英文契約書の用語と構文 (その23) 「正当」「適切」等について

英文契約書の用語と構文 (その23) 「正当」「適切」等について

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今回は、英文契約書に限らず、一般に契約書でよく使用されている用語である「正当」と「適切」について、その意味と使われ方について契約書翻訳の観点から少し見てみました。まずは、それぞれの意味を調べてみます。

 「正当」とは。

「正しく、道理にかなっていること」、「理の当然であること」。法律用語辞典(有斐閣)。例えば、「正当な補償」、「正当な業務」等、その他さまざまに使われます。

この用語を使用する場合は、以下の内容が前提とされるようです。

1.「法律等で正当であると認められている状態にあること」、

2.「ある行為の対象となる側にとって、正当であると受け入れられる状態にあること」

以下の例は、契約書ではありませんが、わかりやすい例として、法律文で使用されている「正当」の例を見てみます。

後見人は、正当な事由があるときは、家庭裁判所の許可を得て、その任務を辞することができる。

A guardian of an adult may, where any justifiable reason exists, surrender his/her office upon the permission of the family court.(民法 第四編第五編)

 簡易ガス事業者は、正当な理由がなければ、その供給地点における一般の需要に応ずるガスの供給を拒んではならない。

(1) A Community Gas Utility shall not refuse to supply gas to meet general demand at its service points without justifiable grounds. (ガス事業法)

「適切」」とは

 

「状況・目的などにぴったり当てはまること」。「その場や物事にふさわしいこと」。例として、「適切に判断する」「適切な表現」、「適切な(適当な)処置をとる」があります。

 類義語に「適当」があります。これは、「過不足なく、よくあてはまる」という意に用いることはありますが、「適切」よりも意味に幅があり、また、「ほどよいことをいう場合」もあり、また、「いいかげんな」、「あいまいな」、の意味で使用される場合もあります。例としては、「適当に選ぶ」「適当にごまかす」等。

 以下は、法律文で使用されている「適切」の例です。

  公的統計は、適切かつ合理的な方法により、かつ、中立性及び信頼性が確保されるように作成されなければならない。

Official statistics shall be produced with appropriate and reasonable methodologies, so as to ensure neutrality and reliability.(統計法)

 適格消費者団体は、不特定かつ多数の消費者の利益のために差止請求権を適切に行使しなければならない。

A qualified consumer organization shall exercise its right to demand an injunction properly for the interests of many unspecified consumers.

(消費者契約法)

 英文契約書を翻訳する際に、用語「正当」と「適切」に対応する英語をいくつかあげてみます。

「適正な」は、appropriate、proper、right、just、reasonable、legitimateなどがあります。appropriate、properは、「適正な」と「適切な」のいずれにも使用することができます。

「適切な」は、一般的に、appropriate、proper などが使われますが、その他に、adequate、を使用することもあります。

これらは他の語と組み合わさって、例えば以下のような意味の用語となります。(他にもいろいろあります。)

justifiable reason                            正当な理由

without any justifiable reason       正当な理由なく

reasonable assurance                    合理的な保証(正当な保証)

reasonable grounds                       相当な理由(正当な理由)

legitimate subscriber                      正当な加入者

just cause                                        正当な理由(事由)

without just cause                          正当な理由(事由)なく

authorized representative             正当な権限を有する代表者

valid SSL                                       正当なSSL

valid evaluation                            正当な評価

legal reason                                   正当な理由

adequate support                            適切な支援

adequate management                   適切な運営

appropriate discount rate               適切な割引率

appropriate decision                       適切な判断

proper methods                               適切な方法

これらが実際にどのように使われているか、例文を作成してみました。

He’s adequate to this job.

彼は、この仕事に適任です。

This is appropriate in the circumstances

これは、この状況において適切なものです。

When the Indemnifying Person fails to provide reasonable assurance to the Indemnified Person of its financial capacity to defend such Proceeding and provide indemnification with respect to such Proceeding.

「補償人」が、当該「訴訟手続き」の弁護を行うためのその財務的能力に関して、「被補償人」に合理的な保証を提供できず、当該「訴訟手続き」に関連する補償を提供できない場合、

Proper disposal of all waste, including shipping containers of raw material, is specifically included as part of YYY’s duty under this Agreement and YYY agrees to indemnify XXX, for any property loss or damage, any bodily injury or death, or any claim or action to the extent arising from proper or improper disposal by YYY.

原材料の搬送容器を含む、すべての廃棄物の適切な処分は、本契約にもとづくYYYの義務の一部として明確に含まれるものとし、およびYYYは、YYYによる適切なまたは不適切な処分に起因する範囲の財産の滅失もしくは損害、身体損傷もしくは死亡、または請求もしくは訴訟に対して、XXXに補償することに同意する。

参考図書:

研究社新英和辞典(研究社)

ランダムハウス英和大辞典(小学館)

日本法令外国語訳データベースシステム

 

 

機密保持義務に関する条項(Confidentiality)、機密保持契約(Confidentiality Agreement)/非開示契約(Nondisclosure Agreement)に見られる用語「Receiving Party」と「Disclosing Party」

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今回は、英文契約書翻訳に携わる中で、経験上、よく目にしたり、よく使われる条項について契約書翻訳の観点から簡単な例文を作成してその用例(一部ですが)を見てみます。

1. 英文契約書に共通してみられる条項

前回、「契約の目的・種類のごく簡単な説明」にあるように、英文契約書には、様々な種類があります。これらの契約は、契約の種類・内容は違うものの、共通してみられる条項(契約の種類にかかわらず、同じ内容を規定している)があります。例えばよく知られているものに、「契約に適用される法律を規定する準拠法条項または適用法条項「(Governing Law)または(Applicable Law)」、「契約に関する解釈の相違、紛争の解決についての方法を定めた、管轄裁判所の合意に関する条項(Jurisdiction)、仲裁に関する条項(Arbitration)」等があります。

2. 「機密保持義務」に関する条項とは

英文契約書には、上記以外にも様々な共通してみられる条項がありますが、それらの中でも重要なものの1つとして、「機密保持義務」または「秘密保持義務」に関する条項(Confidentiality)があります。これら機密保持義務に関する条項は、「契約の当事者が契約を履行する過程で知り得た相手方の情報に関する機密保持義務を負担すること」を定めています。

例えば、「Neither party shall disclose the information obtained from the other party during the performance of the Services to any third party without prior written consent of the other party.」(例文A)簡単な例文ですが、最低限このようなことが記載されます。なお、当然のことながら書き方は、契約により多様です。

機密保持義務については、契約の種類・内容により、相手方に対する機密保持義務の負担の程度が、双方とも公平に負担するもの、または負担の程度がいずれの当事者に偏っているもの等、様々です。

機密保持義務の対象となる具体的内容は、機密保持がなされることで、財産的価値が維持できるもの、例えば、技術情報、ノウハウ、企業秘密等の他、契約により様々なものを対象とします(例えば、まれに契約の存在自体を秘匿する旨が記載されているような場合もあります)。

ただし、例えば以下に作成した例のように、技術情報、ノウハウ、企業秘密等に関しては、契約を締結する時点ですでに一般的に知られているもの、または契約の途中で当事者の過失によらず一般的に知られるようになったもの、機密保持義務に違反することなく取得したもの等は除外されるのが普通です。

例文B:  The Confidential Information does not include the information that:

(i) is already generally known to the public at the time of disclosure;

(ii) becomes, at a later date, generally known to the public without a fault of the Party XXX; or

(iii) is acquired by Party XXX without violation of the confidentiality.

*これらの他にも様々なケースが規定されます。

そのほか、契約が終了した後、契約が契約期間内に中途で解除された場合でも、一定の期間、内容を指定して、機密保持義務が存続する旨の記載もあります。

例文C:  Each party shall hold the other party’s Confidential Information in confidence for a period of three (3) years from the date of expiration or termination of this Agreement. (この例では3年間)

これら以外にも、様々な内容が記載されます。これらについては、機会があれば、特色のある条項をまとめてみたいと思います。

契約条項としての「機密保持義務」(Confidentiality)とは別に、「機密保持義務」そのものを「機密保持契約」または「秘密保持契約」(Confidentiality Agreement)として、1つの独立した契約とする場合もあります。名称が異なりますが、非開示契約(Nondisclosure Agreement: NDA)もこの類です。Nondisclosure Agreementを「機密保持契約」または「秘密保持契約」を称する場合もあります。一般的には「NDA」の名称で知られています。)便宜上、ここでは、「機密保持契約」とします。

3..  「Receiving Party」と「Disclosing Party」

「機密保持義務」を1つの独立した契約にした「機密保持契約」が作成される経緯は、様々ですが、契約の当事者の呼称について、情報を開示する側を「Disclosing Party」、「Disclosing Person」または「Discloser」等と呼称し、情報を受け取る側を「Receiving Party」、「Receiving Person」または「Recipient」等と呼称する場合があります。Disclosing Party(開示当事者)、Disclosing Person、Discloser (いずれも、開示人もしくは開示者)、Receiving Party(受領当事者)、Receiving Person、Recipient(いずれも、受領人もしくは受領者)というよう呼称します。

なお、これらの表記は、「機密保持契約」ではない契約の「機密保持契約条項」または「機密保持」に関連する記述内容に使用される場合もあります。

「それぞれの当事者の名称/呼称」を用いても、何の問題もありませんが、「Disclosing Party」と「Receiving Party」としたほうが、その立場が明瞭で分かりやすく、間違いを生じることが少ないということかもしれません。特に、いずれの当事者においても、相手方に対する機密保持義務の負担の程度が公平な場合は、「情報を出した者」と「情報を受け取った者」とするほうが、分かりやすいはずです。

上記の例文Bを基にして、例文を作ってみます。

The Confidential Information does not include the information that:

(i) is already known to the Receiving Party at the time of disclosure;

(ii) becomes, at a later date, known to the Receiving Party without a fault of the Receiving Party; or

(iii) is acquired by Receiving Party without violation of the confidentiality.

双方で情報をやり取りする場合、例えばAからBへ、BからAへというような情報の流れを気にせずに、「情報を開示した者」と「情報を受領した者」を区別することができます。特に、「情報を開示した者」と「情報を受領した者」に関して、当事者に加え、各当事者の関係者、役員、従業員、下請業者、子会社等を含める場合、これらを集合的に「開示当事者」、「受領当事者」として規定すると分かりやすくなります。

参考図書:

英和大辞典(研究社)、コンパクト六法(岩波書店)、Trend(小学館)、Oxford Dictionary of English

契約の目的・種類

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 契約の目的・種類のごく簡単な説明

契約の目的の1つは

契約」とか「契約書」という言葉を日常、何気なく使っています。法律用語辞典で「契約」を見ると、最初に「相対する意思表示の合致(合意)によって成立する法律行為……………..」と書いてあります。この後にその他の説明が付加されていますが、とりあえずこの部分を押さえておけば良しとします。次にこの説明にある「法律行為」を法律用語辞典で見ると、最初に「法によって行為者が希望したとおりの法律効果が認められる行為……………………………」とあり、この後にその他の説明が付加されています。

ただし、このように「契約」の定義などと難しく考えなくても、当事者間における口頭または書面による合意が、契約であり、この当事者間の合意を書面化したのが契約書です。なを、「契約」を作成する主たる目的の1つは、「将来の紛争を防止し、相手方による契約違反が生じた場合、相手方に契約の履行を強制する」ことです。

 さまざまな契約-契約の種類を分類する基準

当然のことながら、契約には、さまざまな種類があります。その分類の方法も、さまざまです。何を基準にするかによっても違ってきます。例えば、「売買契約」、「サービス契約」等、経済活動の種類により分ける場合、法律上の取引契約に基づく場合、国ごとの基準による分け方等、さまざまです。

 よく見かける契約書

何を基準にするかという、難しいことを考えなくても、日常的に、すぐに頭に浮かぶものだけでも、例えば、英文契約書を例にとると、「売買契約=」(物品、不動産等)、「販売店契約(Distributorship Agreement)」、「代理店契約(Agency Agreement)」「知的財産権契約」(特許、意匠、商標、ソフトウェアのライセンス契約等から研究開発委託契約など多方面にわたります。)、「サービス契約(Service Agreement)」(さまざまなサービスがあります)。「賃貸借契約(Lease Agreement)」(リース契約とも呼ばれ、事務機器から産業機器、航空機まで分野は広範囲に及びます。)、「融資契約=Loan Agreement」、「保証契約(Guaranty Agreement)」、「雇用契約(Employment Agreement)」、その他、M&A、合弁事業契約、知的財産開示・販売、プラント輸出、建設工事請負に関する契約等、数え上げれば、このほかにも、いろいろな種類があります。

共通して言えることは、肝心な部分で、当事者間の権利・義務を明確に規定することにより、相手方が契約に違反した場合、相手方に契約の履行を強制することができるようにすることです(実際には紆余曲折があり、困難を伴いますが)。

ちなみに、知られているように日本の民法では、売買契約,消費貸借契約,賃貸借契約,雇用契約,請負契約,委任契約,和解契約,組合契約,交換契約,使用貸借契約,贈与契約,寄託契約,終身定期金契約を「典型契約」として定め、これに該当しない契約を「非典型契約」または「無名契約」としています。いずれ機会があれば、このような契約についても見てみたいと思います。とりあえず、興味がある場合は、多くの数の専門書が出ておりますので、ご覧ください。

 努力目標的な条項や紳士協定的な条項

なお、「相手方に契約の履行を強制することができるようにすること」とは、「契約」を作成する主たる目的の1つですが、例えば、英文契約書では、次の例文(例文用に作成した文章です。)「Distributor shall use all commercially reasonable efforts to obtain all necessary approvals from the regulatory authorities required to sell the Product in the Territory.」のように「commercially reasonable efforts」等の文言を使い、「shall use」と、一見必須事項ではあるが、見方により努力目標的な意味にも解される条項も、よく見受けられます。中には、「支払については、xxxxは最善の努力を行い……………………………」などいういらぬ心配をするような内容も、時として見受けられ、いろいろな状況下で契約が作れられる場合があることを実感させられます。また、当事者間の力関係が、契約書の記載の仕方に如実に現れる場合も時として見受けられます。

以上、英文契約書翻訳の視点から簡単に見てみてみました。

 

 

英文契約書の長文読解-すっきり翻訳の心得  その2

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英文契約書の長文読解

英文契約書には長文の部分が多く登場します。英文を読む上で長文読解は難しい分野です。

そのため、例えば、英文に関する多くの試験では、長文読解が大きな配点を占めている場合が多々見られます。契約書翻訳の視点から解説します。

英文契約書の誤字、脱字、文章の脱落、消し忘れ

ところで、まず試験では見かけませんが、実際の英文契約書では、「いわゆる“typographical error (通称、typo)”と称される誤字、脱字、誤植」または「不注意によるによる文字、文章の脱落、消し忘れ」等が発生することがあります。

下記に作成したサンプルの文章は長文ではありませんが、微妙に読みにくく感じます。それもそのはず、「抜け」があります。

It is not bound by any contractual obligation, juridical decision or restriction order from any issuing authority, any statutory or regulatory duty.

もちろん、訳すことはでき、訳文は、「これは、契約上の義務、命令発行機関による決定もしくは差し止め命令、または制定法上の義務もしくは規制法上の義務により拘束されない。」となります。

ただし、よく読むと、「any issuing authority」と「any statutory or regulatory duty」が微妙につながりません。理由は、「or」を抜いてあるからです。

改めて文章を見て行くと、

A.  contractual obligation (契約上の義務)

B.  juridical decision or restriction order from any issuing authority

(命令発行機関による決定または差し止め命令)

C.  any statutory or regulatory duty(制定法上の義務もしくは規制法上の義務)

上記の3本立ての制約により、主語である「It」が「not bound」されている。

このように考えると、「or」がany issuing authorityとany statutory or regulatory dutyとの間に必要になることがわかります。

インデックスとなる言葉が重要になる

上記の例文は、短いものですが、長い文章になってくると、文章を構成する上で「and」、「or」の様なインデックスになる言葉がとても重要になります。

実際の英文契約書では、さらに文章が長くなります。元々長い文章の中に、あらゆる想定で、あらゆる言葉を足して、契約文書として抜かりなく、漏れがないように作成されているため、さらに、翻訳しにくくなっています。「and」、「or」ばかりではない、文章の区切りとなるインデックスワードを見つけることが翻訳の際に必要となってきます。

また、例えば、長年の間、何回も異なる相手方に対して発行されたような契約書は、「typographical error 」に加え、文章の未修整、消し忘れ、脱落、本来追加すべき部分の欠落等が存在することがあり、その場合でも、これらを見極めるための1つの手段としてインデックスとなる言葉が重要になることがあります。

参考図書:

研究社新英和辞典(研究社)

ランダムハウス英和大辞典(小学館)

Winer

販売店契約と代理店契約 その2

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販売店契約と代理店契約の違い

販売店契約と代理店契約 - リスク負担による違い

以前、英文契約書におけ販売店契約代理店契約の違いについて、簡単に書いたことがあります。その中で、その違いを、主としてリスク負担の問題でという観点から見てみました。「代理店契約」では、代理店(Agent)は、販売実績に応じて、販売手数料(Commission)を受け取り、販売代金の回収責任や販売した商品に問題がある場合の責任も代理店が負担し、代理店(Agent)は、取次を行うだけです。「代理店契約」は、「Agency Agreement」「販売店契約」は、「(Distributorship Agreement」と称されます。

 販売店契約と代理店契約 - 法律的な見方による違い

その違いが、主としてリスク負担の問題であるとしても、外から見ただけでは、一見似たような経済活動を行っているように見えます。しかし、見方を変えてみると「代理店」=「Agent」と「販売店」=「Distributor」は、法律的に別物です。すなわち「代理店」=「Agent」がある商品の「売主」(本人)=「Principal」の代理人であるのに対して、「販売店」=「Distributor」は、自己の名義と計算により売主から商品を買い取り、これを第三者=顧客に再販売するという違いがあります。

ちなみに、(日本の)法律用語辞典で、「代理」を見てみると、「AがBのためにCとの間で意思表示をし、又は、意思表示を受けることによって、その法律効果がBに直接帰属する制度のことで、Aを代理人、Bを本人、Cを第三者という(民法99条)」

そのため、例えば、販売店契約には、以下に作成した例文のような内容が盛り込まれます。

Distributor shall purchase the Products from the Principal and the Principal shall sell the Products to Distributor for resale in the Market, solely at Distributor’s risk and for Distributor’s own account based on the terms of this Agreement.

(「販売業者」は、「本人」から「製品」を購入し、また、本人は、「販売業者」の単独の危険負担により、および本契約の条件に基づく「販売業者」の自己勘定(取引)のために、「市場」での再販売のために「販売業者」に「製品」を販売する)

一般には、販売店契約と代理店契約を「販売代理店契約」と総称する場合がありますが、以上のように法的には、販売店契約と代理店契約に区別されています。

参考図書:

ランダムハウス英和大辞典(小学館)

カレッジライトハウス和英辞典(研究社)

英文契約書の書き方(日経文庫)

 

 

英文契約書の用語、構文 (その22)(別紙/付属文書について) 

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 英文契約書の別紙/付属文書、「Addendum」、「Annex」、「Appendix」、「Attachment」、「Exhibit」、「Rider」、「Schedule」等

 英文契約書を読んでいると、ほぼ必ずといって良いほど目にするのが、「Addendum」、Annex」、「Appendix」、「Attachment」、「Exhibit」、「Rider」、「Schedule」等の英文契約書のいわゆる「別紙」、「付属文書」を表す言葉です。

「別紙」、「付属文書」が、英文契約書の中でどのように使われているかと言えば、例えば、その内容が多岐にわたるためこれを契約書本文に書くと煩雑になる場合、商品やサービス等の価格表など、将来的に変更される可能性のあるもの、契約書作成時に契約書本文中に書ききれなかったもの等々があります。

 別紙/付属文書は、契約書の一部を構成し、契約書と不可分一体

これらは、名称が別紙/付属文書となっていますが、これらは、契約書の一部を構成し、契約書と不可分一体のものです。そのため、英文契約書中の「最終性条項または完全なる合意(Entire Agreement)」と称される条項において、例えば、以下に作成した例文にように「別紙」、「付属文書」が、契約の一部を構成することを確認することもあります。

(1) 「All Attachments shall be deemed a part of this Agreement」

(すべての別紙は、本契約書の一部とみなす。)

(2) 「The Exhibits attached to this Agreement shall be made an integral part of this Agreement」

(本契約書に添付の付属文書は、本契約の不可分の一部とする。)

(3)「The terms and conditions in the addendums, exhibits and schedules attached hereto are the entire agreement between ABC Company and XYZ Corporation with respect to the subject matter thereof.」(本契約書に添付された付録、別紙およびスケジュールの条件は、本契約の主題に関してABC CompanyとXYZ Corporation間の最終的合意である。)

従って、これらの内容を変更する場合、例えば、以下に作成した例文のように規定されます。

(4)「No modification of this Agreement shall be binding unless executed in writing by both parties.」(本契約のいかなる変更も、両当事者の署名のある書面によりなされない限り、拘束力を有しない。)

 さまざまな呼び方

ところで、「Addendum」、「Annex」、「Appendix」、「Attachment」、「Exhibit」、「Rider」、「Schedule」を一括して「別紙」、「付属文書」と書いてきました。

辞書を見ると、以下の様なさまざまな訳がなされています。例えば、

Exhibit=「別紙」、「添付書類」、「付属書類」、「付属文書」、

Appendix=「付属書」、「付属書類」、「添付文書」、

Attachment=「別紙」、「付属書」、「添付書面」、

Schedule=「付属明細書」、「付則」、「スケジュール」

中には、例文(3) 「Addendum」、「Exhibit」、「Schedule」のように、契約書本文以外に複数のいわゆる「別紙」が使用されることもあります。組織または政府機関等によっては、内規、法律によってどの言葉をどのように使うかが定められている場合もありますが、多くの場合、英文契約書の起草者が任意で選択する場合が多いように見受けられます。

英文契約書の起草ということで思い出しましたが、自身の経験からも、作成に長い期間を要する契約(例えば、1つの契約を作るのに半年とか1年またはそれ以上かかる場合)では、英文契約書の本体部分のみをある程度完全な内容とし、交渉や内容の決定(価格、仕様)に時間がかかるものは、別紙/付属文書の形にしておきます(もちろん予定価格、仕様が当初から厳密に定義されている場合もありますが)。この1つのテクニックで、ずいぶんと助けられました。

なを、これらの言葉を当方で訳す場合は、翻訳する英文契約書の内容に即して、適切な言葉を選んでゆきます。以上、契約書翻訳の視点から見てみました。

例文に訳文が付いている場合、それらの訳文は暫定訳(法律文を除く)です。
本ブログの内容を参考にされる場合は、辞書・専門書をご確認の上、ご自身の責任でお願いします。

弊社では、豊富な経験と知識に基づき原文に忠実かつ適格な翻訳を適正価格でお届けします。英日翻訳、日英翻訳のいずれにも対応しております。お客様の作成したAI翻訳による翻訳文を原文と対比して校正するポストエディットも承っております。

参考図書:

ランダムハウス英和大辞典(小学館)

カレッジライトハウス和英辞典(研究社)

法律英単語ハンドブック(自由国民社)

英文契約書の長文読解-すっきり翻訳の心得  その1

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「英米法」と「大陸法」

契約書翻訳に際して、英文契約書や英文契約書の解説書に接していると、よく「大陸法」とか「英米法」とかという言葉を目にします。周知のように、「英米法」は、イギリス、カナダ、アメリカ、オーストラリア等、かつてのイギリスの植民地を中心に使われ、慣習法、判例法に負うところが多く、他方、「大陸法」は、フランス、ドイツ、イタリア等、ヨーロッパ大陸を中心にローマ法に主たる起源をもつ法体系です。(いずれもその具体的な内容は、例によって専門書をご覧になることをお勧めします。-ウェッブ検索によるものは、その内容の真偽が定かでない場合も多いようなので)

とりあえず英文契約書の内容を理解するに際しては、こられを掘り下げて仔細に吟味する必要もないかと思われます。むしろ、その内容に、契約に対する当事者双方の意図が正しく記載され、これにより契約が正しく履行され、さらに当事者間の誤解や紛争を防ぐための事柄が記載されているものであるか、どうかを判断すること、またはドラフティングを行う場合、そのような内容の英文契約書を作成することが必要です。契約書翻訳の視点から解説してみます。

 一般的かつ包括的な表現の不在

ただし、英文契約書の特徴の1つとして、上記の法体系による影響なのか、ある事柄について「*一般的かつ包括的表現」を行うよりも、ある事柄について、「そこに含まれるであろう個々の事例を1つ1つ列挙する傾向」があり、これにより文章が長文化する傾向が生じる原因の1つと考えられます(もちろん、英文契約書の文章が長文化する傾向はこのことだけが原因ではありませんが)。

(*日本の契約書の場合、一般的・包括的/抽象的に表現される傾向があり、例えば、良く眼にする内容として「本契約に定めなき事項または疑義を生じた場合、両当事者の協議によりこれを解決する」等の一文が定番として記載されているのを良く見かけます。もちろん英文契約書でも、例えば「Matters not stipulated in this Agreement or any doubt, with respect to the interpretation or performance of this Agreement shall be discussed and resolved based on the coordination between the parties」)のような一文(当方作成の例文。)を記載することもあります。)

また、ある事柄(あることに対する契約)について、様々な相手方に対して長年使用されている契約書などでは、問題の発生、時代の変化等、さまざまな要因により、それが当初作成した時点では、考え得るすべてのことを網羅した内容であっても、加筆、修正、削除等が行われます。これにより、中には、文章が、複雑化し、時として「木に竹を接ぐ」的な文章になることもあります。

英文契約書では、その一面だけを見ても条項の一文が長くなり、日本の契約書と比べ、相対的に複雑化する傾向が見られます。このことが、英文契約書の内容を理解するうえでの1つの妨げになっているかと思われます。そこで、ためしに長文を読解について少し書いてみます(英文契約書の長文を理解するためのコツをつかむ多少の手助けにはなるのでは???)。長文を読解については、一度書いてみたいとの希望がスタッフにあったのですが、例文の作成に手間がかかるので、年末の業務が終了した今になってしまいました。

including, but not limited to / include, but is not limited to」または「including without limitation /including, without limitation 」については、以前のブログで取り上げたことがあります。

今回は、これらの表現を使用して、「すっきりした翻訳」に挑戦してみます。作成した以下の例文を基に、実践的に説明いたします。また、その他のヒントも掲載ました。

ABC Company shall, to the fullest extent permitted by law, indemnify, defend upon request, and hold harmless XYZ Company and its members, officers, directors, employees, agents, representatives, subsidiaries, affiliates, successors, and assigns (collectively, “Indemnitee”) against all losses, claims, damages, expense and liabilities sustained or incurred by the “Indemnitee” for any damage, harm, loss or injury of any kind, direct or indirect, to any property, entity or person,  including, but not limited to, claims for injuries to employees of the “Indemnitee”, ABC Company and/or any related party, arising directly or indirectly out of any act, omission, conduct, negligence or default by ABC Company or its related party or their respective officers, directors, employees, agents, representative, subsidiaries, successors, or assigns (“ABC Company’s Parties”) and/or arising directly or indirectly out of or in any manner associated with the Obligations under this Agreement or any contact with or encountering of any property, equipment, vehicles, facilities or personnel of the “Indemnitee”, regardless of whether any such liability, damage, loss or injury is caused by, results from or arises out of the negligence, fault or other liability of the “Indemnitee” or any other party to be indemnified.

今回作成した例文は、192ワードあります。一見して「大変そう!」、「何か翻訳が難しそう。」、「長い文章は苦手!」などと思われる方も多いのでは!

 ポイント1-インデックスとなる単語、表現を見つけて、グループ化

このような場合、インデックスとなる単語、表現を見つけ、かつ、グループ分けすることで、すっきりとした翻訳が可能になります。まず、以下のように上記の文章をグループに分けます

ABC Company shall, to the fullest extent permitted by law, indemnify, defend upon request, and hold harmless XYZ Company and its members, officers, directors, employees, agents, representatives, subsidiaries, affiliates, successors, and assigns (collectively, “Indemnitee”) against all losses, claims, damages, expense and liabilities sustained or incurred by the “Indemnitee” for any damage, harm, loss or injury of any kind, direct or indirect, to any property, entity or person,

 including, but not limited to, claims for injuries to employees of the “Indemnitee”, ABC Company and/or any related party,

arising directly or indirectly out of any act, omission, conduct, negligence or default by ABC Company or a its related party or their respective officers, directors, employees, agents, representative, subsidiaries, successors, or assigns (“ABC Company’s Parties”)

and/or arising directly or indirectly out of or in any manner associated with the Obligations under this Agreement or any contact with or encountering of any property, equipment, vehicles, facilities or personnel of the “Indemnitee”,

regardless of whether any such liability, damage, loss or injury is caused by, results from or arises out of the negligence, fault or other liability of the “Indemnitee” or any other party to be indemnified. 

 ポイント2

ここで注目するポイントは、「including, but not limited to、」「arising directly or indirectly」と「regardless of whether ~」です。

 「including, but not limited to」の場合、その前にある文章を訳した後に、「including, but not limited to」で分け、「上記は、以下を含むが以下に限定されない」と限定すれば、すっきりと訳すことができます

「 (例文の下線部分の訳)を含むが「(例文の下線部分の訳)に限定されない」というように、一つの文章の様に訳すと長くなり、読み手もどこに焦点を置いて読む(訳す)のか迷ってしまいます。

 また、「arising directly or indirectly」と「and/or arising directly or indirectly」のように、同じ文章があるときは、必ず、xxxおよび/またはxxxのように、「arising directly or indirectly」の文章ごとに訳します。

 ポイント3

また、長い文章の後に、「regardless of whether ~」のような言葉がでてきた場合、前の長い文章から訳し始めて、「(それ以前の文章を全部入れて)、whether以下であるか否かにかかわらない。」とすると、訳すのが大変になります。この場合、長い文章を訳した後に、[上記は、whether以下であるか否かにかかわらない。」とします

この様に整理した後に、文章として読んで分かり易いようでしたら、そのままのこれを訳文といたします。

ただし、文章の流れが若干スムースでないように思われる場合、読みやすくするために、シャッフルして文章を入れ替えることも可能です。

参考図書:

ランダムハウス英和大辞典(小学館)

The New Oxford Dictionary of English (Oxford University Press)

Merriam-Webster (Webster)

Collins Concise Dictionary (Harper Collins Publishers)

英文契約書の用語、構文(その21) 「文頭の否定」

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英文契約書における文頭の否定

前回、「In no event shall」で始まる文章について見てみました(「In no event shall」に導かれるその後の文章部分は、[~でない]の意味になる)。

例:In no event shall someone be liable for ……………(いかなる場合も(人は)…………に関して責めを負わない。)

「In no event shall」のほかにも、文章の文頭に否定を意味する語句が置かれると、その語句に導かれる文章の内容は、否定文になります。英文契約書に限らず、英文において一般的に見られることですが、今回は、英文契約書でよく見かける例に関して、思いついたもののいくつかについて、契約書翻訳の視点から作成した例文を通して見てみます。

「Nothing~

Nothing in this Agreement shall be construed as creating ……….

(本契約のいかなる内容も、……….を生じると解釈されることはない。)

Nothing in this Agreement shall require ……….

(本契約のいかなる内容も、……….を求めないものとする。)

None of ~

None of the parties may assign or transfer any of its or their rights or obligations under this Agreement.

(いずれの当事者も、本契約に基づく当事者、もしくは各当事者の権利と義務を、譲渡または移転することはできない。)

Neither~nor

Neither we nor you will be prevented from disclosing confidential information;

「当社と貴社のいずれも、以下の機密情報の開示を妨げられない。」

No someone shall~

No party shall be responsible for ~

(いかなる当事者も~に責任を負わない)」

In no case ~

In no case may this agreement be transferred by the Company

(会社は、(決して)本契約を譲渡してはならない。)

辞書を見ると、例えば「In no case ~ 」「In no way~」いずれも「決して~しない」との意味が書いてあります。繰り返しになりますが、これらの用語が文頭に置かれると、通常、その後に続く文章は、肯定文を記載します。ただし、文章全体としては、否定文になります。このような形式で文章を作成すると、文体として、いわば締まりのある文章に仕上がりますが(あくまで個人的感想です。)、自分でこれらの表現を使って文章を起草する場合、なれないうちは注意が必要かもしれません。実際、ごくまれですが、多くの英文契約書に接する機会が多いためか、これらの表現を使いイティブが起草した文章で、これらの用語が文頭に置かれているにもかかわらず、その後に続く文章を否定文で書いているというような例も、経験しています。

余談ですが、掲示などの表現で、「No changes can be made to the tickets.」の様に表現することがありますが、「We can make no changes~」の様に、言い切ってしまうような感じでなく、No changes can be made~」の様に、「チケットの変更はできないことになっています」表現を使い、「決まりですので、ご了承の程、お願いします。」というニュアンスにします。

口語でも、「No xxx, No life」と言うように、XXXがないと生きていけないなどの表現もあります。絶対、何か欲しいとき、何かしてほしいときなどに使用します。

例えば、音楽好きなら、「No music, No life.」 お菓子が好きなら、「No cookies, No life.」、「No chocolates, No life.」

参考図書:

研究社新英和辞典(研究社)

ランダムハウス英和大辞典(小学館)

カレッジライトハウス和英辞典(研究社)

英文契約書における独特の用語、構文(その20)「 no event shall」

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英文契約書における文頭の否定

英文契約書を見ると、定義条項が設定されており、重要な語句に一貫した意味を与えています。また定義条項に加え、さらに各条項に、文言が定義されている場合もあります。定義条項がない場合でも、各条項に、文言が定義されていることが多くあります。 一見すると、あいまいさが排除されているようにも見えます。ただし、実際に英文契約書に接してみると、たしかに重要な語句は、定義されていますが、慣れていないと、「混乱」するような書き方の文章があります。慣れてしまえば、どう言うものでもありませんが、最初のうちは人により戸惑うことがあります。その意味からすると、いわゆる「何となくあいまいさ」が感じられる部分かもしれません。契約書翻訳の視点から見てみます。

「In no event shall」で始まる文例

今回、1つの例として「In no event shall」で始まる文章(文章の冒頭におかれている場合)を例にあげてみます。 通常、「In no event shall」から始まる文章は、「In no event shall」に導かれるその後の文章部分を、「~でない」とします。

例文としては、以下の様なものがあります。

In no event shall someone be liable for …………………………… (いかなる場合も(人は)……………………………に関して責めを負わない。)

In no event shall」の中に「No」と言う文言があるため、「In no event shall」に導かれるその後の文章の内容は否定文になります。(In no event willの形もあります)

In no event shall ABC Corporation be liable for any damages caused by or in relation to this Service. (いかなる場合も、ABC  Corporationは、「サービス」に起因する、または関連する損害賠償に対して責任を負わない。)

この例では、一読して意味がはっきりしていますが、「In no event shall」に導かれる長文では、熟読しないと、意味を取り違えるような書き方がされている文章もあります。

以下の例文を作成してみました

実務で目にする内容と比べると相当簡単なものです。

「In no event shall」:(A) ABC  Corporation be liable for any damages caused by or in relation to this Agreement, (B) ABC  Corporation’s liability in respect of any and all claims arising from or related to this Agreement exceed 1,000,000 Yen; and (C) ABC Corporation’s liability for any claim extend beyond the period hereof.

いかなる場合も、(A)ABC Corporationは、本契約に起因する、または関連する損害賠償に対して責任を負わない。(B)ABC Corporationは、本契約に起因する、または関連する申し立てに関して、百万円を超える責任を負わない、(C)ABC Corporationの責任は、本契約の期間を超えない。

 すなわち、文頭の文言「In no event shall」は、文章全体を否定するため、以下のように「肯定文」で書かれている文章 (A)、(B)、(C)の部分は、内容的に「否定文」になります。

  • (A)は、文面上では、責任を負う(be liable for):否定されているから賠償責任を負わない。
  • (B)は、文面では、責任は百万円を超える(exceed 1,000,000 Yen):否定されているから百万円を超えない。
  • (C)は、文面では、責任は、契約期間後も延長( extend beyond the period hereof):否定されているから延長されない。

上記のような書き方をしなくても、自分で起草する場合、例えば、Aの文章の場合、

「ABC Corporation shall not be liable for any damages caused by or in relation to this Agreement.」 とすれば、わかりやすく、簡単です。(複数の項目を列挙するには、「In no event shall」:を使うのが便利かもしれませんが。)

参考図書:

研究社新英和辞典(研究社)

ランダムハウス英和大辞典(小学館)

カレッジライトハウス和英辞典(研究社)

 

英文契約書の条項「一般条項」 (その3)「修正条項」

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今回は、英文契約書の条項-修正条項について契約書翻訳の観点から見てみます。
英文契約書では、書面重視の考え方、習慣等から、一般に、その内容は考え得るすべての事項を可能な限り取り決める傾向があります。

これらは、以前に触れたことがある口頭排除の原則(Parol evidence rule)、最終性条項(1)または完全なる合意といわれる(Entire Agreement)に代表される概念です。おおざっぱに言えば、当事者間の文書、口頭における当事者間の了解事項についての最終的な合意を記載した文書が、契約書となります。

 すなわち、当事者間で文書により合意した事柄以外は、契約内容として認めないという姿勢を確認するため、英文契約書の条項「一般条項」の中にも、あえて口頭排除の原則や、最終性条項を補完する意味で、いわゆる「修正条項」なるものを設定することが一般的に行われています

その目的は、契約締結後における、文書によりなされる以外の当事者間の口頭による契約内容のあらゆる修正を排除するところにあります。

記載方法は、いろいろありますが、基本的に、「契約のいかなる変更も、両当事者が署名した書面にもの以外は、無効である(有効ではない)」旨の一文が記載されます。

例えば、「No amendment or modification of this Agreement shall be effective unless in writing and signed by both parties.」(本契約のいかなる修正もしくは変更も、両当事者が署名した文書による以外無効である)のような例文を作ることができます。最低この内容で問題ないと思われますが、実際には、上記のような文章にいろいろな要素が(多くは、多分起草者の考えにより)加えられます。例えば、上記にいくつかの他の具体例を加えたいとか、詳細に規定したい場合、「No amendment or modification of this Agreement and “no waiver of any provision hereof” shall be effective unless in writing and signed by both parties.」この例では、「権利放棄」を加えてみました。また、「両当事者が署名した書面」について、署名人を指定したい場合は、「No amendment or modification of this Agreement shall be effective unless in writing and signed byauthorized representatives ofboth parties.」のように「authorized representatives of」(授権された代表者)を入れると、それ以外に者が署名しても、その変更は、無効となります。

いずれにしても、契約内容を変更したら、内容を問わず書面を作成し、当事者間で確認することです。

例文-最終性条項(1)

「This Agreement constitutes the entire agreement, and supersedes, whether orally or in writing, all prior agreements and understandings of the parties hereto with respect to the subject matter hereof, and cannot be amended or otherwise modified except in writing executed by the parties hereto.          (本契約は、最終的合意を構成し、口頭・書面によるものを問わず、本契約の主題に係わる本契約の両当事者間のすべての以前の合意と了解に優先し、また、本契約の両当事者が署名・捺印した書面による場合を除き、修正、または他の方法により変更することはできない。)

参考図書:

カレッジライトハウス和英辞典(研究社)

研究社新英和辞典(研究社)

ランダムハウス英和大辞典(小学館)

法律英単語ハンドブック(自由国民社)

英文契約書の書き方(日経文庫)