美の宴

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本日、8月20日が最終日の、ホテルオークラで開催されている「美の宴」を鑑賞してまいりました。

【美の宴 ~琳派から栖鳳、大観、松園まで】と銘打ち、

第1章~奏でる~、第2章~舞い踊る~、第3章~集う~と「宴」に集う人々が舞い、奏で、楽しみを共有するイベントである宴を心行くまで堪能するという趣向で名画が参集していました。

琳派の俵屋宗達、酒井抱一を始めとし、上村松園、竹内栖鳳、伊東深水、小磯良平、横山大観、河合玉堂、下村観山、前田青邨等の江戸期から現代にいたるまでの日本画家を始めとしたたおやかな優しい色使いから、アンリマチスの奔放な色のほとばしりまで、見る機会をいただけました。

ホテルオークラの本館が、「新しいホテルオークラへ」へ

1962年の開業以来、「世界をもてなすホテル」と称されてきたホテルオークラ東京の本館が、2015年9月より建替えを行い、2019年春にリニューアルされるとのことです。本日は、中をじっくりと拝見させていただきたかったのですが、仕事が一段落したので、少しお時間をいただいて事務所から直接ホテルオークラ向かい、仕事場に帰社いたしました。雰囲気を堪能させていただきました。

券が2枚ありましたが、友人が行けないということで、美術館の入り口でお会いした方に、1枚差し上げました。

英文契約書の用語、構文 (その18) 「in witness」、「whereas」、「now, therefore」、「Recitals」

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ブログということで、その時に頭に浮かんだり、思いついたりしたことを書いているためと、書き手によっても、その時に書きたいことがあるため、「英文契約書の用語、構文」という仰々しい表題の割には、全体としての整合性もなく、順序立てた説明がなされた内容ではありません。ただし、、契約書やマニュアルといった、原文の忠実に訳すことが求められることが多い側としては、思いつき的に何かを書くことができるというのは、一種の息抜きになることがあります。

今回は、「in witness」、「whereas」、「now, therefore」、「Recitals」について契約書翻訳の観点から見てみます。前回、「whereof」が英文契約書の結びの冒頭で使われる場合について、以下の例文を作成しましたが、この中で、「IN WITNESS」は、「~を証するために」の慣用句です。いずれもいささか古めかしい表現ですが、伝統的なスタイルで英文契約書において一般的に使われています。

1. 「in witness」

IN WITNESS WHEREOF, the parties hereto have executed this Agreement …………」(本契約を証するために、本契約の両当事者は…………)

なを、「witness」の古い形である「witnesseth」が英文契約書の前文に「(本契約は)以下を証するものとする」の意味で使われている場合も相変わらず見受けられます。

「in witness whereof」と同じ意味で「in witness hereof」も「~(以上)の証として」の意味で使われています。

2. 「whereas」、「now, therefore

英文契約書の前文」には、「witnesseth」の他に、「whereas」、「now, therefore」など、英文契約書の結びの部分と同様伝統的なスタイルの用語が使われているのが良く見受けられます。「whereas」は、契約を締結するに至る経緯や契約当事者についての説明等が書かれています。そのため、「説明条項」などと言われますが、「whereas」それ自体を訳さないこともあります。例えば、

WITNESSETH

WHEREAS,

for many years, ABC Company is has sold XYZ products (hereinafter referred to as the “Product”)  through xxxxxxxx market in the world and desires to sell the products…………

(ABCは、長年にわたり、xxxxxxxx市場を通じて、XYZ 製品を世界中で販売しており、「製品」を販売することを希望している。)

WHEREAS,

EFZ Company is willing to purchase the product form ABC Company …………

(EFZは、ABCから「製品」を購入する意思がある。)

NOW, THEREFORE, in consideration of mutual agreement specified in this Agreement, the parties agree to the following:

(よって、本契約が規定する双方の合意を約因として、両当事者は、以下に関して合意する。)

などと記載されます。「Consideration」については、以前「英文契約書の前文」で触れたことがあります。

上記の例文は、フォーマルな形式の一例として作成してみましたが、とくに、これらのスタイルを踏まなくても、例えば、上記の例では、製品の引き渡しと代金支払いが明確に規定されていれば、問題ありません。

3. 「Recitals

上記の部分(英文契約書の頭書と説明条項)を「Witnesseth」と「Whereas」を使わず、以下のように「Recitals」(経緯)として記載することもあります。

     RECITALS

ABC Company desires to sell ………….

EFZ Company is willing to ………….

 これも、伝統的なスタイルです。

参考図書:

ランダムハウス英和大辞典(小学館)
ビジネス法律英語辞典(日経文庫)
Business English (Barron’s)
The New Oxford Dictionary of English (Oxford University Press)

 

英文契約書の用語、構文(その17)「free from….」、「in duplicate」、「whereof」

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英文契約書における独特の用語、構文について、今回は、「free from」、「in duplicate」、「whereof」です。

1. 「free from….」(~がない)

良く使用される代表的な慣用表現です。意味としては、「~がない」です。いろいろな場面で使われます。例えば、以前「売買契約」を構成する条項の1つ「Sample」(見本)について作成した以下の例文があります。技術文や日常的な文章でも使用されます。

「The Products to be delivered hereunder shall be free from defects and faulty materials and correspond with any sample and conform to any description, instructions, specifications and other conditions agreed between the parties 」(本契約に基づき引き渡される製品は、瑕疵がなく、材料にも欠陥がなく、サンプルと一致し、説明書、指示書、仕様書および両当事者間で合意したその他の条件に準拠する(抄訳))

見て通り、この例文では、「The Products to be delivered hereunder shall be free from defects and faulty materials (……………製品は、瑕疵がなく、材料にも欠陥がなく)」のように使用されます。これも製品についてですが、「The Products shall be free from defects in material and workmanship……………」(材料と仕上がりに関していかなる瑕疵もないこと)

そのほかにも、「Payments shall be made by bank transfer to Party B’s account free from any charge」(支払いは、手数料なしに、Bの口座に銀行間振替で行われる)

「This real estate shall be free from defects in title」(本不動産には、所有権に瑕疵がない)。

契約書に限らず「~がない」という意味では、枚挙にいとまがないほど、いろいろな例があり、多く使用されます。ほんの一例ですが、「No one is free from faults」(欠点のない人はない)とか、「He is free from care」(苦労がない)「He is never free from care」(苦労がないはずがない)とにかくいろいろあります。「free from….」(~がない)は、使い方を覚えると、とても便利な用語です。

2. 「whereof」

これも英文契約書の末尾で良く見かける用語です。契約書の場合は、「本契約の=of this Agreement」です。

例えば、「IN WITNESS WHEREOF, the parties hereto have executed this Agreement …………」(本契約を証するために、本契約の両当事者は…………)と英文契約書の結びの冒頭で使われます。

3. 「in duplicate」(正副2通(部)に/2部)

「in duplicate」の使い方の1つとして、例えば、上記のように英文契約書の結びの部分で、「the parties hereto nave caused this Agreement to be executed in duplicate by their duly authorized representatives.」(本契約を証するために、本契約の両当事者は,正式な代表者により正副2通に署名し、本契約を発効させた。)のように使われます。

時たまみかけますが、3者間の契約では、「 to be executed in triplicate by their duly authorized representatives.」となります。

その他、英文契約書に限らず、契約では、各種書類を用意し、またそれらを提示する旨の記載があります。このときに、「in duplicate」、「in triplicate」の使い方の1つとして必要とされる書類の部数を表すのに、使用されることがあります。

「Party A shall submit commercial invoice in duplicate……….」(当事者Aは、商業送り状を2部提出する)

「The technical documents should be submitted in triplicate」(技術文書は,3通提出しなければならない)

もちろん、「in duplicate」、「in triplicate」を使わずに、例えば、「Two original copies of the Agreement shall be signed………」(本契約原本2通に署名し………)などもあります。

法律英単語(自由国民社)

ランダムハウス英和大辞典(小学館)

カレッジライトハウス和英辞典(研究社)

 

 

英文契約書の用語、構文(その16)「without prejudice to ~」「calendar days」、「business days」, 「business hours」

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英文契約書の慣用表現 (without prejudice to ~、calendar days、business days、business hours)

英文契約書で使われる慣用句的な用語 ― いわゆる、リーガルジャーゴン(Legal Jargon)の中で、前回は「null and void」、「assign and transfer」などを取り上げました。今回は、「without prejudice to ~」「calendar days」、「business days」, 「business hours」について見てみます。契約書翻訳の視点から概説します。

1. 「without prejudice to ~」(…を侵害せずに、そこなわずに、…の不利益とならないように、…影響を与えることなく)

かつての辞書を見ると、「…を毀損することなく」と難しい漢字で意味が記載され、たしか、改正前の民法でも、最近までこの漢字を使用していたような記憶があります。その名残か、今でも「毀損」という漢字を使う場合をたまに見かけます。

いずれにしても、英文契約書の慣用表現の1つです。この条項が置かれる理由の1つは、例えば、相手方に契約違反があり、その相手方に損害賠償を求めることができることが契約上規定されている場合、その契約が解除されても、損害賠償を求めることができる権利は引き続き有効であり、また、損害賠償以外の他の救済手段にも契約解除は影響しないというあたりでしょうか。(1つには、ある理由で契約を解除する場合、「当該契約解除により、契約締結以前(元の)の状態に戻り、損害賠償請求権は、消滅する」という英国法の考え方を排除するためと言われます。)

上記以外の場面でも、単に、例えば、「Without prejudice to any other provision of this Agreement,」(本契約の他の条項に影響を与えることなく、)などと用いられることがあります。

ここでは、「契約解除の条項」で用いられる場合の例として、

「Either party may, without prejudice to any other rights or remedies hereunder terminate this Agreement if…」(いずれの当事者も、本契約に基づく他の権利または救済策に影響を与えることなく、…の場合、本契約を解除することができる)。

見ての通り、この一文があることで、例えば、相手方の重大な契約違反による契約解除の場合でも、救済手段や損害賠償請求権を含む契約上の権利は引き続き有効とされます。

その他、「without prejudice to ~」を使用しない表現もありますが、ここでは述べません。「契約解除の条項」については、ブログ「英文契約書の条項」の内「一般条項」で、先々取り上げてみたいとおもいます。

2. 「calendar days」(暦日)、「business days」(営業日)「business hours」(営業時間)

「calendar days」(暦日)は、読んで字のごとく暦の日、「business days」(営業日)は、一般には、銀行や企業の営業日です。いうまでもなく、契約における日付は、重要な意味を持ちます。

これらが定義条項で定義される場合もあります。例えば、

「Business Day means any day other than a Saturday and a Sunday on which banks are open for business in Japan」(「営業日」とは、日本国において、土曜日と日曜日を除き、銀行が営業のために開店する日を意味する。)

「Business Hours means 9:00am to 5:00pm JST on a Business Day.」

(「営業時間」とは、営業日における日本標準時の9:00amから 5:00pmまでを意味する。)

以前触れた「Notice」(通知)条項では、

「Notice shall be deemed to have received five (5) business days after mailing.」(通知は、郵送後、5営業日で送達されたとみなされる)。

「Unless otherwise specified in this Agreement, the notice periods shall be calculated in calendar days.」(本契約で特段の記載がある場合を除き、本通知期間は、歴日で計算されるものとする。)

上記の契約解除でも、その通知に関して「Party A may terminate this Agreement upon five (5) business days’ notice to Party B;…」(Aは、…に関して、Bに対する5営業日の通知により本契約を解除することができる)

支払いについて、例えば、

「The payment is due net immediately after receipt of the invoice.」(支払いは、請求書の受領後、直ちに支払うべき正価を支払う。)

「Party A will pay an up-front amount of USD xxx to Party B within 14 days upon the signature of this Agreement.」(Aは、本契約書調印後14日以内にBに対し前払い金として米国ドルxxxを支払う。)

その他、支払、支払期日、サービス・物品の提供と受領、情報の提供・公開、訴訟、法的措置に関するもの、などなど、当然のことですが、日付や時間の規定は、多くの場面で用いられます。

参考図書:ビジネス法律英語辞典(日経文庫)
ランダムハウス英和大辞典(小学館)他

英文契約書の用語、(その15) 「null and void」、「assign and transfer」

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英文契約書における慣用句的な用語

英文契約書で使われる慣用句的な用語、いわゆる、リーガルジャーゴンLegal Jargonの続きです。本来なら、体系的に理路整然とまとめるのが良いのでしょうが、そのあたりブログなのでご容赦ください。その時々に、思いつくままに書いています。英文契約書で使われる慣用句的な用語、いわゆる、リーガルジャーゴン(Legal Jargon)の続きです。本来なら、体系的に理路整然とまとめるのが良いのでしょうが、そのあたりブログなのでご容赦ください。

いずれにしても契約書翻訳の観点から見てみます。

今回は、「null and void」と「assign and transfer」を見てみます。

1. 「null and void」(無効)

「null」も「void」もいずれも「無効」という意味の他に、例えば、名詞としての意味を見ると「null」は、“ゼロ、価値がない”、「void」は、“欠けた、空虚、喪失”等の意味を持ちますが、「null and void」として英文契約書の慣用句として、「(法的に)無効」というニュアンスで使われます。以下例文を作成してみました。

先日、英文契約書の条項一般条項」について、Entire Agreement」(最終性条項)その契約書作成に至るまでの文書、口頭における当事者間の了解事項は、すべて契約書に集約され、当事者間の最終的な合意を記載した唯一ものという考え方から、「This Agreement constitutes the entire agreement, and supersedes, whether orally or in writing, all prior agreements and understandings of the parties hereto with respect to the subject matter hereof, and cannot be amended or otherwise modified except in writing executed by the parties hereto.(本契約は、最終的合意を構成し、口頭・書面によるものを問わず、本契約の主題に係わる本契約の両当事者間のすべての以前の合意と了解に優先し、また、本契約の両当事者が署名・捺印した書面による場合を除き、修正、または他の方法により変更することはできない。)という例文を作成しました。趣旨がやや異なりますが、

「With regard to this Agreement, all agreements, negotiations, understandings and correspondences between the parties hereto that took place prior to the date of this Agreement shall be null and void from the date of the execution of this Agreement.」(本契約に関して、契約の以前の日付でなされた当事者間のすべての契約、交渉、了解事項および往復書簡は、本契約の署名の日付から無効となる。)

 その他、「null and void」が多く見受けられるのは、契約譲渡制限に関する条項で、例えば、「Any purported or attempted assignment or transfer without a consent of other party will be null and void 」(相手方の承諾のない譲渡または移転の意図もしくはその試みは、無効である)

なを、契約譲渡制限に関する条項については、ブログ「英文契約書の条項」の「一般条項」の中で、後程、別途、見てみます。

2. 「assign and transfer」(譲渡する/譲渡し、移転する)

作成した上記の例にある「assignment or transfer」は、名詞ですが、同様の意味です。契約譲渡制限の条項は、基本的には、契約の譲渡(下請け業者の利用を含む)の禁止、制限、条件付制限を設けた条項を規定します

「assign and transfer」が契約譲渡制限の条項で使われる場合の一般的な例(契約の譲渡の原則禁止(相手方が同意した場合を除く))

「Party A shall not assign or transfer its right and duties hereunder without Party B’s prior written consent.」(Aは、Bの事前の書面による承諾なしに、本契約にもとづくその権利と義務を譲渡し、移転しないものとする)

また、「assign」が単体で使われることもあります。

「Neither party may assign any of its rights under this Agreement without the prior written consent of the other party.」(いずれの当事者も、相手方の事前の書面による同意なしに、本契約に基づくいかなる権利も譲渡することはできない。)

もちろん契約譲渡制限以外で使われることもあります。例えば、「assign」を単体で使い

「Party A may assign this Agreement or any interest therein.」(Aは、本契約またはその所有権を譲渡することができる。)などとすることもあります。

なを、「譲渡」は、権利、財産、法律上の地位等を他人に移転すること(法律用語辞典)

「移転」は、「移転」⇒「移動」として、物の移動の他に、「移転」=事実関係の変動、権利の変動 = 法律関係の変動)(法律用語辞典)などとされています。

参考図書:

法律用語辞典(有斐閣)

ランダムハウス英和大辞典(小学館)

法律英単語ハンドブック(自由国民社)

 

英文契約書の用語・単語

英文契約書の条項「一般条項」その2

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英文契約書 - 一般条項

前回に続き、英文契約書の条項の中でも、それぞれの契約の種類にかかわらず、各契約において、一般的に規定される契約条項*の中でも代表的ないくつかを契約書翻訳の視点から簡単にみています。前回は、英文契約書に記載の文言を定義する「Definition(定義条項」と契約の期間を定義する「Term(期間)」条項についてみてみました。特に、期間に関する条項は、事業の成否に大きくかかわる要素をはらんでいます。

今回は、以前にも「口頭排除の原則、最終性条項または完全なる合意」に関する記事にあったEntire Agreement」についてみてみます。上記のように、「最終性条項または完全なる合意」と称されます。

3. 「Entire Agreement」(最終性条項)

英文契約書における書面重視の考え方を体現した条項です。英文契約書を、ある物事についての契約を行う場合、その契約書作成に至るまでの文書、口頭における当事者間の了解事項は、すべて契約書に集約され、当事者間の最終的な合意を記載した唯一ものとして位置づけます。

書き方は、さまざまですが、内容的には、上記の趣旨を体現したものです。以下に、1つの例文をつくってみました。

「Entire Agreement」(最終性条項)の一例

「This Agreement constitutes the entire agreement, and supersedes, whether orally or in writing, all prior agreements and understandings of the parties hereto with respect to the subject matter hereof, and cannot be amended or otherwise modified except in writing executed by the parties hereto.          (本契約は、最終的合意を構成し、口頭・書面によるものを問わず、本契約の主題に係わる本契約の両当事者間のすべての以前の合意と了解に優先し、また、本契約の両当事者が署名・捺印した書面による場合を除き、修正、または他の方法により変更することはできない。)この中で、「and supersedes, whether orally or in writing, all prior agreements and understandings of the parties hereto with respect to the subject matter hereof,」の部分が、口頭排除の原則(Parol evidence rule)を確認する文言です。繰り返しになりますが、書き方はさまざまです。

とことろで、上記の例文の中で、「本契約の両当事者が署名・捺印した書面による場合を除き、修正、または他の方法により変更することはできない。」とありますが、これは、契約の内容は、例えば当事者間の了解により変更されることがあるということです。この変更の内容は契約に記載の担当者や当事者の事業所の変更から契約の解除、不可抗力事由が発生したことによる変更などさまざまな事柄があります。これらに共通することは、これらの出来事が発生した場合、相手方にその出来事についての通知を行う必要があることです。これを規定するのが、「Notice(通知)」条項です。

4. 「Notice(通知条項)」

各契約では、通常、特に、「Notice(通知条項)」が設けられていない場合でも、通知を行うことを求められる事柄が規定されています。「Notice(通知条項)」には、以下に記載するようにさまざまな内容が盛り込まれていますが、基本的な部分についての例文を作ってみました。

「All notice and other communications in connection with this agreement must be in writing.」(本契約に関連するすべての通知およびその他の伝達は、書面によるものでなければならない。)

通知が求められる内容は、上記の他に、契約ごとに定められた事柄があり、また、通知の相手方への*送達時期(通知発送後、xx日(暦日(calendar day)または営業日(business day))または時期を指定せず、可能な限り速やかに等)や通知を行う方法(郵便、その他の文書、メール、ファックス、手交等)、通知先(住所、部署、担当者等)、その他が定められています。(*送達時期の指定がない場合もあります。この場合、一般に準拠法によります。)

特に、通知がメール、ファックス等で行われた場合、通知を受け取った、受け取っていないの紛争を回避する目的で、例えば「provided that a confirming copy of such facsimile or e-mail shall be sent by air mail」(当該ファックスまたはE-メールの確認用のコピーが航空郵便で送付されることを条件とする。)等の一文を設けることもあります。

その他、「Notice shall be deemed to have been received if …….」(…….の場合、通知は受領されたと見なされる。)のように、通知を行った時点で、相手方に送達したとみなすように規定する場合も見受けられます。

参考図書:

カレッジライトハウス和英辞典(研究社)

研究社新英和辞典(研究社)

英文契約書の書き方(日経文庫)

 

英文契約書の条項 「一般条項」その1

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英文契約書の条項 - 一般条項

英文契約書に限らず、いうまでもなく契約にはさまざまな種類があります。当然、その内容は、契約の種類によりそれぞれ異なり、例えば、売買契約代理店契約・販売店契約知的財産権に関する契約ライセンス契約等、それぞれの契約ごとに、その主たる条項やその契約ごとの特別な条項が存在します。今回は、それらの契約条項の中でも、それぞれの契約の種類にかかわらず、各契約において、一般的に規定される契約条項*の中でも代表的ないくつかを契約書翻訳の観点から簡単にみてみます。

*「General Provisions」とか「General Terms」として、いわゆる「一般条項」、「一般規定」、「総則」と称されるもので、時として、「Chapter I – General Terms(第1章- 総則」のような形式で、大部分の条項が1つの章にまとめられることもあります。

なを、政府機関、ある種の団体、または企業により、記載方法が厳密に定められている場合や、各契約条項が、多数の顧客や取引先と同一内容の契約を締結するために定型化された、普通契約約款と同じような形式を採用している場合も見られます。

 1.「Definition(定義条項)」

契約書に記載の文言を定義します。書き方は、いろいろあります。例えば、「”Products” means the Products listed in Appendix A.」(「製品」とは、付属書1に記載の製品を意味する。)、「“Confidential Information” shall be defined as any and all the proprietary, non-public information of either Party, including without limitation ……………(「機密情報」とは、いずれの当事者のすべての所有権を主張できる、非公開情報として定義され、)」とか、「”Property ” shall have the meaning as set forth in Article xxxx」(「財産」とは、第xxx条に記載(規定)する意味を有する)等のようにさまざまに記載されます。「……… means xxxxxxx」といきなり、定義を開始する場合もありますが、

例えば、「The following words and expression shall have the following meanings unless the context otherwise requires:」(文脈上他の意味に解すべき場合を除き、下記の文言および表現は、以下の意味を有する。)として、その後で、

「A means xxxxxxx」、「「B means xxxxxxx」、「C means xxxxxxx」と順次定義してゆく場合もあります。

その他、特に定義条項を設けず、各条項の中で随時定義を行うものや、定義条項を設け、さらに各条項の中で随時定義を行うもの等さまざまです。「The Licensee shall use the Trademarks in the Territory (hereinafter referred to as the “Trademarks License”(ライセンシーは、本区域内においては、本商標(以下、「商標ライセンス」と称する)を使用する)」

定義される語句は、大文字で表記することが多く、定義する順番は、アルファベット順にする形式もが多く見られます。

 2. 「Term(期間)」

契約の期間を定義します。記載方法は、さまざまですが、内容的には、おおざっぱに分けて(1)一定の期間が定まっているもの、(2)自動的に更新されるもの、(3)当事者間の協議によるものがあります。

(1)一定の期間が定まっているもの

「The effective period of this Agreement shall be from April 01, 20xx to March 30, 20xx.」(本契約の有効期間は、20 xx年4月1日から20 xx年3月31日までとする。)

「This agreement shall be effective from the 1st  of January, 20xx and remain in full force for the period of xx years from that date, 」(本契約は20xx年1月1日から発効し、その日からxx 年間有効に存続する)なを、これらの場合(期間が定まっている場合)でも、例えば、「unless sooner terminated pursuant to the terms hereof (本契約の条項に従い中途で解除される場合を除き)」「unless sooner terminated as herein provided(本契約に規定の中途解除を除く)」等、中途で契約を解除できる一文を追加するのが一般的です。

(2)自動的に更新されるもの

これも記載方法は、さまざまですが、例えば、上記の例を使い、「The effective period of this Agreement shall be from April 01, 20xx to March 30, 20xx, unless sooner terminated pursuant to the terms hereof and thereafter shall automatically extend for one (1)  year, …………………」(…………………  その後、1年間ごとに自動的に延長される。           …………………) この場合でも、例えば、「unless either party provides written notice to the other party of its intent to terminate this Agreement at least xxx days prior to the expiration of the Extension」(ただし、いずれかの当事者が、延長期間が満了する少なくともxxx日前に本契約を解除する旨の意思を相手方に書面による通知で行う場合を除くものとする。)のような一文が入るのが一般的です。

(3)当事者間の協議によるもの

「当事者間の協議によるもの」に多様な様態がありますが、一例として、上記「(1)一定の期間が定まっているもの」で作成した例文を使い、「This agreement shall be effective from January 01, 20xx and remain in full force for the period of xx years from that date, unless sooner terminated pursuant to the terms hereof and thereafter may be renewed for an additional xx years subject to mutual agreement in writing between the parties hereto.」(…………………  その後、本契約の当事者間の合意に従い、さらにxx年間更新することができる。

以上、英文契約書の「Definition(定義条項)」と「Term(期間)」を簡単に見てみました。

参考図書:

法律英単語ハンドブック(自由国民社)

ランダムハウス英和大辞典(小学館)他

 

英語における微妙な比較の表現―「Less」

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英語における比較の表現がありますが、 この分野は、どうも苦手という方が多いようです。今回、英文における比較の表現の中でも、ときまた目にしても、すぐに意味を思いつかず、いつかまとめて調べてみようと思っても、以外と手がまわらないというような「微妙な比較」の表現を少し見てみたいと思います。頻繁に使う表現ではなく、覚えてもすぐに使いこなせるものでもないと思いますが、参考までに、何回かに分けてみてみます。

今回は、「Less」に関する比較表現の文例を作ってみました。もちろん、英文契約書ビジネス文書でも目にすることがあるものです。

 

Less and less

次第に少なく[減少して]

less and less aware of everything around.《be ~》次第に周囲のものすべてを認識できなくなる

less and less used for

《be ~》ますます~に利用されなくなっている

become less and less concerned about trifle things.

徐々に[だんだん]細かいことを気にしなくなる

become less and less convinced of her sincerity.

彼女の誠実さにますます確信が持てなくなる

become less and less frequent

足が遠のいて

get[become, grow]less and less care about

だんだん関心がなくなる。

I’m less and less happy with his work.

彼の仕事に満足できなくなってきている。

主に、主語+Be動詞、become、get等の後に入れて、ある状態でなくなりつつあること(減少して、少なくなっていること)を表すために使用されます。

less than

【1】~未満の、~に満たない Total fat is less than 30g. 全脂肪を30グラム未満に抑えてあります。
Less than xx、(xxの箇所にhours、days、months、years、%、数字、動名詞、過去分詞等を入れて、これらが、~以内、以下、未満、~に満たない、~しない内に、より少ない、~できない、~といえない、~足らずであることを示し、後ろに付く量、日数、記載事項に達していないことを表します。
【2】決して~でない

It’s less than intelligent not to pay attention to it.それに注目しないのはちっとも利口ではない。

little less than

【1】まるで[ほとんど]~も同然で

It is little less than fraudそれは詐欺も同然だ

【2】~とほとんど同じくらい

Little less than 10%   10%弱この場合、10%とほとんど同じくらいで、10%より少ないですが、同じくらいとなり、訳語としては、10%弱となります。

反対に、little more thanの場合は、それを上回ることになります。

【3】~もしないうちに

The bout ended in a little less than two minutes.試合は、2分しない内に終わった。

A little less than a dozen miles from my house.

家から数マイルもしない内に、

In a little less than a month,

一か月もしない内に、

基本的には、時間、距離に付き、それ以内であることを表現する。

英文契約書の用語、構文(その14) 「条、項等について」

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英文契約書における条、項

1. 原則自由

英文契約書における内容の表示の方法、すなわち「条」とか「項」の表示の方法は、原則自由です。もちろん、企業、政府、団体等で項目についての表記を厳密に定めている場合もあります。例えば、ある国の政府の契約書に添付する文書については、文書が書かれたものは、「Attachment」、表が記載されているものは、「Exhibit」とする、その他番号の付け方も、「1」と間違いやすい「i」とか「0」間違いやすい「o」は使わない等、細かく規定する場合もありますが、原則、基本的には、自由です。起草者が作りやすいように構成します。したがって、例えば「」も、一般的には「Article」が使われる場合が多いようですが(「」という概念を「Article」に当てはめて翻訳したわけですが)、起草者の好み、習慣により、日本語の「条」に相当するものとして「Clause」、「Section」、「Paragraph」等を「Article」の代わりに使う場合や、数字の「1」、「2」、「3」をそのまま使う方法も、以外と多く見られます。

2. もっとも一般的でやりやすいと思われる方法(英文契約書を自分で起草する場合)

英文契約書における「条」とか「項」あるいは「号」等の表示の方法は、さまざまですが、一般的なものとしては、第1条、第2条という場合、やはり「」=「Article」でしょうか。経験的には、「Article」が使い勝手が良いようです。一般的に、文中で「~条項」と記載する場合は、「~clause」、また、「前項」などと記載する場合は、「the preceding paragraph」とします。

自分で契約書を起草する際、例えば、「Article 1(第一条)」として、その下に、1(第1項)、2(第2項)、3(第2項)と項目を配置したり、または1-1(第1-1項)、1-2(第1-2項)、1-3(第1-3項)等とします。これらをさらに細分化する場合、(a)、(b)、(c)を使い、さらにさらに細分化する場合は、(i)、(ii)、(iii)とします。もちろん(a)、(b)、(c)の部分に(1)、(2)、(3)を使ってもかまいません。

Article 1

1 または1-1

(a)

(i)

(ii)

たいていの場合これで十分ですが、契約書の盛り込む内容が多い場合、「Article」をいくつかの「章」=「Chapter」に分けることもあります。例えば、Article 1からArticle 15までは、「Chapter 1」=「第一章」、Article 16からは、「Chapter 2」=「第二章」とすることもあります。 とにかく起草者は、自分がやりやすく、読み手が見やすい方法を採用するのが一般的です。なを、あらかじめ目次「Table of Contents」を準備しておくと、チェツクするのに便利です。

英文契約書ではありませんが、日本の法律を英語に翻訳する際の「日本法令外国語訳推進会議」のガイドラインがあります。参考までに以下に記載します。

目次              「Table of Contents」

編               「Part」

章               「Chapter」

節               「Section」

款               「Subsection」

目               「Division」

条               「Article (Art.)」

項               「Paragraph (para.)」

(1) (2) (3) [見出しとして用いる場合]

号              「item」

(i)(ii)(iii)  [見出しとして用いる場合]

イロハ            「(a)(b)(c)」

(1) (2) (3)    「1. 2. 3.」

(i) (ii) (iii) 「 i. ii. iii.」

枝番号     「-1, -2, -3」

 附則   「Supplementary Provisions」

別表第…(第…条関係)        「Appended Table … (Re: Art. …)」

__      「Row」

__     「Column」

別記様式   「Appended Form」

 

 

英文契約書の売買契約(その2)

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英文契約書による売買契約の一般的な構成と、ごくごく基本的な事柄に関する用語の簡単な確認の続きです。以下の前回書ききれなかった項目等を例によって、契約書翻訳の観点からざっと見てみます。

  1. Intellectual Property (知的財産)
  2. Inspection and Acceptance(検査と受領)
  3. Claim and Remedy (クレームと救済)
  4. Take or Pay(テイクオアペイ)
  5. Right of First Refusal(ファーストリフューザル)
  6. Hardship (ハードシップ)

 

 11. Intellectual Property (知的財産)

いうまでもなく、売買される商品の「商標」、「特許」、「著作権」、「その他」、「知的財産権」についての記載です。知的財産権の侵害を防ぐ記述内容とともに、商品が他人の知的財産権を侵害していないことを確認することは、必須であり、その他、万が一のクレーム発生に備えることも必要です。
知的財産に関する条項は、おおまかに、「売主」の立場に立ったもの、「買主」の立場に立ったもの、一定の範囲に限って「売主」が「買主」の商品の使用に起因する「知的財産」を侵害した場合の責任を負担する場合等があります。分野としては、膨大な内容になるため、この程度で留めます。

その他「知的財産」については、いずれも散文的であり、売買契約についての内容ではありませんが、「知的財産契約」と「Proprietary RightsとIntellectual Property Rights」についての、以前のブログ記事があります。

12. Inspection and Acceptance(検査と受領)

最近では、エアバッグの不具合など大きな問題が見受けられます。過去においても多くの問題が発生し、当然、リコールや訴訟に発展し、当然、損害賠償契約解除の対象になります。普通に考えてみれば、「買主」に商品がわたった時点で、商品受け入れ検査を行い、瑕疵があれば相応の措置を講じれば良いとも思われますが、実際には、簡単にはいかないのが現実です。検査の対象には、当然、品質の問題が含まれます。

したがって、「Inspection and Acceptance(検査と受領)」についての規定には、一般的に以下についての規定がなされることがあります。

Inspection and Acceptance(検査と受領)についての規定

  1. 検査について:検査の時期、内容、程度、方法、検査担当(「買主」、第三者、検査機関、「買主」と「売主」の合同検査)
  2. 検査結果の明示(証明書、レポート)
  3. 問題がある場合の通知方法と期間
  4. 検査で見つからない隠れた瑕疵の扱い
  5. 通知期間内に「買主」が瑕疵を報告しない場合の扱い等、商品に瑕疵があった場合の救済を定める上で重要です。

いずれも「買主」に有利になる規定の方法、「売主」に有利になる規定の方法があります。
なお、分野としては、膨大な内容になるため、この程度で留めます。

13. Claim and Remedy (クレームと救済)

上記、12. Inspection and Acceptance(検査と受領)とも関連しますが、「買主」の立場に立った規定方法、「売主」の立場に立った規定方法があります。いずれの立場も相手方に対するせめぎ合いで、例えば、クレーム提起期間について、「買主」の立場に立てば、この期間を長く設定することで、クレーム提起期間終了後に隠れた瑕疵が見つかっても、クレームの提起期間の規定にしばられないとか、「売主」の立場からは、「売主」に都合の良い、クレーム提起期間を定め、その後は、「買主」のクレーム提起の権利を失わせる等、さまざまです。

参考までに日本の商法では、「「買主」は、物品の受領後、ただちに検査を行い、瑕疵を「売主」に報告しなければならず、これを怠った場合、「買主」は「売主」を追及する権利を失う」また「ただちに発見できない瑕疵は、6ヵ月を最大限として延長できる」とあります。(商法528条2項)その他、「「買主」は、瑕疵を発見してから1年以内に権利を行使しなければならない」(民法570条(民法566条、但し書き準用))。

 14. Take or Pay(テイクオアペイ)

例えば、長期にわたる売買契約において、ある一定期間(例えば、四半期、半年)ごとに「買主」が引き取るべき最低数量を規定し、引き取りがなされない場合でも、「買主」は、引き取りがなされた場合と同じ代金支払い義務を負うものとします。「買主」は、長期にわたる義務とリスクを負担することになります。プロジェクトファイナンスにかかわる場合が多く、さまざまバリエーションが存在します。

 15. Right of First Refusal(ファーストリフューザル)

長期売買契約における「買主」に有利な権利を確保することを目的とします。具体的には、「売主」において、商品や製品の生産と供給に余裕が生じた場合、「買主」に優先的にオファーを行い、「買主」に購入する機会を設けます。「買主」は、この権利を行使するか、しないかの権利を与えられます。

 16. Hardship (ハードシップ)

「長期契約における経済・社会環境の変化、商品や製品の陳腐化等の事件が生じた場合、相変わらず、最低数量の購入等、当初の契約内容を維持するのではなく、いずれかの当事者が申し出て、契約条件の見直しを協議する」という内容です。

以上、駆け足で、英文契約書による売買契約の一般的な構成を見てみました。いずれも「売主」と「買主」の間の利益の調整方法という見方もできるかもしれません。

先々、機会があれば例文などを作成して、さらに具体的に見てゆきたいとおもいます。

参考図書

ビジネス法律英語辞典(日経文庫)

ランダムハウス英和大辞典(小学館)

法律英単語(自由国民社)その他