名詞では「信用、名声、評判、名誉、賞賛、預金額」、動詞では、「~を信じる、功績を認める、~の名義・所有で」等の意味があります。(ここに記載した以外にも多様な意味を持ちます。)

例えば、a man of credit = 評判の良い人、I have credit of $100,000 at his bank = 銀行に10万ドルの預金がある。they could not credit his story = 皆、彼の話は信用できなかった。He is credited as a genius painter = 彼は絵の天才であると信じられている。He is credited with contribution to society = 彼は社会への貢献が認められた。もちろん「Credit」を使わなくても「彼は絵の天才であると信じられている。」= He is recognized for his contribution to society.などとすることができます。

2 債権・債務に関する意味

ついでにお金に関することがらでは、例えば、「お金を入金する」という意味で、The bank credits him with \1,000,000. = 銀行は彼に1,000,000円を入金した(銀行は彼に1,000,000円を貸した)となります。この例だと、辞書には、「信用する、〈ある金額を〉〔人の〕貸し方に記入する(to)」等と記載されていますが、慣れないとピンとこないことが多い様です。「債権」、「債務」といっても、例えば、分かりやすく「お金」でいえば、お金を貸した側からみれば、債券、借りた側からみれば債務となります。

3 感覚的な理解も必要

いずれにしても「Credit」については、慣れないととらえどころがないようにも思えます。以前書いた「ネコとCreditについての話」で「Cats are not given enough credit.」という一文について、「ネコは、十分に認められていない」=「ネコは、正当な評価を受けていない」と解釈しました。(詳しくは「ネコとCreditについての話」)。

今回、またまた、ツイッターのフォロワーさんからの投稿で、2匹の犬が1本の棒を仲良く口にくわえている写真が掲載されたツィートがありました。このキャプションは「Two friends sharing equal credit for capturing a stick」というものでした。この写真を掲載した経緯の説明はありませんが、ここにおける「Credit」(名詞)は「名声、評判、名誉」の意味で使われています。

写真では見えませんが「しっぽ、フリフリ」で自慢げにご主人様に獲物の枝を見せて、ご主人様の「オー、良し良し」という賞賛の声が聞こえてくるようです。

「二人は友達だから、獲物を取ったお手柄(名誉)も半分ずつに同じように分け合います。」のように訳せるのではないでしょうか。このあたり、「Credit」を感覚的に理解していないと、この場合の「Credit」の意味をとらえるのは難しいかもれません。そのようなことから、1つの単語について多くの文例に接して理解を深めること(「Credit」を例にとれば文脈や状況・その背景にあるもの(時として画像・音声等から、)からそこで使われているその意味を感覚的に把握すること)が必要かもしれません。

(この画像は本文とは関係ありません。)

参考図書

  • 英和大辞典(研究社)BUSINESS ENGLISH  (BARRON’S)The New Oxford Dictionary of English(Oxford Unfiversity Press)